人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記83

イメージ 1

・3月26日(金)曇り、にわか雨、にわか晴れ、曇り
(前回から続く)
「彼女は今第三病棟にいるわけだが、これまでアルコール科の待機患者だとは思いもしなかった。というより、アルコール科か一般精神科か詮索もしなかった。だが二年前にSkさんとやあ久しぶり、という間柄だということは、アルコール科患者は通常健康上の看護理由がない限り第三での待機期間は一週間程度だから、Skさんとはすっかり旧知の顔馴染みらしい彼女もまたアルコール科入院患者だったことになる。もしアルコール入院で第三病棟待機が長かったとしたら重度、精神入院でも病棟待ちで長期になる可能性は少ないだろう。もし一般科精神入院で接点があるならこの間のように就寝前の服薬くらいだが、それだけであんなに親しくなるとは思えない。なんにせよそこまで古強者とは思いもよらなかった」

「OTスタッフは職務だから当然としても、今日は休みのはずの婦長まで花見に来ている。朝の会で今日の担当看護婦が、公園内は広いので単独行動はしないで下さい、去年はひとり迷子になった人がいて病院の対応が悪いと怒って退院してしまいました、という注意に全員大爆笑だったのを思い出す。婦長は責任感が強いのだ。食後の休憩時間にも少し散歩したい人はついてきて下さい、と、あらかじめ下見してあったらしい短い散歩コースを10人ほど引率して帰ってきた」

「ホワイトボードにさくら・チューリップ・バラ・すみれ・たんぽぽ、と謎のスコア表が貼ってある。これからミニ・ゲームをやります、みなさん荷物はそのままで来て下さい。センターすぐに国道をまたぐ橋があり、ちょっとしたペデストリアン・デッキ風の広場になっている。そこで前記のようにチームに分かれて、お手玉落しのゲームをすることになる」

「どういうやり方かというと、1メートル四方の布の四隅を一人ずつ持つ。布には中央に四つの穴が空けてあり、布の上に転がした10個のお手玉を早く落した組から得点を獲得する。1,2着が5、3着は3、4,5着は2という配点で全員一度は参加するセット数までこれをやるのだ。チームわけはくじ引きだったが、稀少な確率というか、Smくんと同じチームになる。とにかく布の四隅に分かれた四人が呼吸を合せて揺らないと落せない。どのチームの布も同じらしいが、穴の間隔や大小にも違いがあるのだ」
(続く)