人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

(10)詩人氷見敦子・立中潤

立中潤の第一詩集に再び戻ってみよう。詩集の巻頭作品が宣言ならば、巻末作品は詩集全体のエピローグであるのが通例だが、次作の予告=橋渡しを意識した作品が配置されることも多い。立中は編纂済の第二詩集は焼却し晩年の作品を遺したので、この作品が破棄…

スペインの70 年代ロック

スペインの70年代ロックから3枚上げればこれで決まり!というくらいこの3作は定評がある。いや、実はこれくらいしか知られていないというのが実情なのだが、どれも少し聴いただけでも「参りました」というくらいインパクトが強く、アルバム1枚テンションが持…

(9)詩人氷見敦子・立中潤

荒川洋治(1949-)という詩人は実作者にとどまらず実に挑発的な詩論家でもあって、第二詩集「水駅」1975で一躍一流詩人と認められながら詩論「技術の威嚇」1977で戦後詩は技術の総体にすぎない、と喝破して詩人たち全員を敵にまわし、79年には有力詩人の多くを…

スウェーデンの70 年代ロック

スウェーデンと言ったら何をおいてもアバで、かつてグレアム・ナッシュに「多くの人に愛されたとは言ってもアバやヴィレッジ・ピープルはロックの殿堂には入らないだろ?」と単なるポップ・グループ呼ばわりされたが2010年にはロックの殿堂入りしてしまった…

(8)詩人氷見敦子・立中潤

そろそろ氷見敦子最晩年、最後の作品で死の翌月発表された一篇をご紹介したい。現代詩中もっとも異様な突然変異的作品といえる。85年9月20日頃に末期癌の病床で書かれ同人誌に郵送、作者の逝去は翌10月6日になる。 『日原鍾乳洞の「地獄谷」へ降りていく』 …

オランダの70年代ロック

少々意外だが、ビート・グループ時代のゴールデン・イアリング(70年代の『レイダー・ラヴ』のヒットのほうが印象的か)やショッキング・ブルー(『ヴィーナス』)の国際的ヒットでオランダのロックは仏独伊の「英米以外のロック三大国」よりも早く認知されてい…

(7)詩人氷見敦子・立中潤

ここで立中最晩年の詩篇から最上の一篇をご紹介したい。珍しく散文型だが、気息は緊張感を備えている。長いので部分抄出になる。発表は死の3週間前の同人誌誌上になった。 『十月』 立中 潤 1* 腐るためには動く必要はない。ただ そこに居ればひとりでに腐っ…

仏語圏カナダの70年代ロック

5月から6月にかけて英米圏以外の70年代ロックをご紹介した。フランス8回、ドイツ14回、イタリア24回、日本は1回にまとめた。この回数は重要度とは必ずしも一致しない。イタリアのロックがフランスのロックの3倍面白いというわけではない。 だが仏独伊が非英…

(6)詩人氷見敦子・立中潤

前回について附記すると、氷見は事実婚に入る急逝の1年前まで神奈川県逗子市の実家に住んでいた。これまで引用した氷見作品も海岸の観光町の風景から生み出されたもので、同じ海岸町でも横浜や神戸、長崎のような異国情緒や国際性、近代性はない。年譜からも…

「毎日14時半点眼の男」その他

○コメントと断片より (1)おはようございます。ぼくはその呼称、「暗黒の辻音楽家」は初耳ですが、一応根拠があるだけに揶揄のこもった呼び方だと思います。 ドイツ=オーストリア圏では音楽大国として肩を並べるイタリア、フランスと違って、公務音楽家と世…

(5)詩人氷見敦子・立中潤

「詩」ほど多くの夭逝者から成り立ってきた分野はない。それは詩に向かう書き手たちの生活によるものなのか、性格によるものなのかはにわかに断言できない。キーツやランボーのように死の匂いとまったく無縁な夭逝詩人もいるのだ。 または、まったく非科学的…

映画「チョコレート工場の秘密」

今回は8月10日、日本テレビ21時~23時放映「チャーリーとチョコレート工場」(2005年米/監督=ティム・バートン、主演=ジョニー・デップ)について。日本で翻訳された最初の訳題が「チョコレート工場の秘密」なのだ。昭和53年(1978年)だった。筆者は中学2年生…

(4)詩人氷見敦子・立中潤

芸能・芸術ジャンルを通じて、詩人ほど多くの夭逝者を生み出した歴史を持つ分野はない。開国後の日本の詩で初めて西洋叙事詩・抒情詩の摸倣ではない、自我の探求をテーマにした詩人は北村透谷・中西梅花だが、透谷は自殺、梅花は急逝と、どちらも精神疾患が…

緑色の目の男

月曜(8月6日)は緑内障予備軍の診断を受けてしまった。老眼で検査を受けたのが3か月前で、その時に指示された通り今日は内科・精神科の後に眼科を受診したのだ。 「前回も左目の上辺部に視野欠損がありましたが」 と眼科の先生、「今回はもっと悪いですね。右…

(3)詩人氷見敦子・立中潤

第一回で立中潤・氷見敦子の第一詩集(と言っても立中の生前刊行詩集は1冊しかない)から巻頭作品をご紹介した。たった3歳の年齢差、詩集刊行年度もわずか6年離れているだけなのに、個人的な作風の違い以上に詩を成立させている(または成立を阻んでいる)言語意…

原民喜の詩と死(再録)

原爆シリーズの後編はいきなり極北へいく。原民喜(1905-51)の作品は教科書に採用されたり新聞のコラム、テレビのドキュメンタリーで紹介されることも多いから、生涯をマイナー・ポエット(玄人受けはするが作品は売れない)で終ったこの詩人・小説家の没後の…

(2)詩人氷見敦子・立中潤

筆者は通学実態のほとんどない偽大学生みたいなものだったが、学生課の求人斡旋と学食と購買部、そしてもちろん図書館はしっかり利用していた。大学の講義内容は高校生時代に自習済みだったから、大学も自習の続きのために籍を置いていたようなものになる。 …

あらゆるドアの前で(死んだ少女)

この記事は昨年の再録。ナジム・ヒクメット(1902-63、ソヴィエト)の詩を英訳を参照して紹介する。ピート・シーガーによってイギリス民謡からメロディーを採られ、その後多くのミュージシャンがとりあげている。英訳題は'I Come And Stand Every Door'、邦題…

(1)詩人氷見敦子・立中潤

詩人・立中潤(1952-1975)と氷見敦子(1955-1985)を並べると、わずか3年の生れ年の違いで一方は60年代以前の詩の思潮を引きずった70年代詩人、一方は戦後詩を振り切った新しい現代詩から出発している、との感が強い。立中は日本の敗戦後の現代詩に最後に登場し…

本日の鬱屈通信8月6日

○コメントと断片より (1)なるほど、そのかたがいつもは粗暴に見えてとたんにしおらしくなるような面があるのは、知的にも情操的にも幼いんですね。昔の小説では阿部知二の「冬の宿」やスタインベックの「はつか鼠と人間」に出てきます。知的にも感情的にも抑…

ただ鬱なだけ

このブログを1日2本更新にしたのは昨年真夏の急性盲腸炎の2週間入院の退院後で、それまではあまり頻繁な更新ではかえって見てもらえまいと1日1本の更新にとどめていた。療養中で閑な身でもあり、本来1日で何テーマでも書くのがぼくの元職業雑文家としての本…

詩人氷見敦子・立中潤(序)

まず詩人は職業ではない。商売にはならない。定年後に専業詩人を名乗る程度だろう。文筆で身を立てる人も多少はいるが、詩自体で生計は立たない。エッセイスト、新聞雑誌の選者、スクール講師を兼ね、時おり依頼がある短編小説で賞でも取って…と思っている。…

More Than You Know(知るよりも)

○コメントと断片より (1)離婚を機にLPを処分しましたが、400枚売れて400枚残りました。畳一畳分のLPラックに眠っています。 ファーズの「ラヴ・マイ・ウェイ」とリ・フレックス「ポリティックス・アンド・ダンシング」をご存知とは驚きました。日本盤が出て…

ロック仙人ロバート・ワイアット

ロバート・ワイアット(Robert Wyatt)というミュージシャンは筆者がロック音楽を聴き始めた70年代後半にはイギリスのロック界では神格化された存在、日本では仙人のようなイメージで聴かれていました。ピンク・フロイドの永遠のライヴァル、ソフト・マシーン…

プリズナー113

告訴内容が確定しないうちは、警察署内の留置場に任意とは名ばかりの強制的拘置になる。これは10日ごとに更新で、無理矢理拇印の捺印を強制させられる。国家警察内部では「任意」も「捏造」も「冤罪」も同じことだ。 留置場にぶちこめる条件は簡単明瞭。住民…

Embraceable You(抱きしめたい)

○コメントと断片より (1)隔離室の遮蔽性は留置場や拘置所の独房よりも密閉度が高く、四面をコンクリートで固められた完全な密室です。完全に刺激から遮断し、沈静状態に落ち着くまで監禁するという、現状ほかに手段がないので行われてはいるが、人道的には疑…

来週のストーンズ・ベストテン

またベストテン企画。今回はビーチ・ボーイズよりは1000倍は知られていそうな人たち。ビーチ・ボーイズのメンバーをひとりも言えない人でもストーンズといえばミック・ジャガー、ミックといえばストーンズで、これが覚えられない訳がない(ちなみに25年も前の…

気楽に映画の話をしよう

筆者のような貧乏人の病気療養者には、寝床で携帯電話の画面で古今東西の映画を楽しめるのは、聖書に出てくるマナ(神様が飢えた民に降らせたマシュマロみたいな食物)を連想させる。見たいものばかりではないが、それはテレビ放映の映画や街の映画館だって同…

(完)映画「New Stage」と秋の新作

「映画プリキュアオールスターズDX」の成功から3月は「オールスターズ」・10月はその年度のシリーズ作品という年2作体制になった「映画プリキュア」。新シリーズは毎年2月スタートだから「オールスターズ」は新作が浸透した頃のテコ入れにもなり、春休み映画…

ゲイリー・ニューマンの肖像

かつて一世を風靡した男(1979-1980の2年間限定。1958年生れだから、21歳と22歳が生涯のピークだったことになる)。この間に発表したアルバム3作-「幻想アンドロイド(レプリカズ)」1979(画像1)、「ザ・プレジャー・プリンシプル」1979(画像2)、「テレコン」19…