このブログ記事を読んで早速ケントンをお聴き下さったとのこと、たぶん昨晩日本国内でスタン・ケントンを聴いていた方は10人もいないでしょう(笑)。ビッグバンドの中でもケントンは凝りに凝ったサウンドで、写真をご覧になったと思いますがトランペット、トロンボーン、各種サックスが五人ずついます。普通のビッグバンドはトロンボーンとサックスは四人ずつ。二人増員だけで分厚いサウンドになっています(後年にはトランペットとトロンボーンの中間音域の新楽器メロフォニウムを導入して金管だけで15人!という大変なことになります)。
「オレンジ・カラード・スカイ」とはいい曲に気づかれましたね。意外なことにミュージカル曲ではなく、1950年ナット・キング・コール・トリオとケントン楽団の競演が初演で、チャート11位のヒットになりました。最近でもレディ・ガガのカヴァーがある、渋いスタンダードです。
この曲は特別に男性スター歌手との共演ですが、ケントン楽団の歴代専属ヴォーカリストは女性で、しかも白人女性ジャズ・ヴォーカルの三大歌手といえるアニタ・オディ、ジューン・クリスティ、クリス・コナーはいずれもケントン楽団出身でした。ビリー・ホリディを別格として、この三人は黒人女性ジャズ・ヴォーカルの三大歌手エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン、カーメン・マクレエと匹敵する存在です。
続くケントン楽団出身者のアン・リチャーズは一段も二段も落ちますが、普通の実力はあり、声や唱法に色気がありました。Ann Richards'I'm Shooting High'58(画像4)が代表作ですが、ソロ歌手としては一本立ちできませんでした。
スターとなった三人は声量や声の質では黒人三大女性歌手に見劣りしましたが、アニタは抜群のスウィング感があり、ジューンは抑制の効いた情感があり、クリスはさらにクールな鋭さがありました。安易な色気に頼らない知性が三人を一流歌手にしました。代表作をあげておきましょう。
Anita O'Day'Anita'56(画像1)
June Christy'Something Cool'53-55(画像2)
Chris Conner'Sings Lullabys Of Birdland'53,54(画像3)