人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2012-12-01から1ヶ月間の記事一覧

(30c)リー・モーガン(tp)

モーガンのジャズ・メッセンジャーズへの最終録音は65年5月の「ソウル・フィンガー」で、62年~63年にモーガンが離れていた時トランペットの座についていたフレディ・ハバードとの共演作。すでにウェイン・ショーターはマイルス・クインテットに移籍し、サッ…

通院日記(12月17日月・18日火)

例によって通院日だから通院報告が第一だ。今はジャズマンの評伝記事と、その他のよもやま話を併せて毎日2本更新している。その他の方に「乾直惠詩集」隔日掲載、というのを入れたからかち合う日が出る。ジャズ記事の方はちょうど29人目が終って切れ目がいい…

(30b)リー・モーガン(tp)

よく言われるが、日本でモダン・ジャズのイメージをサウンド、ヴィジュアル共に広めたのはアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズではないかという複数証言がある。初来日は1961年(昭和36年)元旦で、15日までにほぼ毎日、昼夜2回の公演を満席にした。…

乾直惠詩集「肋骨と蝶」1932(5)

乾は強いていえば百田宗治門下で、詩集「肋骨と蝶」も百田装丁、版元の椎の木社は百田の小出版社であり、限定250部・定価65銭・本文54頁のささやかな一冊だった。百田は大正期の民衆派詩人だったが昭和の新人たちにも理解が深く、主宰誌「椎の木」は多くの詩…

(30a)リー・モーガン(tp)

Lee Morgan(1938-1972,trumpet)。戦後モダン・ジャズ最高のトランペッターはクリフォード・ブラウン(1930.10-1956.6)だった。一方リー・モーガンはフィラデルフィアの音楽一家の末っ子で、幼児の頃からジャズ・クラブに出入りしていたという。時代はビ・バッ…

日本の70年代ロックの思い出

ジャズばかり聴いていると-いや、主食はジャズだから文句はないが、ブログ記事の作文も今32人目62回(!)まで書き進んで、音楽を聴くのが息抜きにならない。作文のために聴いているばかりでは楽しめない。そこで家事や食事、ジャズ記事以外のブログ作文では…

(29c)リー・コニッツ(as)

コニッツは自分のレギュラー・バンドをついに持たなかった人だが、トリスターノ派プレイヤーとのみ共演していた初期は実質的にはレギュラー・バンドとも言えて、トリスターノ派と離れると独自のコンセプトに困った。「モーション」の爆発も評判を呼ばず、レ…

乾直惠詩集「肋骨と蝶」1932(4)

詩集「肋骨と蝶」というシュルレアリスム的なタイトル(シュルレアリスムは異質な概念の衝突を基本とした詩の方法論だった)だけから、具体的な作品内容を推測できる読者は現代では少ないだろう。この詩集では既出『光の氷花』『菊』に続き、次の『朝は白い掌…

(29b)リー・コニッツ(as)

リー・コニッツの好調・不調をアドリブの音域(厳密にではないが、印象として)で高域(初期)→中域(中期)→低域(後期)に分ける評者もいて、ストーリーヴィル三部作(前回)までは初期、アトランティック(前回)~ヴァーヴでは中期または初期と中期の混合、ヴァーヴ…

詩集「倖せ それとも不倖せ」

「肋骨と蝶」の乾直惠は現代詩のはじまりにいた人だったが、戦後に詩がどのように変貌したかを追っていくと昭和20年代までは戦前・戦中に自己形成した世代がデビューした時期であり、純粋な戦後世代の登場は昭和30年(1955年)以降になる。その第一人者は谷川…

(29a)リー・コニッツ(as)

Lee Konits(1927-,alto sax)。昨年の新作でリーダー作も130枚に達した85歳のコニッツはソニー・ロリンズと共に現役最年長でジャズ史の生き証人ともいえるサックス奏者。共にパーカーから可愛がられ、マイルスの信望厚く、マイルスのバンドには前後して所属し…

乾直惠詩集「肋骨と蝶」1932(3)

今回の2篇のうち『菊』は昭和5年(1930年)「文芸レビュー」11月発表、のち大舞台「詩と詩論」に転載された。習作期の投稿詩人から乾を一人前に認めさせた作品といえる(後出『音』も同時発表)。また『菊』が一種のオフェリア(死んだヒロイン)・コンプレックス…

(28c)ケニー・ドーハム(tp)

前回ジョン・コルトレーンは享年40歳で195枚のアルバムを残したが、ケニー・ドーハムは享年48歳で105枚、と書いた。一見倍以上差があるようだが、コルトレーンは23歳から40歳までに195枚で、ドーハムは22歳から録音歴があるが40歳・96枚目(1964年)のアルバム…

振り込め詐欺誘導メール

先月の半ばにもおかしなメールが来てご紹介したばかりだが、あれは「国民的アイドルの相談相手になってほしい」とマネージャーだという人物からの突拍子もない勧誘だった。ぼくをご指名だという。さすがにこれほど大胆な作り話はめったにないのでブログで笑…

(28b)ケニー・ドーハム(tp)

ケニー・ドーハム(享年48歳)の生涯の録音は105枚で、ジョン・コルトレーン(享年40歳)が残した録音が195枚、と比較してもあまり意味はないが、ブルー・ノートのようなインディーズではジャズのアルバムは標準300多くて500枚もプレスされれば良い方で、とうて…

乾直惠詩集「肋骨と蝶」1932(2)

乾直惠は生涯喘息で苦しみ、それが晩年に結核に進行した。経済的には恵まれなかったが多くの詩人仲間の友情に恵まれ(寡作で地味な存在にもかかわらずあらゆる流派の詩人たちに愛され、経済的な援助まであった)、44歳と晩婚ながら数年越しの縁談で詩人の女性…

(28a)ケニー・ドーハム(tp)

Kenny Dorham(1924-1972,trumpet)。ジャッキー・マクリーン、チェット・ベイカーと来ればやはりケニー・ドーハムだろう。共通点はパーカーの愛弟子、マイルスとの関係になる。 マイルスはディジー・ガレスピーとのコンビ解消後にパーカーが発掘した新人で、…

通院日記(12月10日月曜・快晴)

毎週月曜はメンタル・クリニック、隔週月曜は内科。メンタル・クリニックには双極性障害(躁鬱病。障害者手帳取得済み)、内科には高尿酸値と血中中性脂肪で通院。それから歯科にも義歯のメンテナンスと虫歯でほぼ10日ごとに通院。それと視野の部分欠損が老眼…

(27b)チェット・ベイカー(tp)

唐代の詩人・李白は酒と詩を愛し、池に映る月を捕ろうとして溺死したという。安宿の窓枠に座っていて転落死したチェットは李白に重なる。しかも2階だ。 前回でチェットの楽歴はデビューから事故死まで粗述したのに続編もやるか、「巨人25」でも1回でまとめた…

乾直惠詩集「肋骨と蝶」1932(1)

乾直惠(いぬい・なおえ、1901-1958)は昭和初期のモダニズム系抒情詩人のひとり。系譜としては三好達治・丸山薫ら「四季」派の詩人に近いがさらに内省的な面に特色があり、乾自身は同人に加わらなかったが「四季」の若手詩人たち(津田信夫、立原道造、阪本越…

(27a)チェット・ベイカー(tp)

Chet Baker(1929-1988,tp,vo)。まず一番上のジャケットをご覧いただきたい。モダン・ジャズのアルバム・ジャケットにはかっこいいものが多いが、メンバー写真にバンド名(兼アルバム・タイトル)、レコード会社名をあしらっただけで「これなら絶対内容もいい」…

菅原克己詩集、その他のエッセイ

○コメントと断片より (1)L.A.のバンド、ラヴ「フォエヴァー・チェンジズ」1967は欧米では60年代ロックの大傑作という定評が70年代には確立していました。黒人ヴォーカル&リーダーという点も珍しく、デビュー前のドアーズはラヴを目標にしていたそうです。ア…

(26c)ジャッキー・マクリーン(as)

「レット・フリーダム・リングス」1962の後、1967年のブルー・ノート最終作まで、マクリーンのリーダー作は2作に1作がボツになる(70年代後半には発表され、現在もCD化されているが)。これはブルー・ノートではさほど珍しくなく、録音した中から発売作を選ん…

ぬか喜び日記(12月7日金曜・快晴)

昨夜は寝つきが悪く、それでも3時間は眠ったか。昨日のうちにまとめておいた娘たちへのクリスマス・プレゼントとお年玉を朝一番の郵便局に出しに行く。窓口のおばさん、もといお姉さんの家庭は民営化の多忙で崩壊したり自殺者が出たりはしなかっただろうか、…

(26b)ジャッキー・マクリーン(as)

ジャッキー・マクリーンは1958年にブルー・ノートに移籍する。インディーズからインディーズに移籍したにすぎないが、丁寧な制作、誠実なギャラ、ミュージシャンの自発性を尊重した方針など、ブルー・ノートはリヴァーサイドと並んで最もジャズマンに信頼さ…

近松秋江「疑惑」(大正2年9月)

大正の私小説作家・近松秋江(画像・1876-1944)の初期代表作「疑惑」(大正2年9月=1913年)の冒頭部分をご紹介する。中期の「黒髪」、後期の「子の愛の為に」もいいが、愛に惑溺できる資質において、この百年の日本の小説で純粋さではこれを越えるものはないだ…

(26a)ジャッキー・マクリーン(as)

Jackie McLean(1931-2006,as)。この人の逝去を日曜の朝刊で知った時はジャズ関係の友人知人に電話をかけまくり、不審がる妻に口笛で『レフト・アローン』を吹いて説明したものだ。21世紀になってからはフレディ・ハバードの死去も悲しく、奇しくも同年生れで…

通常日記(12月5日水曜・快晴)

特に話題もないからこれを通常日記と呼ぶ。まずピンサロの話から(爆)。 先月友人Kに借りた3千円はしゃぶしゃぶ食べよう、という話から「やっぱりピンサロにしよう」という話になった(12月3日日記記載)。ひとりではまず行かないが、これも男のつきあいという…

(25)ウィントン・マルサリス(tp)

Wynton Marsalis(1961-,trumpet)。この人が唐突に「モダン・ジャズの巨人25」の最後に選ばれているのはいかにも原著発行の90年代的な現象という気がする。ハンコック、テイラーまでで24人目まで来たなら、25人目はウェイン・ショーター、チック・コリア、キ…

入院顛末記〈4〉1998年12 月

目覚めたからには眠っていたのだろう。午後の陽射しが部屋を照らしている。携帯を見ると14時だった。ドアポストに新聞が溜っている。月曜の夕刊から木曜の朝刊までだった。 マグカップにお湯を沸かしてココアでも飲もう、と電子レンジ(1杯くらいならレンジを…