人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(43f)デイヴ・ブルーベック(p)

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Dave Brubeck(1920-2012,p)。
さてついに、ブルーベック・カルテットとオーケストラの競演アルバムの企画がやってきた。ソロイストとオーケストラの競演はそれほど珍しくないが、バンドまるごとオーケストラと競演する例は実はとても少ない。ディープ・パープル'Concerto For Group and Orchestra'(アルバム「ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ」)が数少ない後継例だろう。
'Bernstein Plays Brubeck Plays Bernstein'60.1,2(画像1)はA面にブルーベックの兄ハワード作曲の協奏組曲'Dialogues For Jazz Combo and Orchestra'4楽章を収め、B面はカルテットがバーンスタインのミュージカル「ウェスト・サイド物語」から5曲を演奏している。オーケストラとバンドの競演というとクラシカルで甘口なものを想像するが、そこはバーンスタインだけあって手抜きなしのすごい熱気。第2楽章、第3楽章はブルーベックとデスモントのバラード・プレイがすごく、第4楽章ではモレロの超絶ドラムが炸裂する。B面のカルテット演奏が間抜けに聴こえてしまうのだ。

このアルバムの後1年半ほどデスモントが抜ける。カルテットはクラリネットのウィリアム・O・スミスを迎えて3枚のアルバムをファンタジーからリリースする(スミスではメジャーでは弱いと踏んだのだろう)。スミスはあくまでもデスモント復帰までのピンチヒッターだったと思うが、アルトサックスの穴埋めにクラリネットというのはこのカルテットの音楽性に合っている。デスモント自体がクラリネット的な音色が特徴のアルト奏者だったからでもある。
'The Riddle'60、'Brubeck A La Mode'60(画像2)、'Near Myth'61(画像3)の三部作は全曲オリジナルで、スミスの貢献度は高い。デスモント没後のカルテット再結成に呼ばれたのも納得がいく。
全曲オリジナルとなると推薦曲も上げづらく、ブルーベックの数少ない日本のファン(80年代まではそうでもなかった。来日公演のテレビ・スポットも流れるジャズ界のスターだった)でもスミス三部作まで聴いている人は少ないだろうが、デスモント入りカルテットではやらなかった奔放さが三部作にはある。