人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟の思い出53

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・3月22日(月)晴れ
(前回から続く)
「昨夜は寝室の消灯の後、『レコードコレクターズ』持ってデイルーム。のんびり読もうとするが何か嫌な予感がしてくつろげない。まだテレビを観ている人も多く、CMのたびに二時間ドラマ(9時以降は『スパイダーマン』)と大食い女王選手権の交代。10時すぎからHAがナースステーションの窓口で何度もコールし、追加眠剤ください、頭が痛いんで頭痛薬ください。そんなにいっぺんに飲めないでしょ?一時間経って眠れたら頭痛も治まってるかもしれないじゃない?その他もごちゃごちゃやっている。就寝前の服薬では第三病棟が相変らずもめているらしく、夕食後同様に夜勤のSgさんが第二のナースステーション前で配るという異例の事態になる。服薬後は一人減り二人減りで、隅っこで読書していたが、10時半を回った頃には他にはいつの間にかナースステーション前のテーブルで四方山話をしていたKくんとKdさんだけになる」

喫煙室に一服しに立つとKくんとKdさんも入ってきて、佐伯くん、きみストーカーにされてるぜ。はあ?誰に?あの女しかないじゃん。この席の男が(と名札を指さし)何度も言い寄ってきたりつけまわすから眠れないし頭痛がする、とナースステーションで訴えていたらしい。すぐそばのテーブルにいたKくんとKdさんはそれを聞いて腹を立てていた。参ったな。釈明するまでもなくKくんたちはほとんど行動をともにしているので事実無根だとわかってくれている。ナースに言っておくべきかな?それじゃ上まで届かないわよ。次の主治医の診察日は?木曜日。長いな、あの女、話をふくらませて言いふらすぜ。真に受ける人もいたら佐伯くんが被害者だぜ」

「あの女いつもどんな話をしているんです?とKくんがKdさんに訊くと(KdさんはHAと食事席が同じテーブル)、自分の話ばっかり、自慢話がほとんどね。それで話があっちこっちで、急に話を止めて他の人と話をしに行っちゃったり。他人の話は聞かなくて、自分のことばかりしゃべってる。ああ、本物だな(病気が)。本来あの女は慢性で第一病棟だろ?うむ。佐伯くん、名誉毀損だぜ、許せん」

「なおもしゃべっていると見回りのSgさんに、何やってるの。相談話してたんです。相談なら昼間に看護婦にしなさい。当てにならないのよねえ、とKdさん。―それが昨夜の話だった」
(続く)