人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(補2c)レニー・トリスターノ(p)

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Lennie Tristano(1919-1978,piano)。
トリスターノの音楽活動はこの頃には自宅スタジオでの実験的レコーディングと音楽教師が主体になっていた。MJQより先にジャズ・クラブ出演拒否宣言をしたのもトリスターノで、例外的に演奏中の飲食禁止でライヴ録音をする時(と食い詰めた時)しかクラブ出演もしなくなった。50年代に入ると急激にトリスターノは過去の人扱いされるようになった。

トリスターノの音楽に惹かれて集まったリー・コニッツ、ウォーン・マーシュ、ビリー・バウアーが固定メンバーとなり、トリスターノのバンドは理想のラインナップが揃った。
Live At Birdland 1949(画像1)49.5/45.5(ボックス収録)
Wow(画像2)50.1.6(ボックス未収)
Live In Tronto 1952(画像3)52.7.17(ボックス収録)
-はいずれもトリスターノの生前の秘蔵録音で、遺族によって没後にリリースされたライヴ・アルバム。トリスターノのホーン入りバンドの絶頂期をとらえている。

「バードランド1949」は45年5月のソロ・ピアノ4曲(既出)と49年のライヴ5曲を収めており、ウォーン・マーシュのワンホーン。誰もが驚嘆することだが、マーシュとコニッツはテナーとアルトの違いだけで音色・フレージング共に双子のように相似した演奏をした。トリスターノの指示は技術的にも発想面でも演奏困難なもので、小節線をまたぐ息の長いラインをアクセント抜きのノン・ブレスで吹き切る奏法はビ・バップでも特殊なものであり、この時期にトリスターノ一派はマイルスやスタン・ゲッツに影響を与えクール・ジャズと呼ばれるようになる。

「ワウ」ではコニッツ、マーシュ、バウワーが揃い絶頂期のベスト・メンバーのライヴがたっぷり8曲堪能できる。バウワーはジム・ホール以前の最高の革新的ギタリストで、ソロでもホーンやピアノのバックでも単音とコードを組み合わせた自在な演奏を聴かせる。和声感覚は抜群で、ピアノとホーンの間でバンドをまとめあげ推進力になっているのもバウワーのギターだろう。

トロント1952」ではバウワー抜きのクインテットだが、ギター不在を埋めるバンドの一体感で名演になった。トリスターノのバンドはピークに到達した。