人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟の思い出57

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・3月22日(月)晴れ
(前回から続く)
「Fさんは病棟に帰ってきて早々HAの件をKdさんから聞いたらしく、過去になにかあったのかもね、なるべく距離を置いたほうがいいね。そうするつもりです。うん、自然にね。誰彼かまわず突進する彼女だがさすがに会話の成立しない相手では空振りだろう。KyさんとHgさんは誰とも会話しないし、AtさんとYnさんは相手にするまい。Tkさんは食事時間以外はいつも部屋にいて会話も隣席のUzさんや同じ食卓のわれわれだけだし、お照さんKdさんUzさんは事情を知っている。あとはKgさんがいるがHAから話しかけるタイプの女性ではない。元々親しいYzさんがどう思っているかは気になるが、たぶん彼女の性格や病気は長年のつきあいで熟知しているだろう。あ、Nkさんを忘れてた。だがこの人も老齢でちょっとボケているからHAが話しかけることはあるまい」

「こうして検討してみると(KくんMさんSmくんには誤解は生じない。UzさんKdさんお照さんもたいがい一緒に行動しているから、アリバイ証人みたいなものだ)HAがいくら騒ごうとまともに相手にする人は一人もいない、ということになる。ホッとして一服しに行くと無人と思った喫煙室でHAが座り煙草していた(喫煙室はドアノブから上はガラス張りだが下はプラスチックパネルなので、座り煙草だと姿が見えない。座り煙草は安全のため禁止されている)。自分の席に戻り彼女が一服し終えて喫煙室が空くのを待つことにする」

「テーブルではKくんUzさん、お照さんが雑談していた。どうしたの?いや、一服しようとしたらHAが座り煙草してたんです。また鉢合わせしたら佐伯がつけまわしてる、って思い込むでしょう?あんたも大変ねぇとお照さん。やがてHAが出てきて自室に戻ったようなので、安心して一服。そうだ、味方の方が多いんだ。他は彼女が相手にしないか彼女を相手にしないかのどちらかだ。しかしこれまでは、荒川さんは好意からの願望妄想、堀内淳子からの求婚は結婚退院という下心込みだが好意には違いないし、加藤美枝も病気だが交際の希望は正気の好意だろう(注)。だが今回は悪意と敵意で、不愉快きわまる。ただし陽性を過ぎて陰性に移りつつある様子なのが救いか」

(注)この手記の過去一年以内に交際を迫ってきた女性たち。三人とも症状の差はあれ、統合失調症だった。