人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

2007年9月14日(釈放翌日)

まず昨日の記事に寄せられた疑問への回答から。その疑問とは、ノルマやモデルケースというのが納得できない、というものだった。正確には「納得できかねます」という表現だったが、~かねます(かねません)というのは90年代から女性の間で謙譲表現として誤用…

#4.『ソー・ホワット』

一年後には、ぼくはアルトサックスの独習を始めていた。ジャズやロックには音楽教室などむしろ百害あって一利なしと考える。先人が残してくれた音源や文献を、片寄りなく教材にすればいい。これはぼくの出発点がパンクだからかもしれない。演奏したいから楽…

2007年9月13日(独房まで)

2007年9月13日、ぼくは6日の公判に継ぐ二度目の公判で懲役3か月・執行猶予4年の判決を受けて横浜拘置所から釈放された(以前「懲役2年」と誤記したかもしれない。実際は3か月だ)。5月23日~9月13日まで114日間もぶちこんでおいて、いまさら懲役3か月・執行猶…

#3.ドルフィー「ラスト・デイト」

ぼくがジャズに開眼したのは相当遅く、社会人になって職場の同僚がカセット・テープをかけていたのだ。エリック・ドルフィーの遺作「ラスト・デイト」がそのアルバムだった。冒頭のセロニアス・モンクの古典『エピストロフィー』で、無伴奏ソロから鋭いスネ…

60年代のアメリカ小説(2)

文学全集類で二十世紀アメリカ小説の古典とされているのは、ドライサー「アメリカの悲劇」25、フィッツジェラルド「偉大なギャッツビー」25、ドス・パソス「北緯42度線」(「U.S.A」第一部)30、スタインベック「怒りの葡萄」39-そしてヘミングウェイは「われ…

#2.『枯葉』・初ジャムセッション

(これは現役ライターという人に「まるでなっていない。最悪に下手」とボロクソに言われた旧稿です)。 「それじゃ『枯葉』でいいね?」 とTさんが言った。ジャムセッションはまだ始まって3曲目だった。1曲ごとに客席からプレイヤーが呼び出され、曲目と簡単…

60年代のアメリカ小説(1)

筆者が高校時代に読書ガイドとして熟読したのは、高橋正雄「二十世紀アメリカ小説」全四巻(1973~1979・冨山房)と、トニー・タナー「言語の都市」(原著1971/翻訳1980・白水社)、レイモンド・M・オールダマン「荒地の彼方」(原著1972/翻訳1981・評論社)の六…

#1.あるジャズ・バンドの記録(再録)

ぼくは以前ジャズのアルトサックス奏者だった。もちろんアマチュアだが、ジャズの世界には意外にもプロとアマの垣根はなかった。アルトを選んだのは勘違いからだったが(テナーと変わらないと思ったのだ)アルトにして良かった。アルトとテナーでは、猫と虎ほ…

通院日記・9月10日(火)曇り

今日の通院は歯科で、義歯の型取りを受けてきた。ぼくの行きつけの歯科はガキの頃から(妻や娘たちの付き添いも含めて)腕前も対応も最高で、一人暮らしで郷里に戻り医療は最良の環境に恵まれている-大学生時代から暮した登戸~向ヶ丘遊園(多摩区宿河原)が懐…

二十世紀の十大小説(4)サンプル編

* 長い間、私は早く寝床に就き、時には蝋燭を消すとすぐに寝入り、眠るんだなと考える隙すらなかったが、三十分ほどで眠らなければと思いながら目が覚め、まだ手にしているつもりの本を置いて明かりを消そうとするのは、眠りながらもそれまで読んでいた本の…

通院日記・9月9日(月)曇り

昨夜の記事二本は三時間で書いた。晩は久しぶりに、ジャック・ドワイヨンの映画をDVDで見直した。大体この人の映画はうじうじした登場人物がうじうじしたまま終る、というぼく好みの作風で、処女長編の「頭の中に指」や、監督自ら主演の(制作費不足だったら…

(補20h)アルバート・アイラー(ts)

Albert Ayler(1936-1970,tenor sax)。 晩年のアイラーには奇行が目立った。顔にペインティングして出歩いたり、マイルス(!)出演中のクラブに自分のレコードを休憩中にかけてほしいと頼みに行き断られて人前で号泣したという。言動も狂信的になっていた。 ア…

60年代のアメリカ小説(序)

筆者が高校生の頃に熟読したアメリカ小説の参考書が六冊ある。そのうちの四冊は、高橋正雄の「二十世紀アメリカ小説」全四巻(1973~1979・冨山房)で、これに取り上げられている小説で翻訳があるものは国会図書館から取り寄せまでして全て読んだ(町の図書館に…

(補20g)アルバート・アイラー(ts)

Albert Ayler(1936-1970,tenor sax)。 アイラーの場合、中期の総決算というべき傑作ライヴ盤、「イン・グリニッジ・ヴィレッジ」66-67の発売よりも、師でありインパルス・レーベルの看板スターだったジョン・コルトレーンの急逝(67年7月)によってアイラーの…

クワガタムシの観察

今日、インスタント・コーヒーの空き瓶を挟んで風通しを良くした玄関の土間にまだ小さなクワガタムシが入り込んでいるのを見つけた。小指の第二関節にも満たない全長で、CDのケースほどの厚みもない。あまりに平べったいので、最初はゴキブリかと思ったくら…

(補20g)アルバート・アイラー(ts)

すいません、今日は間に合いませんでした。アルバート・アイラー編はあと二回で完結します。(補20g)は明日載せます。ご紹介するのは最晩年のスタジオ録音になったこの三枚です。

療養日記・9月6日(金)曇り

滅多にないことだが、たまにはぼくだってスウィーツの写真くらい載せたっていいだろう。このプリンとアイスクリームは、いつの間にかローソンでポイントが貯まっていたので景品にもらってきたものだ。甘いものを食べるのは今年はヴァレンタイン・デイにいた…

(補20f)アルバート・アイラー(ts)

Albert Ayler(1936-1970,tenor sax)。 インパルスは大手MCA傘下のジャズ・レーベルで、その看板スターはマイルス・クインテットから独立し自己のカルテットを結成したジョン・コルトレーンだった。60年代のマイルスは主流ジャズの中で徐々に聴衆の嗜好を離れ…

通院日記・9月5日(木)雨のち曇り

今日は悪天候の中を裕に合計二時間は歩いた。平均的な歩行速度は一時間あたり四キロと言うが、天候が悪かったので距離はもっと短いだろう。 ぼくなど遠出の歩行すらメンタル刺激になると言われているので気をつけなければならないが、今日はまだ台風の気配が…

(補20e)アルバート・アイラー(ts)

Albert Ayler(1936-1970,tenor sax)。 アイラーは、セシル・テイラーやオーネット・コールマン同様サイドマン参加作が極端に少ない。ロリンズやコルトレーンですら「アイラーのように吹けたら」と嘆息したというが(実際アイラーの影響を感じさせるアルバムも…

伊藤比呂美『カノコ殺し』1985

伊藤比呂美(1955-)は80年代女性詩の最大のスター詩人だった。「草木の塔」1978、「姫」1979の二作で注目を集め、「伊藤比呂美詩集(ぱす)」1980で評価を確立する。1982年の「青梅」は詩書としては異例のヒット作となり、1985年の育児エッセイ「良いおっぱい・…

(補20d)アルバート・アイラー(ts)

Albert Ayler(1936-1970,tenor sax)。 エリック・ドルフィーがオランダ国営放送用に録音した「ラスト・デイト」64.6.2はヒルヴェルスム市のスタジオで収録され、6月29日のドルフィーの急逝により遺作となった。旧友のコルトレーンが「クレッセント」を完成し…

コメントとリコメント

[「劇場版・魔法少女まどか☆マギカ」をめぐって] ぼくも「魔法少女リリカルなのは」程度に面白ければいいや、と思って観たのであまりにとんでもない内容でのけぞりました。最後まで観ると、結局ほむらが主人公なんですよね。世界がリセットされて、たっくん…

(補20c)アルバート・アイラー(ts)

Albert Ayler(1936-1970,tenor sax)。 ESPレーベル第一弾としてバイロン・アレン・トリオはともかく、ジュセッピ・ローガン・カルテットとアルバート・アイラー・トリオのメンバーは凄かった。前者はミンガス・ジャズ・ワークショップのピアニストになるドン…

通院日記・9月2日(月)曇り

曇りだが湿度が高くて蒸し暑かった。今日は話すほどのことはないなあ、と思いながら待合室でこの記事のタイトルだけ書いたところで診察室の扉が開き、主治医に呼ばれる。メンタル・クリニックに通い始めてしばらくは、主治医と一対一なのがなんとなく落ちつ…

(補20b)アルバート・アイラー(ts)

Albert Ayler(1936-1970,tenor sax)。 契約レーベルはデンマークの会社だが、帰国したアイラーはニューヨークで本格的な活動を開始する。前作「マイ・ネーム・イズ~」の好評でアイラーは本国のフリー・ジャズ支持者からも期待の新人になっていたから、一年…

四編のフランス散文詩(抄)

真に、今は真夜中。虚ろな響きが家具に反響するだけで、鏡に消え失せもせず、壁掛けに潜みもしない。それは深夜だけの儚い夢の黄金、豪華だが無用の遺物に見せかけようとしていたのを思い出す-金銀細工の海と星の、複雑で無限の偶然から、数多くの結合が読…

(補20a)アルバート・アイラー(ts)

Albert Ayler(1936-1970,tenor sax)。 アルバート・アイラーの音楽を一度でも耳にしたら、決して忘れられない。こんな音を出すミュージシャンはいないだろう。音色だけで他にはない音楽を作ってしまった。その意味でアイラーはフリー・ジャズのみならず、20…

おいしいナポリタンの作り方

かなり前にも紹介したが、伊丹十三に「カンツォーネを聴きながらスパゲッティを食べよう」というレコードがある。昭和43年の発売で、伊丹十三が女性アナウンサー相手にたれるウンチクと、大野雄二がイタリア人女性歌手を起用したラウンジ調カンツォーネが交…

(補19)ヘンリー・グライムス(b)

Henry Grimes(1935-,bass)。 50年代後半~60年代半ばに活動したグライムスは突然ジャズ界から消息を絶ち、故人になったものと思われていた。ジュセッピ・ローガンみたいにホームレスになったあげく精神病院という噂(事実だったが)ほどではなかったが、おそら…