人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

日記(9月27日木曜日・曇り)

ぼくが結婚前に住んだアパートは2軒だが、他に3軒のアパートを繰り返し夢で見るのでまるで実際の記憶と混同してしまいそうになっている。また、結婚後に住んだマンションは3軒だが、もう1軒に住んだ夢が繰り返しあって、記憶の中では現実と等しい実在感を持っている。

これらはやはり悪夢なので、夢からさめて薄暗がりに自分ひとりなのをまず確かめ、脱皮でもするように悪夢から身を引き剥がす。間違いなくぼくは自分の覚えているとおりの事情でここに横たわっている、と納得するまで不安感が消えない。それには時間がかかる。ここは独房でもなく、精神病院でもない(両方入ったことがある人は滅多にいないからね、と主治医は言った。だが入院を繰り返すとそうでもないようだった)。自分が生きている現実が限りなく稀薄に思える時がある。

今朝もそういうふうにして起きて、頼りない気分で午前中をやり過ごし、どうやらかなりの低予算映画と踏んでテレビ東京午後のロードショーの「ザ・スナイパー」(原題'The Contract'2006・監督=ブルース・べレスフォード)を見た。午後のロードショーで放映されるような低予算映画にはけっこうシナリオと演出で勝負した佳作も多い。「ザ・コア」なんか同工異曲の「アルマゲドン」より良かった。

ザ・スナイパー」は極端に登場人物が少ない映画で、元軍人で暗殺組織のボス(モーガン・フリーマン)が逃亡中に学校教師(ジョン・キューザック)とその息子にシーズン・オフのキャンプ地で出会い、暗殺組織に追われながら親子はボスを護送するがFBIは秘密の漏洩を怖れて親子ごと抹殺を目論んでいた-という、いたってシンプルな話を雨中の岩壁降り、古い吊り橋渡り、途中で合流するカップルの足手まとい、暗殺組織に紛れ込んだFBIのスナイパーなど実にオーソドックスな段取りで描いていく。最後はおいしいところをみんなモーガン・フリーマンが持っていく。まあ悪人賛歌なのだが、司法が巨悪なのもお約束だからこれでいい。辻褄が合うようになっている。

作業療法にもいろいろあって、作文なんていうのもそのひとつだが、映画鑑賞もよくあるプログラムで主治医に推奨されている。だから何でも見るのだが、「ザ・スナイパー」はストイックなスタイルなので好感が持てた。明晩には「スピード」もある。封切り時に見た映画だ。