人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(補10c)アンドリュー・ヒル(p)

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Andrew Hill(1931-2007,piano)。
ヒルが63年11月~64年6月の間に連続録音したリーダー作5枚はすべて自作オリジナル集で、楽器編成もすべて異なる。前回掲載の第1作'Black Fire'は新聞の新作レコード欄で五つ星の高い評価を得た。新人の第1作としては異例だが、それまでサイドマン参加してきた名作よりもさらに革新的な音楽をヒルはひっさげてきた。

そして続く第2作~第4作、
Smoke Stack(画像1)63.12.13
Judgement!(画像2)64.1.8
Point Of Departure(画像3)64.3.31
-はヒルの楽歴でももっとも華々しい成功作となった(発表は第3作→第4作→第2作の順)。
ブルーノート社からの第1作から、ヒルは自分よりも格上のメンバーと渡りあってきたが、これらの作品でも巨匠揃いの面子を相手に堂々とヒル独自の音楽をやっている。まだシカゴから出てきて間もない無名の新人で、サイドマン活動の実績すら少なく、尋常ならリーダー作には五年は早い。ブルーノート社の英断にも参加メンバーの献身にもおそれいる。

「スモーク・スタック」は前作のデイヴィス、ヘインズにエディ・カーンを加えた2ベース・カルテットで、異様な編成からこれほど成果を上げた作品は滅多にない。'Wailing Wall'はベースのアルコ奏法による陰鬱なバラード。'Verne'はスタンダード'Lazy Afternoon'に似た曲だが、よりとりとめがないのがヒルの作風といえる。

ジャッジメント!」はデイヴィスとエルヴィン・ジョーンズ(ドラムス)にボビー・ハッチャーソン(ヴィブラフォン)を迎えたカルテット。ニコルスを研究した跡が'Siete Echo'やタイトル曲にうかがえ、テーマをベースやドラム・ブレイクが分担する。'Yokada Yokada'はヒルには珍しい曲調のモンク風リフ・ナンバー。

「離心点」はヒルの、おそらくもっとも有名なアルバム。デイヴィス、トニー・ウィリアムズ(ドラムス)にケニー・ドーハム(トランペット)、エリック・ドルフィー(アルトサックス他)、ジョー・ヘンダーソン(テナーサックス)という恐ろしいセクステット。代表作というには突出しすぎているが、必聴の名盤には違いない。