人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2014-07-01から1ヶ月間の記事一覧

The Spontaneous Music Ensemble-Karyobin(1968)

ジャズの名盤と言われるものも100枚200枚ではきかないが、内容の良さに加えて歴史的な重要性もあるものは繰り返し聴くほどに発見があり、飽きがこない。音楽に革新性があるからだ。スポンティニアス・ミュージック・アンサンブル『カリョービン』などもそれ…

アル中病棟入院記239

(人物名はすべて仮名です) ・5月17日(月)晴れ (前回より続く) 「そういうわけで今日から冷蔵庫整理は日直当番の人がお願いします、と尾崎さんが説明し始めると、坂部がだって日直は婦長が決めるんだろ?そうだよ、だから自分たちで決める必要はない。冷蔵庫…

偽ムーミン谷のレストラン(57)

食事に戻る前に、とジャコウネズミ博士、切り抜いたテーブルを戻さなければいかんな。杖を抜くから少し持ち上げてくれんかね? よしきた、とヘムル署長が手を添えました。ひとりで持たん方がいいぞ。ん、なぜだね?結構重いからさ。なあにこの程度大丈夫さ。…

偽ムーミン谷のレストラン(56)

それにしてもだ、とムーミンパパは言いました、レストランでまだ良かったよ。これが熟女パブや熟女サロンだった場合どうなっただろう? ・ムーミン谷に熟女パブができたそうだよ、とムーミンパパは新聞から顔を上げて、言いました。 うむ、やはり熟女パブや…

アンドレ・ジッド(14)ジッドとジャンル意識(続)

ようやくアンドレ・ジッド(1869~1951)の小説以外の著作について、具体的にご紹介できます。まず劇作家としては、 [戯曲]01年(32歳)『カンドオル王』・08年(39歳)『バテシバ』・31年(62歳)『エディプ』・39年(70歳)『十三本目の木』・45年(76歳)『一般の利益…

アル中病棟入院記238

(人物名はすべて仮名です) ・5月17日(月)晴れ 「朝日新聞朝刊、ロニー・ジェイムズ・ディオ訃報、享年67歳・胃癌(16日没)」 「今日は動きがあわただしい。まず勝浦くんと小林くんの退院があるが、その前の朝食後に坂部が池田くんに冷蔵庫整理を教えていて絶…

偽ムーミン谷のレストラン(55)

さてこうして、とヘムル署長は乾杯の音頭を取り最初のひと口をすすると、型に寄せたテーブルの仲間に言いました、現在のムーミン谷でもっとも賤しい稼業の四人が揃ったわけだ。 ジョッキに口をつけていた他の三人も次々最初のひと口を飲み込むと、ずるいぞ署…

本日休業

二週間ほど前に、年に一度の誕生日くらい前後は休もう、今年は満50歳とキリもいいし、と「更新お休みします」というような題で断り書きを載せ、四、五日は旧記事の再録を載せた。一応毎晩深夜日付変更とともに更新というのがこのブログ唯一の取り柄なので、…

偽ムーミン谷のレストラン(54)

わーったわ、とミムラねえさんは妥協案を思いつきました。35人の兄弟姉妹全員が同じテーブルで食べる以上、みんながてんでバラバラの料理を注文するというのは面倒なばかりか注文、または受注ミスのリスクすらともないかねません。誰しも公けの場でのトラブ…

偽ムーミン谷のレストラン(53)

ところで、とムーミンパパは小首をかしげました、今はどのくらい経ったのだろう?なんだかあっという間だったような気もするし、いつまで経っても進んでいないような気がするぞ。 当り前だろこのカバ、とムーミンママは優しくほほえみました。ムーミン族の妻…

アンドレ・ジッド(13)ジッドとジャンル意識(続)

前回は、アンドレ・ジッド(1869~1951)の小説以外の著作年表を掲載しただけで紙幅が尽きました。未完成戯曲は省略し、没後にはリルケ、クルティウス、ヴァレリーとの往復書簡が刊行されました。注目はやはりヴァレリーで、ジッドより二歳年下ながらマラルメ…

アル中病棟入院記237

(人物名はすべて仮名です) ・5月16日(日)晴れ (前回より続く) 「―ここからは夕方記入。日記書いたり一服したりでだらだら過ごし、二時半すぎ滝口さんからのメールに気づく。昨日・今日とご主人の体調が良くないので、万が一の場合は明日行けなくなるかもと勝…

偽ムーミン谷のレストラン(52)

まもなくスナフキンは黒い丘のほうへ急ぎました。牧場の後ろはゆるい丘になって、その黒い平らな頂上は北斗七星の下に、ぼんやり普段よりもつらなって見えました。 スナフキンは、もう露の降りかかった小さな林のこみちを、どんどんのぼっていきました。まっ…

アンドレ・ジッド(12)ジッドとジャンル意識(続)

今回は、アンドレ・ジッド(1869~1951)の小説以外の著作年表を作成しました。次回で解説します。 1891年(22歳)『ブルターニュの旅より』紀行 1898年(29歳)『フィロクテテス』戯曲 1901年(32歳)『カンドオル王』戯曲 1903年(34歳)『サユウル』戯曲、『プレテ…

アル中病棟入院記236

(人物名はすべて仮名です) ・5月16日(日)晴れ 「いまNHKのど自慢が始まった所なのがデイルームから聞えてくる。今日はおおむね平穏に過ぎそうだ。朝の会でも特別な連絡事項なし、三田さんは昨日から帰宅外泊しているし、金子は相変らず消息不明で憶測ばかり…

偽ムーミン谷のレストラン(51)

第六章。ムーミン谷近代美術館所蔵映画全目録。『愛と死をみつめて』『赫い髪の女』『赤いハンカチ』『秋津温泉』『網走番外地』『天城越え』『嵐を呼ぶ十八人』『ある殺し屋』『生きているうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』『伊豆の踊子』『一心太…

アンドレ・ジッド(11)『贋金つかい』『贋金つかいの日記』(続)

1926年の『贋金つかい』と創作日記『贋金つかいの日記』は、アンドレ・ジッド(1869~1951)にとって創作の代表作であり、同時代の反響・影響ばかりか現代小説もジッドの提示した文学観の延長にあります。横光利一、川端康成、石川淳らは直接ジッド全盛期の影…

アル中病棟入院記235

(人物名はすべて仮名です) ・5月15日(土)晴れ (前回より続く) 「拍手を受けて断酒会地区会長もでは今夜はこれで、と閉会したのに、池田くんの質問、というより意見陳述は止まらない。少しだけ参加患者もこらえたが坂部(いかにもあいつらしい)が喫煙室に立っ…

偽ムーミン谷のレストラン(50)

手際がいいな、とジャコウネズミ博士は感心してヘムル署長とスティンキーの前に並んだ前菜を眺めやりました。われわれなんぞはまだ食前酒すら頼んでおらんよ。まあそれは先生方は学者だがわれわれはおまわりと泥棒だからね。うむ、では同じものを注文するの…

アンドレ・ジッド(10)『贋金つかい』『贋金つかいの日記』

1926年の『贋金つかい』と創作日記『贋金つかいの日記』は57歳、作家デビュー35年になるアンドレ・ジッド(1869~1951)が、自分にとって最初で最後になるだろうロマン(長編小説)という意気込みから全力をそそいだ作品でした。これが自己の唯一のロマンである…

アル中病棟入院記234

(人物名はすべて仮名です) ・5月15日(土)晴れ (前回より続く) 「午後の外出から戻った池田くんは、どこの新聞から切り抜いてきたのか『日本の医療は間違っている』という書籍広告をどう思います?と誰彼に訊き、これが詰問調ならわかりやすい被害妄想だが、…

偽ムーミン谷のレストラン(49)

残飯をあさる生活といってもスナフキンの場合は、もしありつけさえすればかなりマシな残飯が得られました。いや、かなりどころではなかったのです。もちろんスナフキンはゴミ捨て場から食品を拾う行為に最初は抵抗がありましたが、まず疑問だったのはゴミ捨…

アンドレ・ジッド(9)ジッドのジャンル意識

1926年の『贋金つかい』と創作日記『贋金つかいの日記』から、アンドレ・ジッド(1869~1951)はかつての自己の創作を詩的散文、レシ(物語)、ソチ(風刺作品)に分類します。それは『贋金つかい』こそ自己にとって最初で最後になるだろうロマン(長編小説)という…

アル中病棟入院記233

(人物名はすべて仮名です) ・5月15日(土)晴れ (前回より続く) 「昼食をはさんで地元の友人知人に退院日決定の報告を送る。遠隔地の友人とは滅多に会う機会もないので今回の入院は知らせていない。滝口さんへの再返信は明日でいいだろう。結局この病院の交通…

偽ムーミン谷のレストラン(48)

ん?もう一度言ってくれないか、とスノークは言いました。どうもお前はお嬢さんぶって話すから聞き取りづらい時が多いな。本当のお嬢さまは威圧的なほど明晰に話すぞ。だからといって威圧的に話せとはいわないが。 トイレに行ってくる、とムーミンパパ。あら…

偽ムーミン谷のレストラン(47)

ムーミンパパの無駄話と食前の飲み物の追加注文で、すでに運ばれていたスープからすっかり気がそれていたのは、偽ムーミンには偶然の幸いでした。熱い状態でのそれは、おさびし山の岩をも溶かし、海水浴場にまけばあらゆる水中生物の息の根をとめる猛毒だっ…

アメリカ喜劇映画の起源(7)

10枚組廉価盤DVDボックス『爆笑コメディ劇場』(コズミック出版)は、前回でチャップリンの三枚とロイドの二枚を解説しました。今回はキートンの三枚とマルクス兄弟の二枚です。 キートンとマルクス兄弟の評価が定まったのは全盛期の人気も凋落し、すでに彼ら…

アル中病棟入院記232

(人物名はすべて仮名です) ・5月15日(土)晴れ 「あさっては勝浦くんの退院日、そのしあさってはついに退院日。こういうのはその日になればあっけないが、間近になると毎日が妙に長いのだ。だがつい数日前を思い出すとすごい速度で時間が加速しているようにも…

偽ムーミン谷のレストラン(46)

あの時はひどかったな、とヘムレンさんは唸って言いました。狂気の沙汰も金次第、または正気の沙汰ともいうが、貨幣などムーミン谷にはないからあの場合は食次第というべきか。だがわれわれトロールにとって食事はイメージでしかないのだから、より正確に言…

偽ムーミン谷のレストラン(45)

ここに来る前と来てからのおれ、正確には来て放浪者になってからのおれは、まるで別人のようだ。それは放浪生活を始めたからなのか、放浪生活を強いられているからなのかはおれ自身にも区別がつかなくなっている。だいいちそれ以前からおれの仕事は町から町…