人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(21)ウェス・モンゴメリー(g)

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Wes Montgomery(1925-1968,guitar)。モダン・ジャズで最高のギタリストというと、ウェスでまず票は割れない。また、ジャズではギターは例外的に白人プレイヤー優勢の楽器だが、ウェスはチャーリー・クリスチャン以来の改革をなしとげた。それは「オクターヴ奏法」と呼ばれる、メロディ・ラインを高音と低音を1オクターヴ離して同時に演奏する方法で、それまでも無数のギタリストが部分的に試してきた手法だが曲の全編をそれで演奏する(もちろんその方が効果的なら単音やコードも弾く)のはウェスが初めて実行してみせた。ウェス35歳のニュー・ヨーク進出のデビュー作が「インクレディブル(驚愕の)・ジャズ・ギター」1960(画像1)というタイトルなのも誇張ではない。それまでロサンジェルスですでに一流ミュージシャンになっていたウェスだが、このアルバムは完璧なデビュー作だろう。
複音を同時に弾くことで自然にリズムのタメと微妙なピッチのずれが音の厚みを増し、それが白人ギタリストにはない黒っぽさになっている。
もっとも故・高柳昌行氏(ギタリスト)のように、トリスターノ門下のビリー・バウアー~ジム・ホールという白人ギタリストの方法自体の改革に較べるとウェスの手法は個人的な名人芸にすぎないのではないか、という意見も一理ある。

ウェスのアルバムはどれも外れがないから、安定した出来のスタジオ盤よりライヴ盤の方が傑出する、という皮肉なことになった。「フル・ハウス」1962、「ソリチュード」1965(画像2)、「スモーキン・アット・ザ・ハーフ・ノート」1965が三大傑作だろう。特にラジオ番組用らしく録音も編集もジャケットも演奏も!雑な「ソリチュード」がいい。名曲『ラウンド・ミッドナイト』はウェスがオクターヴ奏法で完璧にテーマを弾き終えると客の拍手でテナー・サックスが入るタイミングを失い、「ベイビー(笑)」(おいおい、というニュアンスだろう)と客の笑いをとって吹き始める。いいなあこういうの。

晩年のウェスはポップ路線なのだが、ビートルズの「サージェント・ペパーズ」発売翌週にカヴァーした「ア・デイ・イン・ライフ」1967(画像3)は名作。原曲より良いという人も多い。ビートルズの原曲をしのぐカヴァーなど滅多にあるものではない。