人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(9)知られざるA級ザ・ジャガーズ

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ジュリアン・コープ「ジャップロック・サンプラー」のGSの章でもしっかり言及され、解説で近田春夫も重要性とコープの慧眼を賞賛していたGSがザ・ジャガーズ。「若さゆえ~」の歌い出しと口笛が印象的なデヴュー・ヒット『君に会いたい』は幼稚園児の筆者でも記憶に残った。バンドの歴史は古く、63年結成の「野獣会オールスターズ」(「野獣会」は当時の六本木の遊び人サークル)から「ダンディーズ」を経て64年4月に「宮ユキオとザ・プレイ・ファイブ」に発展、65年春からテレビのエレキ番組に出演。67年6月には自称「日本のミック・ジャガー岡本信をリード・ヴォーカルに、タイガースを意識してジャガーズと改名。前述のデヴュー曲から5枚のシングルを連続ヒットさせる。掲載アルバムは、
○「ジャガーズ対カーナビーツ」1967.8(画像1)
○「ザ・ジャガーズ・ファースト・アルバム」1968.2(画像2)
○「ザ・ジャガーズ・セカンド・アルバム」1969.6(画像3)
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これがザ・ジャガーズの全アルバムで、未収録シングルは再発CDに組み込まれている他「コンプリート・シングルズ」としても出ている。アルバムはどれもオリジナル曲(メンバーは作曲力がなかったので、少数の自作曲以外は外部作家への委託作品。当時GSに興味のあった渡辺貞夫も楽曲提供している)と洋楽のカヴァーが半々なので、オリジナルだけ聴くには「シングルズ」の方が向いている。

だがジャガーズには独特のもったりした黒っぽさがあり、オリジナルでもカヴァーでもこのバンドならではの魅力になっていた。カヴァーの選曲も渋い。岡本信のヴォーカルは甘い声質でまるでミック・ジャガー的ではないが、バンド全体の気だるいグルーヴ感とGSでも傑出したリード・ギタリスト沖津まさゆきのつんのめり気味のギター・ワークが一体化すると、タイガース以降の若手GSにはない水商売臭さが漂った。90年代以降のバンドではシャ乱Qくらいしかない。

「日本のジョージ・マーティン」本城和治ディレクター(日本フィリップス)の丁寧なレコード制作、名曲揃いのオリジナルと恵まれたジャガーズだが、プロダクション、メンバーの内紛でアルバム発表は間が開いた。セカンド・アルバムの頃には意欲的な作品にも拘らずジャガーズの人気は回復不可能まで落ちていた。それもこのバンドらしく思える。