映画
今回で現在DVD発売されて手軽に観ることのできる小林正樹の監督作品はひと通り観てきた(観直してきた)ことになります。小林正樹の監督作品はDVD化がなかなか進まず2000年代初頭に『人間の條件(三部作)』『切腹』『怪談』『上意討ち 拝領妻始末』『化石』『東…
ご当地映画はいつの時代でもたいがいは喜ばれるもので、'90年代以降は地方自治体をスポンサーにつけて映画製作しようというのがさかんですが、これは'70年代~'80年代に企業をスポンサーにして映画製作しようというのがバブル後には頭打ちになってしまったた…
前作『切腹』'62でカンヌ国際映画祭審査員賞・キネマ旬報ベストテン3位を獲得し絶頂期に入った小林正樹は、プロデューサーともども10年来の企画で小林自身が学生時代から愛読していたイギリス人の帰化文学者、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン、1850-1940)の『…
小林正樹の映画についての唯一の単行書文献は生前1冊もなければ、没後も20年あまりを経て生誕100年の2016年にようやく刊行された生前のロング・インタビュー、全作品データと論評、資料を集成した小笠原清・梶山弘子編『映画監督 小林正樹』(岩波書店・平成2…
小林正樹の監督作品が初めて国際的な映画祭で受賞したのがこの『人間の条件』'59-'61で、1962年の完結後にヴェネツィア国際映画祭の審査員特別賞に相当するサン・ジョルジオ賞・イタリア批評家賞を受賞しました。世界最大の映画産出国はアメリカ合衆国ですが…
大作『人間の條件』の『第三部望郷篇、第四部戦雲篇』はいよいよ主人公が召兵されてからの物語で、「第三部望郷篇」では初年兵教育の非人間的で残忍極まりない実態を初年兵で二等兵の主人公が経験する中で自殺に追いこまれる初年兵、残忍な上等兵、ソ連国境…
完成度や芸術性、瑕瑾を越えて圧倒的な代表作になっている作品を持つ創作家は幸運というもので、映画化された時点で累計1,000万部に迫るセールスを記録していた大ベストセラーの自伝的長編小説『人間の條件』'56-'58(昭和31~33年刊、全六部)の作者・五味川…
昭和31年(1956年)は小林正樹が監督デビューから5年目にしてようやく第一線監督と認知された年と言ってよく、2月に通算第8作・長編7作目の『泉』が公開され、10月にはずっと公開無期延期されていた第2長編『壁あつき部屋』'53が一般公開され、11月には初めて…
これまでも小林正樹監督作品は題材の割には尺が長いのではないかと感想を書いてきましたが、通算第5作・長編4作目の『この広い空のどこかに』'54でようやく小林作品は1時間50分を均衡が取れて充実した内容で満たすことができた観があります。続く今回の2作『…
監督第3作で松竹の正式な監督昇進後の最初の作品『壁あつき部屋』'53(公開'56年、前回紹介)の公開無期延期は、大平洋戦争勃発前(大東亜戦争はすでに泥沼化していましたが)の戦前の昭和16年春すでに松竹に入社していながら半年ほどですぐ徴兵され、敗戦後も任…
小林正樹は木下惠介監督作品のチーフ助監督を昭和23年('48年)の戦後第7作(通算第11作)『破戒』(12月公開)から昭和28年('53年)の戦後第17作(通算21作)『日本の悲劇』(6月公開)まで勤めていますから、監督デビュー作になった昭和27年('52年)の併映用の45分の実…
小林正樹(1916-1996)という映画監督は晩年極端に存在感を失い、没後も再評価らしい再評価もなく全盛期の名声を知る人(または知った人)に地味に観続けられているだけで、ひょっとしたら日本映画ベスト100などの投票からも洩れてしまうかもしれません。松竹へ…
……というのを勝手に決めることにしました。このブログの映画感想文でもしょっちゅう言及するコスミック出版の、次の2組のDVDボックスを表彰したいと思います。 *(*は日本未公開作品、**は日本初DVD化作品) 『フランス映画パーフェクトコレクション~フィル…
2018年も毎月2組リリースされるコスミック出版の書籍扱い廉価版(1,500円~1,800円!)10枚組DVDボックスの各種シリーズからは目が離せませんでした。これはP.D.(著作権期限切れ)映画をジャンル別に集めたシリーズなのですが、有名で人気の高い名作傑作、レス…
昨年2018年にまとめて観直して最大の発見だったのは、アメリカ映画史上最高の男性俳優はロン・チェイニーだったということで、学生時代からぽつりぽつりと観てきたロン・チェイニー主演作がまとめて観るとこれほど強烈で、サイレント時代の男性俳優としては…
あけましておめでとうございます。 正月三が日は索引も兼ねて、観直して昨年2018年度の映画日記に感想文を書いた映画をリストにしてみました。短中長あわせて360本あまりを昨年も観たことになります。映画日記は2016年から続けているので、3年来で1,000本あ…
アメリカ古典モンスター映画といっても今回取り上げたコスミック出版のボックスセット3種・29作は九尾の一毛ですが、最終回にRKOラジオ映画社のゾンビ映画2作が掉尾を飾るのは作品の出来もめでたいので嬉しいことです。RKOラジオ映画社は'30年代~'40年代の…
コスミック出版のボックスセット『ホラー映画パーフェクトコレクション~ゾンビの世界』は実にうまいセレクションがされていて、昨年2017年6月の発売時にも再見・未見の作品を含めて一通り観ましたが、今回感想文を書くために製作映画社と年度を調べてみると…
ゾンビ映画は古典時代('30年代~'40年代)にもインディペンデント映画、メジャー映画、マイナー社映画と出自もばらばら、内容も多彩で予期できないものですが、今回はメジャー映画社からのゾンビ映画2作、マイケル・カーティス(!)監督のボリス・カーロフ主演…
世界初のゾンビ映画とされるインディペンデント映画の『恐怖城(White Zombie)』'32はエドワード(製作、生没年不詳)とヴィクター(監督、1895-1983)のハルペリン(Halperin)兄弟が共同設立したハルペリン・プロダクションズが製作・監督し、主演のベラ・ルゴシ…
コスミック出版の『フランケンシュタインvs狼男』『ドラキュラvsミイラ男』に続く古典ホラー映画ボックス第3集は『ホラー映画パーフェクトコレクション・ゾンビの世界』2017年6月23日刊(10枚組)で、ジョージ・A・ロメロ逝去の前月にリリースされた同ボックス…
今回の2作でアボット&コステロ主演のパロディ映画の第6作で最終作『凸凹ミイラ男の巻』'55以外のミイラ男のシリーズは、ホラー映画としての最後の第5作までご紹介することになりますが、前回のおさらいをしておくと、ユニヴァーサルのミイラ男映画は'32年に…
ユニヴァーサル・ホラー4大モンスターは年代順にドラキュラ、フランケンシュタイン(の怪物)、ミイラ男、狼男ですが、これらは以外とそれほどシリーズとしては多くはなく、フランケンシュタイン8作(狼男と合流1作、ドラキュラと狼男の合流3作うちアボット&コ…
アメリカでは原作著作権継承者からライセンスを取った『魔人ドラキュラ』'31でドラキュラの名称はユニヴァーサル映画社が商標登録したので、著作権消滅期限までドラキュラと名のつく映画、ドラキュラを名乗る吸血鬼の映画はユニヴァーサル社だけのものでした…
今回からのコスミック出版の書籍扱い廉価版ボックスセットは『ホラー映画傑作集~ドラキュラvsミイラ男』で(発売順)、『フランケンシュタインvs狼男』は9本組・全作ユニヴァーサル作品かつ3作はフランケンシュタインの怪物と狼男の競演作(さらに1作はドラキ…
第3回の3作でボックスセット『ホラー映画傑作集~フランケンシュタインvs狼男』収録の9作の感想文は一段落となります。まだこのあと『ドラキュラvsミイラ男』『ゾンビの世界』(各10枚組)が控えているので1/3にも達しませんし、今回のフランケンシュタイン・…
いやはやもう、2回目の今回の感想文にとりかかる現在すでに10数本の、ユニヴァーサル・ホラー中心のこのコスミック出版からのアメリカ古典モンスター映画ボックスセット(『フランケンシュタインvs狼男』は全作ユニヴァーサル、『ドラキュラvsミイラ男』は1作…
今回からは9月に観た『フランス映画パーフェクトコレクション』同様、コスミック出版からの書籍扱いDVDボックスセット3組でアメリカの古典モンスター映画を観て感想文を書いていきたいと思います。基本的には10枚組で1セット1,500円~1,980円の廉価版リリー…
延々年代順に観てきた『フランス映画パーフェクトコレクション』の3集分に収められた10×3=30作もようやく今回の2作が最終回で、『フランス映画パーフェクトコレクション』は9月発売の『情婦マノン』、10月末発売予定の『嘆きのテレーズ』とまだ続きますが、…
フランスの20世紀後半の映画の中で、おそらくもっとも広く観られていて人気が高く、特に映画好きの人でなくてもタイトルが浸透している作品は候補はいくつか上げられますが、中でもポピュラー性の点でずば抜けて際だっているのは『禁じられた遊び』'52ではな…