人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(1)日本の60年代ロック研究史

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日本においてはまず同時代証言者として近田春夫が80年初頭からラジオでしばしばグループ・サウンズ特集をし、元GSの直接証言も増え始め、音楽誌「プレイヤー」でも特集が組まれた。タイガースがデヴューし、ブルー・コメッツが「ブルー・シャトウ」でレコード大賞・紅白出演した67年からほんの数年間のGSブームは70年を境に急激に終息したから、まだ十数年も経っていない時期で、流行現象としてとらえるのか、音楽そのものを再評価するのか区別は難しかった。

日本の60年代ロックの本格的な研究は故・黒沢進(1954-2007)を中心としたグループに始まる。「私家版 GSディスコグラフィー」(81年コピー製本)から「資料・日本ポピュラー史研究(上)」「(下)」(82年、83年)の自費出版により注目される。文筆活動専念後は一般書「熱狂!GS図鑑」(86年)を発表、コラムニストとして活動しながら研究の集大成「日本の60年代ロックのすべて」(89年)を自費出版、その後「日本フォーク紀」(92年)、「日本ロック紀GS編」(94年)を発表。90年代以降は200タイトルを越える再発CDの監修・解説を手掛ける。「フォーク紀」「ロック紀」は生前には改訂版は完成せず、故人の遺志を継いだ執筆者によってコンプリート版が完成された。

残念なのは故人が心血を注いで復刻・監修してきた再発CDのほとんどが初回プレスだけで廃盤になっていることで、元の定価の数倍なのは泉下の故人にも本意ではないだろう。著作が研究編ならCD監修は実践編だったはずで、スパイダースとテンプターズの全アルバムと全シングルのCD復刻、ブルー・コメッツの完全版ボックス・セットですら故人の尽力がなければ実現しなかったのに、今はプレミアつき廃盤になっている。黒沢進没後の日本の60年代ポップス/ロックのCD復刻はすっかり活気を失ってしまった感がある。

さらにイギリス人ロック・ミュージシャン、ジュリアン・コープによる研究書「ジャップロック・サンプラー-戦後、日本人がどのようにして独自の音楽を模索してきたか」(原書07年・翻訳08年)が幅広い視野で70年代までの日本のロックを検証した労作で、故・黒沢氏の逝去と入れ違いになったのが惜しまれる。解説対談は近田春夫マーティ・フリードマンだが、黒沢進を含めた座談会だったら更に良かっただろう。