人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(補4a)ビル・エヴァンス(p)

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Bill Evans(1929-1980,piano)。
セロニアス・モンクが名声の頂点にあった64年のアルバム「モンク」のライナーノーツはビル・エヴァンスが執筆し、同年エヴァンス自身がアルバム「自己との対話」'Conversations With Myself'でグラミー賞を受賞して新しい巨匠の地位を確立した。ピアノによるビ・バップ奏法ではバド・パウエルを基本とし、レニー・トリスターノからは直接の後継者と嘱望されていた。バドらの三角関係は複雑なものがあったが、彼らより後輩のエヴァンスは大胆に先輩たちの技法を折衷し、次の時代を予感させる新鮮なスタイルでデビューした。

エヴァンスもまた幾多のサイドマン活動を経た後、リヴァーサイド社に見出だされ、
New Jazz Conception(画像1)56.9.27
-を初リーダー作としてデビューした。後年のアルバム、またはモンクらのアルバムを散々聴いてからこのデビュー作を聴くと、その瑞々しさに打たれる。バドの疾走感、トリスターノの構成力、モンクのタイム感をさまざまに折衷しているが、借り物ではない本質的な血肉化を感じさせ、先人への敬意と革新への意志、伝統の継承を一身に引き受けたスケールがある。

主にスタジオ・ミュージシャンとしての裏方仕事が中心だったエヴァンスが注目されたのは、58年春~秋のマイルス・デイヴィスセクステットへの参加による(ジョージ・ラッセルギル・エヴァンスらの推薦があった)。
Miles Davis:1958Miles(画像2)58.5.26
-は74年に日本独自発売された未発表スタジオ録音の発掘盤で、エヴァンス参加のセクステット録音4曲が中心(もう1曲はガーランド時代のクインテット)。'On Green Dolphin Street'から始まり'Love For Sale'で締めるこの4曲はガーランド時代の最高の録音に匹敵し、さらに新しい方向性を感じさせる。

同年のエヴァンス参加の名作には、
Art Farmer:Modern Art(画像3)58.9.10-11&14
-があり、図らずもエヴァンスの適応力と独自性との分裂が顕わになっている。冒頭のファンキーな'Mox Nix'のご機嫌なバックと、対照的なまでになし崩しのソロにその典型がある。