(前回からそのまま続く)まだまだ大物ジャズマンがいて、大物すぎて後回しになってしまったのだ。まずモダン・ジャズ・カルテット(ミルト・ジャクソンの個別活動含む)、デイヴ・ブルーベック・カルテット(ポール・デスモンドの個別活動含む)、白人プレイヤーではジェリー・マリガン、シェリー・マン(ドラムス)、ジミー・ジェフリー(テナー、クラリネット)、ジム・ホール(ギター)。ここまでは外せないだろう。コルトレーンの愛弟子アーチー・シェップ(テナー)を持って最後のモダン・ジャズマンとしてもいい。ユゼフ・ラティーフ、ジミー・スミス、ローランド・カークといった怪物もいる。アート・ファーマーも人気・楽歴共に落とせない。
クリフォード・ブラウン、リー・モーガンと来れば夭逝の天才トランペッター、ファッツ・ナヴァロはどうした、デクスター・ゴードンが入るなら最盛期までテナー・コンビを組んでいたやはり夭逝(しかも殺害)の天才ワーデル・グレイを落としていいのか詰問したいところだ(誰に?)。ナヴァロもグレイも活動期間から見れば作品数は十分。密度の高い、素晴らしい業績を残した。ゴードンよりもぼくならグレイを取る。ブラウンやモーガンを差し置いてとは言わないが、鋭さとひらめきではナヴァロに分がある。
やはりそこだろう。本質的な鋭さとひらめき。たとえばキャノボール・アダレイを「死の匂いがしない」として、死の匂いのするサックス奏者にスタン・ゲッツを挙げた作家がいた。チャーリー・パーカー、チェット・ベイカー。求道的なコルトレーンも快楽的なロリンズもどこか死と退廃の匂いがする。
エリック・ドルフィーの遺作となったラジオ放送用ライヴ「ラスト・デイト」64.6にはアルバムの最後にインタビューの一節が収められて、この台詞はジャズマンの発言でもっともよく引用されるものになった。
'When you hear music,after it's over,it's gone in the air.You can never capture it again.'
「音楽は宙に消えてしまう。再び捉えることはできない」
だからせめてこうした記事に記しておきたいのだ。