人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「ドグラ・マグラ」(2)

まず書誌的なことから触れておく、というと前回を読んでいただいた方は「次回はあらすじだったはずでは…?」とイヤな予感がすると思う。ええ、ちゃんとあらすじやります(笑)。だけどこの小説の場合、いわゆる物語(ストーリー)を粗述しても何が起っているのか…

わかる読書・わからない読書(2)

的確なご質問ありがとうございます。カンがいいですね。詩はそう多くの読者を対象にしたものではない代り、長年かけて一部の読者・専門家が読解していくのがほとんどです。「舌」の詩の解釈は西脇順三郎の「マラルメ以上にマラルメ的」という賛辞のおかげで…

「黒ツグミを見る十三の方法」

再度ウォレス・スティーヴンズの詩を取りあげる。「黒ツグミを見る十三の方法」(1917)。やや長いので追い込み(/で改行を示す)にせざるを得ないのが残念だが、それでもこの詩は全訳しなければ意味がない。もともとは行分け詩なのを意識してお読みいただければ…

特別な一日

今日も口をきいたのはスーパーのレジで「袋いりません」のひと言だけだった。持参したマイバッグに食料品を詰める。買うものはいつも毎回大体同じなので、詰める手順も習慣化している。 自分は今まったく無表情だろうな、と思う。ひと言も口をきかないままの…

歩道橋からの眺め(7 月13日・水 )

先日載せた歩道橋に用もないのにわざわざのぼってきた。高所恐怖症で歩道橋が苦手、という方からのコメントをいただいたからだ。ぼくも高所恐怖症なので多いに同感する。 実はこの歩道橋、駅のプラットホームをまたぐだけで車道用のものよりだいぶ低め、小学…

わかる読書・わからない読書(1)

以前、と言ってもそう昔のことではないが、このブログは来訪者は増えつつも記事へのコメントはまったくなし、という状態が長く続いた。自分なりに理由は考えたものだ。文章が堅苦しいのでコメントしづらい、興味は持てるが同意はできないのでコメントしない…

女嫌いのフェミニスト(1)

ライター仕事は何でも屋、コーディネーターみたいな面もあるからOVA制作、ゲーム制作、AV制作などは1度で懲りたが、映画と演劇には引きずり込まれる寸前だった。元々好きだったし制作のプロセスや映画人・演劇人の気風の違い(はっきりタテ社会・ヨコ社会に分…

「苦しみを担う者の信条」を読んで

のっけから引用。これは現代詩の紹介・鑑賞ではない。ぼくの通う教会の聖書研究会の副読本に参考資料として掲載されていた詩だ。ニューヨーク大学リハビリテーション研究所の壁に一患者の作品として掛けられているという。タイトルは「苦しみを担うものの信…

顔のない扇風機・線の細い時計台

心境の変化か夏バテのせいか、やろうとも思わなかった写真日記をやってみると、ああなるほど、これって子供の頃の絵日記の感覚なんだな、と思った。ぼくのようなくたびれた中年男でもたまにはいい。 通院しているメンタル・クリニックには空調はもちろん効い…

夢野久作「ドグラ・マグラ」序説!?

梗概から入って梗概だけに終るのは読書感想文としては最低の書き方だとされる。そんなの読めばわかる、誰だって書けるというわけで、ノンフィクションなら主題や論述、フィクションなら登場人物や構想について所感を披露するのが正しい読書感想文とされる。…

存在感のない時計台

ぼくが四半世紀ぶりに故郷に戻ってみると、外見的にはさほど変化はなかった。だがよく見ると郊外の半端なベッドタウンにありがちなごみごみしたところ、なかばスラム化したようなところがなくなり、行政も住民も地道に努力したのがわかる。 鬱はすぎたが今日…

存在感のある歩道橋

鬱は昨夜9時から今朝9時までの強行12時間睡眠で晴らした。体調でわかる。肌もサラッとして頭も重くない。 生活リズムを整えるためには、朝の散歩がいいそうだ。ぶらりと出て、ぼくの住んでいるマンションのすぐ前にあるのがこれ。小田急線座間駅のプラットホ…

ある訪問者への返信(7月9日・土)

後で話すような事情で今は何もやる気が起きない。やっぱり根本がダメージ受けやすいんだろうね。ただ、強がりに聞こえるだろうけど、ダメージに耐え抜く力はある。自分の力じゃない。思いつくかぎりのことをしていればきっとたどり着けるだろうと信じている…

「アイスクリームの皇帝」その他

今朝(7月7日)は二度寝して6時半に起きたので、てっきり宵の口かと思い駅前まで買い物に出てしまった。どの店も閉まっている。ものみの塔のおばさんに「計画停電ですか?」と訊いて、「まだ朝早いですから」と返され苦笑した。それどころか昼頃まで今日は8日…

こんな雨の日には(入院覚え書き)

(これは4月半ばに別れた女性へのメールの抜粋でリライト。精神疾患が中心的な話題なので資料として掲載する。物書きなど恋人にしないほうがいい。いずれネタにされる)。 ありがとう、Rさん。もう退院から2週間になる。 Mさんの件で嫉妬されるのは意外だ。…

『ラプンツェル』とその他のCD

誕生日。ネット通販で中古CDと古本を注文した。CDの大半は手放したLPの買い直しだ。 本は2冊きりだから簡単に。「現代英米文学セミナー双書」(山口書店)から、 ・『W・B・イェイツ』 ・『ウォレス・スティーヴンズ』 内容は原文と註釈・評釈。詩はやはり原文…

歯医者に行ってきました。

月に1度のメンテナンスとクリーニングを受けに歯科クリニックに行ってきました。誕生月だったのでデンタル・フロスをもらってきました。 3か月ごとにフッ素を塗布するので「どの味にしますか?」と訊かれ、びっくり。写真に撮らせてもらいました。オレンジ、…

「美しい赤毛の女」のために

ぼくの囚人番号は3036番。もう4年も前なのに覚えていて、この先も忘れは(また入獄でもない限り)しないだろう。横浜拘置所では4年前の夏、男囚房はすべての未決囚が3000番台だった。女囚房は別棟だから知らない。通し番号でも分類番号でもないらしい。 選べな…

July's also the cruellest month

タイトルはT.S.Elliotの長篇詩'The Waste Land'(「荒地」1922年)の書き出し、'April is the cruellest month,'(四月は残酷な月だ)のもじり。なら他の月はと思うが、四月、植物の繁殖と同時に生の意識が拡充し、生は常に死をはらむもの、とこの詩の屁理屈は展…

こうして私はライターになった。

ぼくは本文とタイトルどちらが先か特に習慣はない。好みでいえば地味で明快かつ簡潔なタイトル、本文もまたしかり(そう、ぼくはそういう文章を書いているつもりなのだ)。今回は素材が先にあったからタイトル決めちゃおうと本文書き出す前に決め、よし、これ…

死と暴力(4・「ウナギの死」)

「死と暴力」第2回で既に谷岡ヤスジ(1942~99)の作風と傑作「馬と股旅」は紹介した。 今回は「ウナギの死」(「ヤスジのアニマルどー」所収)。実はこの傑作には凡作に終った先駆作がある(「ヤスジのドッチラケ節」所収「サンマの死」)。天才の創作の秘密を探…

日記・横浜地方裁判所相模原支部

6月30日木曜。廊下の照明はひとつおきに消してある。エレベーター脇に張り紙。「近隣階への移動はできるだけ階段をご利用ください」「東日本大震災に端を発する夏季の電力不足を補うため大幅な節電対策を行っております」「節電にご協力ください」うーん、裁…