人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

フランク・ザッパ&ザ・マザーズ

イメージ 1

イメージ 2

フランク・ザッパ&ザ・マザーズ・オブ・インヴェンション(Frank Zappa & The Mothers Of Invention)の初期3作のアルバムは、同時代ではビートルズをしのぐ影響力があったと推測される。「サージェント・ペパーズ」1967以降のビートルズがなくとも欧米ロックの流れは変わらなかっただろうが、ザッパ&ザ・マザーズの「フリーク・アウト」'Freak Out'1966、「アブソリュートリー・フリー」'Absolutely Free'1967、そして「ウィー・アー・オンリー・イン・イット・フォー・ザ・マニー/俺たちは金のためだけにやっているんだ」'We're Only In It For The Money'1968の三部作がなければサイケ、プログレジャズロック電子音楽系ロック、ブルース・ロック以降のハード・ロック、ほとんどすべてのユーロ・ロック、さらにビートルズストーンズの60年代後半の音楽もまるで違ったものになっただろう。ザッパ&ザ・マザーズはロック史上初めて出現した音楽的実験・政治的前衛バンドだった。チェコの非合法バンド、プラス
チック・ピープルも、日本の頭脳警察もザッパ&ザ・マザーズの曲名から採ったものだ。ドイツのファウストなどはさらにザッパ&ザ・マザーズの手法を徹底させた例になる。

フランク・ザッパ(1940-1993)は10代からロスアンゼルスの音楽業界に出入りし、自分のバンドでデビューする頃には音楽ビジネスの裏表まで知り尽くしていた。広告、印税率、版権など完全にバンドに有利な契約に成功した新人バンド、しかもマネージメントではなくバンドリーダーがすべてを掌握した例は初めてだろう。ステージはエンタテインメントに徹し、レコードの売り上げは中位だったが収益は常に上位だった。

ビートルズの「サージェント・ペパーズ」のジャケット(画像下)の悪意に満ちたパロディ「ウィー・アー・オンリー~」(画像上)は三部作中でも最高傑作とされるアルバムだが、あまりに凝りすぎて聴いている人はほとんどいない、という不幸な作品でもある。ザッパは「フランツ・カフカの『ある流刑地の話』を読んでから聴くこと」と注文をつけている。アルバム内容は痛烈な(当時の)アメリカ文化批判で、日本人にはなおさら難解なのは仕方ないことだろうか。