人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

#4.『ソー・ホワット』

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一年後には、ぼくはアルトサックスの独習を始めていた。ジャズやロックには音楽教室などむしろ百害あって一利なしと考える。先人が残してくれた音源や文献を、片寄りなく教材にすればいい。これはぼくの出発点がパンクだからかもしれない。演奏したいから楽器を覚えるので、楽器を演奏できるから音楽をやるのではない。ジャズの先人たちの演奏力の高さは超人的だが、核心は精神性の高さだろう。演奏力の高さとは技巧ではなく、本当に表現したいものを音楽にする能力のはずだ。だから結局ぼくの練習法は片寄ったものになったが、音階練習やクリシェ(常套句)の練習など20代後半でギターからアルトサックスに転向したぼくにはもどかしいだけだった。

ぼくはそれまで同僚のロック・バンドでギターやベースの助っ人をしていたが、今回はぼくが彼を巻き込むことになった。ぼくのジャズ熱が伝染して、Kも出張先で楽器屋に吸い込まれ、Wベースを衝動買いしてしまったのだ。彼はポール・チェンバーススコット・ラファロチャーリー・ヘイデンにやられた。そうこうしているうちに「ジャズのバンドをやろう」という話になる。二人ともロックくずれだからセッションで腕を磨く、というのを飛び越えていきなりバンドを組むことになった(二年後にはぼくらはサックスとベースだけでデュオができるほど上達した)。

「どうする?」
「アルトとベース以外募集でいいんじゃない?」
「初心者歓迎でいいね?」
と楽器店や音楽誌で募った-最初に来たのがギターの花ちゃんで、ロック経由でブルースをやってきてジャズは初めてだという。ソロは凄まじく速かった-が、バッキングは頼りなく、フラッシーな代りにソロの構成は支離滅裂だった。だがその後来たギター二人は面白くなかった。花ちゃんが断然面白い。だがまだメンバー増員の必要がある。
ピアノは三人。初心者なのは構わないがソロもバッキングも積極性が全然ない。三人とも向こうから辞退してきた。

そして守屋くんが来た。彼のドラムスは嵐のようだった。ギターのバッキングすら守屋くんのドラムスがカヴァーした。カルテットは一気に完成した。
四人で最初に演奏したのがマイルスの『ソー・ホワット』の高速ヴァージョンで譜面はぼくが書いた。掲載したのがそれだ。コード譜とベース+ギター譜、3枚目と4枚目は楽理分析になる。