人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ジャーマン・ロックの面妖な世界

上に掲げたアルバム・ジャケットを見ただけでいやーな予感がする人も多いかもしれない。順にアシュ・ラ・テンペル「アシュ・ラ・テンペル」(1971)、ファウスト「ファウスト」(1971)、アモン・デュール「サイケデリック・アンダーグラウンド」(1969)でそれぞ…

真似句亭日乗(4)出版業界の回想3

これまたいい加減なことに、消滅した会社の社員は半数がそのまま大手へ、残り半数が他社へ、というのも自然の流れだった。 版下製作所やカメラマン、レイアウターなどを通して他社に紹介してもらった人たちもなかなか意欲的だったし、大手へ吸収されてもそち…

ジャーマン・ロックの清楚な世界

先に掲載した記事「イタリアン・ロックの甘美な世界」はなぜか反響があり、やはり素敵な女性はパスタが好きなのだと(ぼくは自分のブログの訪問者は美男美女・才子佳人と決めている)再認識した。アルバム・ジャケットが素晴らしいといいところに気づいてくれ…

真似句亭日乗(3)出版業界の回想2

「いくら貰えるかもわからないんですか!知らなかった…」 「日雇いアルバイト以下の待遇でしょう。そんなことがまかり通っている業界は他にいろいろあるでしょうが、出版なんて一見インテリジェントなイメージをまとっているだけにたちが悪いものです。 デザ…

足むずむず病&アンパンマンバス

「じゃあきっと足むずむず病だ」 と主治医のK先生は言った。ぼくは耳を疑った。「足むずむず病、ですか?」 「そう」 「それはどうなるんですか?」 「足がむずむずする」とK先生、「昼間は何ともないけど夜横になると足がむずむずして眠れない」 「なるほ…

真似句亭日乗(2)出版業界の回想1

「書く段階で編集者やインタビューイ、読者の感想も想定しなければなりません。人によっては校正刷り段階で事務所チェックを要求されるので一発通過する仕上げでなければなりません。自分でも今回はうまくいったな、という時は純粋に職人的に手応えを感じて…

The Doors(その2)

ジム・モリソン個人とザ・ドアーズというバンドの魅力は分けてみるべき部分がずいぶんあります。破滅型詩人でカリスマというのも本人が創案し、バンドがもり立てたペルソナです。ドアーズは同時代のバンドからは売れ線だと嫌われ(特にザ・バンド、グレイトフ…

真似句亭日乗(1) 再録ウナギの死

「虫垂炎入院日記」は12回だったので「虫垂炎退院日記」は6回、どうせ内容は代わり映えしない思いつきの羅列なのだが、飽きたら通しタイトルを変る。これはぼくが戦後漫画界最大の巨匠と崇める谷岡ヤスジの癖でもあった。 「谷岡ヤスジのアギャキャーマン」…

The Doors(その1)

現在ドアーズの全アルバムはすべてリマスターされて、それどころかリミックスでヴォーカルや楽器まで差し替えられていてこりゃないよとみんな泣いています。デヴュー曲'Break On Through'もヴォーカルに改変があって、30年来アナログ盤と旧規格CDで聴いてき…

虫垂炎退院日記(6)私の処女出版3

前回に続く。 「な、繩ですか(笑)…」 「な、繩です(笑)。そういう会員制秘密クラブを作りアトリエでショーを開いている商売の方々がいるんですよ。東京圏だけで数名。インタヴューした縁で忘年会にも呼ばれ奴隷女性のかたにお酌をしていただきました。 ジャ…

戦後俳句の前衛四人

先に取り上げた高柳重信と並び戦後の前衛俳句を代表する4人の俳人を紹介。前3者は自選10句、急逝(踏切で轢死)した赤尾兜子は代表句を選んだ。詩歌は反響がないので暫くお休みします。 ●金子兜太(1919-) 銀行員等朝より蛍光す烏賊のごとく 湾曲し火傷し爆心地…

虫垂炎退院日記(5)私の処女出版2

ではなんでそんな著作権侵害みたいなことになったのか、とより詳しい事情を質問されたので、以下にその返信を引用をする。 「そもそも写真家氏は日本語原稿作成を編集部に頼んだので、ぼくを編集部のスタッフと誤認していたのです。ぼくは記名せずダッシュで…

藤子・F・不二雄ミュージアム

向ヶ丘遊園の廃園は確か20002年の春だったと思います。最終日はさすがに名残を惜しんで大勢の人が詰めかけました。当時私の一家は遊園地から徒歩5分のマンションに住んでおり、長女は4歳、次女1歳、ついでに妻は35歳でした。 向ヶ丘遊園は金券ショップではと…

虫垂炎退院日記(4)私の処女出版1

これはぼくの唯一の著作(正確には共著)にまつわる裏話。もう15年ほど前になる。内容は日本の映画界きっての独立プロの巨匠W監督のロング・インタヴューで、ひょっとしたら去年あたり再版されているかもしれない。国際的話題作を公開したし、おそらく国外で…

やる気のないラーメン屋

今どき木造2階建てトタン張り、おそらく住居部分を増改築。干してある洗濯物の量からして核家族、もしくは二世帯住宅かと思われる。 このラーメン屋は今やシャッター通りになってしまった住宅地の中の通りに、かつては商店街だったことを暗示する証拠のよう…

虫垂炎退院日記(3)続躁鬱病入門

(2)の「躁鬱病入門」書き上げてぐったり疲れた。あれでも双曲性障害(躁鬱病)についてはほんの一部を述べただけにすぎない。鬱については一般的なイメージがあるだろう。身近に鬱の知り合いがいる人も、自分自身が経験した人も多いだろう。一方、躁については…

イタリアン・ロックの甘美な世界

イタリアン・ロックへの認知度はどう見てもそう高くない。ヨーロッパのロック、いわゆるヨーロピアン(ユーロ)・ロックで3大国はドイツ、イタリア、フランスなのだが。だが踏み込めばなかなか抜け出せない魅力があるのだ。 マニアなら30年前に輸入廃盤LPで買…

虫垂炎退院日記(2)躁鬱病入門

ぼくの学生時代にアメリカ文学界の大型新人としてデビューしたスティーヴ・エリクソン(今は中堅になり地味な存在だが)の処女作の原題は'Days Between Stations'でその後翻訳も出たが「駅から駅への日々」という訳題で、原題の歯切れのよさはなかった。ぼくの…

佐伯和子のポストカード・アート

佐伯和子(1935-)は広島県出身の墨彩画家、装丁家、イラストレーター、エッセイスト。中学卒業後美容師となり、58年上京。64年のパリ留学で油彩から墨彩画に転じる。自伝に「ひとり立ちへの旅」、画集に「野山の花」、紀行スケッチに「ドイツ・メルヘン街道物…

虫垂炎退院日記(1) また病院へ

とっくに退院しているんだから早くタイトル切り替えればよかった。今日(9月1日)は腹部の超音波エコー検査の日、そういえば長女の13歳の誕生日。ついに今年は二女(5月)にも長女にもプレゼントはおろかバースディー・カードも送らなかったな。昨年末~春先には…

「夷狄を待ちながら」

20世紀ギリシャの巨匠、コンスタンティノス・カヴァフィス(1863.4.29-1933.4.29)は40すぎから詩作を始めた遅咲きの詩人。詩集も生前には出されず、没後の1936年に初めて全詩集が刊行された。「夷狄(いてき・バルバロイ=蛮族)を待ちながら」は特によく引例さ…

虫垂炎入院日記(12)

さっき近所のスーパーに行って帰ろうとしたら(一句「買い物はトイレの洗剤ひとつのみ」)3歳くらいの女の子が泣き叫んでいた。「いないよー!アキちゃんのママがいないよー!」おやおや。出入り口付近だから放っておくのはあぶない。サービスカウンターに連れ…

初めてモダン・ジャズを聴く10 枚

●「オリジナル・ジェリー・マリガン・カルテット」(1952,1953) 戦後白人ジャズの初のヒット作。ピアニストを入れず、トランペットとバリトン・サックスが舞うようなアンサンブルを聴かせてくれる。(図版上) ●ザ・クインテット「ジャズ・アット・マッセイ・ホ…

虫垂炎入院日記(11)

ぼくの入院中の読書に「本当に1週間でそんなに?」という疑問が寄せられた。回答もしたが、同様の疑いをお持ちのかたにも疑惑を晴らしたい。疑問への返答を事後承諾にて引用する。 「そうだよ、1週間であれだけ読んだ。あとマンガも「こち亀」「江戸前の旬」…

「美代子、石を投げなさい」

荒川洋治(1949-)は小説家でいえば村上春樹に匹敵する現代詩最良の詩人(同年生まれで大学も同じ)。「美代子、石を投げなさい」(1992、詩集「坑夫トッチルは電気をつけた」所収)は生誕100周年記念で沸いた宮沢賢治ブームに「石を投げた」話題作だった。 宮沢賢…

虫垂炎入院日記(10)読書篇

今回は手抜き。麻酔点滴を終えて入院後半に読んだ本はマンガを除けば10冊。前置きもあるし、文字数制限からいって1冊80文字も書けないから撫で斬りだ。1冊の例外を除いてみんな退院患者さんが談話室の本棚に置いていった本だ。つまりこれが世の人の読書の平…

戦前のモダニズム俳句

戦前のモダニズム俳句を代表する5人の俳人を紹介する。夭逝した鳳作以外は寡作ながら戦後にも佳品が多い。紙幅と睨んで8句ずつを選んだ。 ●西東三鬼(1900-1962) 水枕ガバリと寒い海がある 白馬を少女涜れて下りにけむ 算術の少年しのび泣けり夏 緑陰に三人の…

虫垂炎入院日記(9)・回想篇

このブログを始めて間もない頃に載せた「精神科入院日記」は冗談みたいな体験記で、特に一昨年の入院でぼくに求婚してきた女性患者が同じ病棟に移ってきてからは油断のならないものがあった。決して明るいとは言えない職場で、ぼくの女難は病棟スタッフ全員…

The Velvet Underground(3・前)

入院前にヴェルヴェット・アンダーグラウンド(以下VU)については2回書き、「次回完結」と末尾に予告しておいて突然の入院になったのだった。VUの2回分は書いてあった。原爆慰霊詩についての記事を優先して載せ、VUの記事を載せた頃には腹痛で寝込んで…