人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

金子光晴(1895-1975)「おっとせい」1937

おっとせい 金子 光晴 一 そのいきの臭えこと。 口からむんと蒸れる、 そのせなかがぬれて、はか穴のふちのやうにぬらぬらしていること。 虚無をおぼえるほどいやらしい、 おお、憂愁よ。 そのからだの土嚢のやうな づづぐろいおもさ。かったるさ。 いん氣な…

つけ麺の歴史

今回はつけ麺の歴史について。といっても近頃の学生のようにウィキペディアを覗いてみただけです。ウィキの功罪はしばしば指摘されることですが、ことサブカルチャーについての読者参加型辞典というのは他に例はないわけで、その点では現在これにとって代る…

13thフロア・エレヴェイターズ/2

(続き) さて、公式アルバムに準じるといってもいい英チャーリーからのこの2枚、もともと音の良くない録音しかなかったエレヴェイターズとは思えないくらい音が良い。シングル全集「7thヘヴン」も好企画だが、66年の未発表録音に歓声を被せたインチキ盤'Live'…

13thフロア・エレヴェイターズ/1

ジャックスの記事の結びに「日本のドアーズともいうべきジャックス。未聴のかたはぜひ」と書いた。それはいい。原点を感じさせる存在としてジャックスはドアーズやヴェルヴェット・アンダーグラウンドに対応する、真のオリジナリティを持つ日本のロック・バ…

ザ・テンプターズ( 後編)

テンプターズの魅力は独特の翳りにあった。リーダー松崎由治はグループ・サウンズ界ではブルー・コメッツの井上忠夫、スパイダーズのかまやつひろしに次ぐバンド内コンポーザーで、バンドの自作曲がレパートリーの大半を占めるのはGS時代にあっては稀なこと…

ザ・テンプターズ( 前編)

グループ・サウンズのなかで最大のスターがリード・ヴォーカルに沢田研二を迎えたザ・タイガースだったのは多くの人に異論はないと思われるが、後年GS全体に総括的な展望を与えてみると、タイガースの人気は必ずしも音楽的な評価とは一致しない。 GSの確立者…

西脇順三郎『近代の寓話』

ら西脇順三郎(1894-1982・新潟県小千谷市生れ)の作風は三期に分けられる。第一期は処女詩集「Ambarvalia」1933に、第二期は長篇詩「旅人かえらず」1947にまとめられた(西脇は戦時中に戦争詩を一切書かなかった、唯一の詩人でもある)。第三詩集「近代の寓話」…

華麗なるGS の世界

GS(グループ・サウンズ)と言って通じるのはどのくらいの世代までだろうか?NHK-BSでは定期的にGS特番があり、生前の鈴木ヒロミツ(モップス)もアイ高野(カーナビーツ)も、岡本信急逝前のジャガーズも、さらに再結成ゴールデン・カップス特集も(デイヴ平尾は3…

早川義夫『聖なるかな願い』ほか

1969年11月発表、12曲44分。バックは本人演奏のギター、ピアノ、オルガンのみ。多重録音はなし。作曲はすべて自作、作詞は1曲のみ本人で他は友人に委託。それがジャックス解散直後に発表され、25年後の音楽活動再開まで早川義夫唯一のソロ・アルバムとなって…

ダダイスト辻潤(4)

以前に墨彩画家・エッセイストの佐伯和子(1935-・広島生れ)の作品はご紹介したことがあった。今回話の取っ掛かりにご紹介する現代思想史研究家・江口幹(1931-・岩手生れ)はそのご主人で、佐伯和子はぼくの父方の伯母だから義理の伯父、ということになる。パ…

こーちゃん復活( 部分再録)

ヤキトリ屋こーちゃんの復活の枕に、まずこの町の歴史を語ろう。お話は戦後10年ごろまでさかのぼる。昔むかし… 田舎町に小さな教会が建った。町の名士の洋服店主が中央の教団から牧師を招いて設立したもので、この町で最初のキリスト教会だった。もちろん始…

夜ごと太る女・油そば編(4)

これで「油そば編」も4回目になる。いったい今これほどまで真剣に油そばについて考えている人間がぼくの他にいるだろうか→ラーメン屋の人。しかし油そば自体は発祥の時点ですでに完成されたものではないか。作られたと同時に進化をきわめた、と言ってもよい…

ドキンちゃんとばいきんまん

今回は素顔もOKが出た。前回のブログ記事の反響は話してある。 「また写真いいですか?顔も入れますよ」 「ええ」と前回と同じ位置に立ち、カーディガンを脇に開きにっこりする。もっとも彼女の笑顔以外を、ぼくは知らない。 この人がオレンジ色の制服で「宇…

夜ごと太る女・油そば編(3)

まさか油そば編で3回も引っ張るとは思わなかった。そもそも「夜ごと太る女のために」シリーズはぼくの陰惨な女性経験から「男から見た女の不思議」を弾劾しようという、ボヤキというか負け犬の叫び(捨て犬でもいい)みたいなものだった。先の2回が意図不明な…

はっぴいえんど『春よこい』ほか

はっぴいえんどはアートロック・バンド「エイプリル・フール」(1969にアルバムと映画「エロス+虐殺」サントラあり)のベーシスト細野晴臣とドラマー松本隆がヴォーカリスト大瀧詠一とギタリスト鈴木茂を誘って結成。アルバムは「はっぴいえんど(ゆでめん)」1…

夜ごと太る女・油そば編(2)

今回は襟を正してキッチリ油そばについて語りたいと思う。ぼくは売文業で生計を立てていた悪癖かフォルマリズム(形式主義)に魂を売ったところがあって、構成第一内容二の次で書き進めるのが習慣化している。今年になってからで言えば初夢の話なんかそうだ。 …

ザ・フォーク・クルセダーズ

『帰ってきたヨッパライ』で昭和元禄1968年を席巻し、GSブームとともに日本ポップス界の構造まで変えてしまったフォーク・クルセダーズ。2002年の期間限定再結成、2009年秋の加藤和彦逝去までフォークル(と略す)の残した遺産は今なお記憶されるべきものだ。 …

夜ごと太る女・油そば編(1)

別れた妻はフィラメントの切れた電球の実物を持って替りの電球を買いにゆく女だった。乾電池もだ。それでも別に困った様子はなく、それが彼女にとっては当たり前だったのだから文句の筋合いはない。ぼくが彼女と結婚したのも多分にそのあたりがいじらしかっ…

ジャックス『からっぽの世界』

1965年に東京・和光高校の3年生、早川義夫が同級生と始めたフォーク・グループが後のロック・バンド、ジャックスの母体。翌年にはフォーク編成でラジオ出演、67年には四人編成で黄金期のメンバーが揃う。渡辺貞夫推挽でレコード契約し68年にファースト・アル…

めでたい初夢?

さっき(1月3日)目が覚めて、昨日に続いてアニメ「バクマン。」の3時間一挙再放送あるなあ、と見始める。ついこないだまでの放映分とはいえ、こんなに細かく覚えているものか。でも今朝なんとなく見ていた夢は雰囲気しか思い出せない。どんな夢か?すぐに思い…

吉岡実『聖少女』『桃』『静物』

吉岡実(1919-1990・東京生れ)は同年輩の鮎川信夫と共に戦後現代詩の2大潮流を創った人で、モダニズムや兵役体験など重なる経歴も多い。だが作品は、これほどかけ離れた詩人はいないと言っていいほどだ。 『聖少女』 少女こそぼくらの仮想の敵だよ! 夏草へな…

Hさんからの年賀状

2009年は酷い年だった。どのくらい酷いかというと、2010年や2011年と同じくらい酷い。まず入院回数と期間で、その酷さがわかる。 ●第1回入院・2008年12月16日~2009年1月13日 ●第2回入院・2009年5月26日~8月11日 ●第3回入院・2010年3月2日~5月20日 ●第4回…

金子光晴『若葉のうた』『元旦』

金子光晴(1895-1975・東京生れ)の膨大な全詩業はおよそ2000ページ、これだけでも全集の5巻を占めるばかりか全集はさらに10巻の散文作品を収めている。これは同世代の巨匠・西脇順三郎(1894-1982)を上回るが、西脇にしても金子にしても文筆で生活していたので…

こーちゃんは今?

ぼくの新年最初の文章は、今日掲載した記事に寄せられたコメントへのこんなレコメだ。 「-さん、あけましておめでとうございます。そういえば-さんは掛け持ちのお仕事でしたね。体調のほうはその後回復されたようでなによりです。神奈川の年末年始は平穏な…

西脇順三郎『アン・ヴァロニカ』

西脇順三郎(1894-1982・新潟県小千谷市生れ)は詩人・英文学者・画家。モダニズム最盛期に英仏に留学し、帰国後は新しい芸術思潮の紹介者となった。西脇自身の作風は萩原朔太郎を師とするパロディと憂愁の詩で、意外な発想・豊かな情感・多彩な表現は追従を許…

年末年始は歌合戦

これを掲載する頃にはきっとスポーツ新聞は「紅白のレディ・ガガ」の記事を組み始めている最中だと思うが(なぜ紅白招聘外国人歌手は「サラブライトマン」といい「レディガガ」といい-あえて句点を外した-競馬馬みたいな芸名ばかりなのだろうか?)ぼくの年…