人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(補3l)セロニアス・モンク(p)

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Thelonious Monk(1917-1982,piano)。
前回の続き。『荒城の月』は伝承的メロディと原曲に違いがあり、楽譜は西洋音階に忠実だが伝承では西洋音階から外れる。スコーピオンズのライヴではクラウスは楽譜通りに歌い、観客の合唱は半音ずれる。モンクのカヴァーは伝承、つまり民謡音階として演奏しているのだ。これはジャズというブルース系の音楽だから融通が効くので、スコーピオンズは非ブルース系ロックバンドだと言える。

前作「ストレート~」に続くスタジオ録音のカルテット作、
Underground(画像1)67.12.14&21/68.2.14
-はモンク最後の力作。30歳でデビューして20年経っていた。同時期ビーチ・ボーイズは「スマイル」座礁の後遺症、ビートルズは「ホワイト・アルバム」準備中だった。コルトレーンは67年7月に急逝していた。今回は新曲5曲に再演2曲、うち再演の1曲'In Walked Bud'はジョン・ヘンドリックスのヴォーカル・ヴァージョンで成功している。CDではカット部分を復元し3曲追加の71分収録。グラミー賞最優秀アルバム・ジャケット賞受賞作。内容もコロンビア時代では屈指の傑作になった。

次のビッグバンド作品、
Monk's Blues(画像2)68.11.19-20
-でモンクとコロンビアの契約は終る。ブルーベック・カルテットは解散、マイルスはジャズ・ロックに向かっていた。編曲は「ブルースの真実」やロリンズの「アルフィー」で名高いオリヴァー・ネルソンで、マイルスのプロデューサーでもあるミンガス門下生のテオ・マセロが素頓狂なオリジナルを2曲も提供している。珍品で聞き所もあるがモンクが主役とは言えないアルバム。

モンクは73年と75年に最後の単発ライヴがあり、引退後は精神疾患も進行し痴呆症も患い、晩年は家族の顔もわからなくなった。最後のアルバム録音はオールスター・ツアー中イギリスでマイナー・レーベルに吹き込まれた、
The London Collection(画像3)71.11.15
-で、ソロで14曲、トリオで9曲、別テイクの合計で26曲を半日で録音した。旧友のブレイキーとすら一言の会話もなかったという。演奏は粗い。だがモンクであることに価値がある。