人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

#メンタルヘルス

アル中病棟入院記240

(人物名はすべて仮名です) ・5月17日(月)晴れ (前回より続く) 「一服済ませると尾崎さんは当番の各部屋をまわって先週担当の部屋以外から人集めをし、冷蔵庫の整理は今朝一度坂部が池田くんに教える口実で嫌がらせに処分だけしていたから再整理とはいえ遅く…

アル中病棟入院記239

(人物名はすべて仮名です) ・5月17日(月)晴れ (前回より続く) 「そういうわけで今日から冷蔵庫整理は日直当番の人がお願いします、と尾崎さんが説明し始めると、坂部がだって日直は婦長が決めるんだろ?そうだよ、だから自分たちで決める必要はない。冷蔵庫…

アル中病棟入院記238

(人物名はすべて仮名です) ・5月17日(月)晴れ 「朝日新聞朝刊、ロニー・ジェイムズ・ディオ訃報、享年67歳・胃癌(16日没)」 「今日は動きがあわただしい。まず勝浦くんと小林くんの退院があるが、その前の朝食後に坂部が池田くんに冷蔵庫整理を教えていて絶…

アル中病棟入院記237

(人物名はすべて仮名です) ・5月16日(日)晴れ (前回より続く) 「―ここからは夕方記入。日記書いたり一服したりでだらだら過ごし、二時半すぎ滝口さんからのメールに気づく。昨日・今日とご主人の体調が良くないので、万が一の場合は明日行けなくなるかもと勝…

アル中病棟入院記236

(人物名はすべて仮名です) ・5月16日(日)晴れ 「いまNHKのど自慢が始まった所なのがデイルームから聞えてくる。今日はおおむね平穏に過ぎそうだ。朝の会でも特別な連絡事項なし、三田さんは昨日から帰宅外泊しているし、金子は相変らず消息不明で憶測ばかり…

アル中病棟入院記235

(人物名はすべて仮名です) ・5月15日(土)晴れ (前回より続く) 「拍手を受けて断酒会地区会長もでは今夜はこれで、と閉会したのに、池田くんの質問、というより意見陳述は止まらない。少しだけ参加患者もこらえたが坂部(いかにもあいつらしい)が喫煙室に立っ…

アル中病棟入院記234

(人物名はすべて仮名です) ・5月15日(土)晴れ (前回より続く) 「午後の外出から戻った池田くんは、どこの新聞から切り抜いてきたのか『日本の医療は間違っている』という書籍広告をどう思います?と誰彼に訊き、これが詰問調ならわかりやすい被害妄想だが、…

アル中病棟入院記233

(人物名はすべて仮名です) ・5月15日(土)晴れ (前回より続く) 「昼食をはさんで地元の友人知人に退院日決定の報告を送る。遠隔地の友人とは滅多に会う機会もないので今回の入院は知らせていない。滝口さんへの再返信は明日でいいだろう。結局この病院の交通…

アル中病棟入院記232

(人物名はすべて仮名です) ・5月15日(土)晴れ 「あさっては勝浦くんの退院日、そのしあさってはついに退院日。こういうのはその日になればあっけないが、間近になると毎日が妙に長いのだ。だがつい数日前を思い出すとすごい速度で時間が加速しているようにも…

アル中病棟入院記231

(人物名はすべて仮名です) ・5月14日(金)晴れ (前回より続く) 「入院だけで終るつきあいじゃないだろ、おれは佐伯くんに一目も二目も置いているんだぜ、と勝浦くんには相当買いかぶられているが、彼がこれまで出会ったタイプの人間ではないというだけのこと…

アル中病棟入院記230

(人名はすべて仮名です) ・5月14日(金)晴れ (前回より続く) 「清水くんにとっては入院は統合失調症の奥さんの看護疲れ(それで鬱になった)からの解放だったのだが、清水くんの入院は残された奥さんの病状を悪化させてしまった、ということだろう。そして退院…

アル中病棟入院記229

(人名はすべて仮名です) ・5月14日(金)晴れ (前回より続く) 「女医の先生の酒害教室の授業は落ち着いた、わかりやすい内容だった。担当医ではないから一度も話したことはないが、冬村さんと滝口さんはこの人が主治医だと話していた憶えがある(注)。勝浦くん…

アル中病棟入院記228

(人名はすべて仮名です) ・5月14日(金)晴れ 「午前のプログラムはウォーキング。目的地はもみじ公園だが『ゆっくり組』の選択者の方が圧倒的に多いので市民プールまで行って休憩し、戻ってくる。外出時の団体行動を見ていると各人の意外なクセがわかって面白…

アル中病棟入院記227

(人名はすべて仮名です) ・5月13日(木)晴れ (前回より続く) 「滝口さんの一通目のメールはすっかり勝浦くんに日にちを合わせて退院するものと決めこんだ文面で、車で迎えに行くから帰りがけ一緒に食事しましょう、と内容は相変わらず、だがようやく決定する…

アル中病棟入院記226

(人名はすべて仮名です) ・5月13日(木)晴れ (前回より続く) 「昼食前の空き時間に、尾崎さんから今、外来ロビーに冬村さんが来て勝浦さんと話してるよ、と教えられて、入院中の挨拶くらいはいいかとロビーに降りると冬村さん(外来通院)を囲んで勝浦くん、三…

アル中病棟入院記225

(人名はすべて仮名です) ・5月13日(木)晴れ (前回より続く) 「学習プログラムはもう一巡しているので、負担になるようなら退院までは休んでよいと言われる。薬は四週間分まで出せるので、飲み切る前に元々通っていた地元クリニックへの申し送り書は通院予約…

アル中病棟入院記224

(人名はすべて仮名です) ・5月13日(木)晴れ (前回より続く) 「尾崎さんは見た目は角刈りで元ヤンキー然としており、長距離トラックが仕事だというから自前のトラックで契約ドライバーとして働いていたのだと思うが、長距離を何時間もぶっ飛ばしていると飲み…

アル中病棟入院記223

(人名はすべて仮名です) ・5月13日(木)晴れ 「アラン・シリトー死去、享年82歳というのは先月26日の切り抜きだ。朝一番に小川看護婦に声をかけられ(この人は優しい)、第三病棟のナースステーションに採血されに行く。部屋に戻り、AA参加外出の時に買ったマル…

アル中病棟入院記222

(人名はすべて仮名です) ・5月12日(水)小雨のち晴れ (前回より続く) 「日記をつけるため手帳を開くと、3月24日全体会のメモが目についた。テーマは『最近思っていること』で、当時の座席順に柳瀬、渥美、松本、清水、冬村、杭瀬(欠席)、加山、木島、仲村、勝…

アル中病棟入院記221

(人名はすべて仮名です) ・5月12日(水)小雨のち晴れ (前回より続く) 「そうなの?という婦長の口調には何かこれから嫌味を言いたそうな気配があった。アルコール依存症治療病棟という環境が大きいとは思うが、ここでは看護婦が患者の人格を揶揄したり誹謗し…

アル中病棟入院記220

(人名はすべて仮名です) ・5月12日(水)小雨のち晴れ (前回より続く) 「避難にはそれなりに用意をしている人もいて、中西さんはハンカチで口と鼻を押さえ、尾崎さんと大芝くんはタオルを防塵マスクにして気分を出していた。降谷智子は枕を抱えていたのでまた…

アル中病棟入院記219

(人名はすべて仮名です) ・5月12日(水)小雨のち晴れ 「朝はいいタイミングで起きる。ワゴン到着五分前。勝浦くんも起こす。朝食後に、水曜日は全体会があるがどんなもんかねえ、と部屋で話していると朝の会に呼ばれる。午後二時20分から防災(避難)訓練がある…

アル中病棟入院記218

(人名はすべて仮名です) ・5月11日(火)雨 (前回より続く) 「昼食のワゴンが届き、配膳が終り、みんなが食べ始めた頃に勝浦くん戻ってくる。梅崎さんはやっちまったってよ。缶チューハイ一本だけで酔いが回ったそうだ。だが毎日飲み潰れて再入院までにはなら…

アル中病棟入院記217

(人名はすべて仮名です) ・5月11日(火)雨 「久しぶりの雨で肌寒い。もし来週月曜が退院日になるなら今週のプログラムで最後の一巡だ。もう内容には既視感があるから、実質的には二か月で一通りの学習を履修している。入院してきた時は初入院の人が大半だった…

アル中病棟入院記216

(人名はすべて仮名です) ・5月10日(月)曇り (前回から続く) 「午後の掃除は週に一度の環境整備(消毒清掃)。三田さんが灰皿当番を忘れて寝ているので工藤くんが次回の担当日との入れ替えで灰皿当番にまわる。掃除の後は二時からビデオ学習。自分の酒歴発表を…

アル中病棟入院記215

(人名はすべて仮名です) ・5月10日(月)曇り (前回から続く) 「昨晩から掲示板に*10:15~酒歴発表・佐伯様とあるのをみるたびに落ち着かない。朝食、検温、朝の会、冷蔵庫清掃(月曜のみ)と進み、いよいよ酒歴発表の時刻になる。アルコール科の患者だけなので…

アル中病棟入院記214

(人名はすべて仮名です) ・5月9日(日)晴れ (前回から続く) 「一服終えて勝浦くんとデイルームの席でテレビを観ながら他愛ない雑談をしていると、勝浦くんが急に表情を引きつらせてこちらの肩越しを指す。姿勢を正すふりをして中腰になって座ると、背後にいつ…

アル中病棟入院記213

(人名はすべて仮名です) ・5月9日(日)晴れ (前回から続く) 「風呂騒動は昨日の話で、今日はさらにひと悶着あった。佐藤さんが日直の手順を訊きにきたので掲示板の前で説明した。佐藤さんは過去数回の入院歴があり、それはもう驚かなくなっていたし、入院する…

アル中病棟入院記212

(人名はすべて仮名です) ・5月9日(日)晴れ 「母の日。今年は義母にも娘たちの母へも花は贈らずに済ます。この週末の帰宅外泊患者は坂部、金子、尾崎さんの三人だけというのも珍しいが、尾崎さんは気性の良い人だからともかくとして、何かにつけて他人に絡み…

アル中病棟入院記211

(人名はすべて仮名です) ・5月8日(土)晴れ 「朝の会は山崎さんの転院のあいさつ。もう肝癌がステージ4に進行していて延命措置の可能性しかない、と本人の口から淡々と告げられる。皆さんも引き返せるうちに引き返してください、と結ばれると沈鬱な拍手で送…