人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記89

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・3月27日(土)晴れ
(前回から続く)
「10時には自宅外泊患者は出て行って、一気に病棟が閑散とする。土曜日も掃除の時間はあるにはあるのだが、各部屋単位で、気になればする程度でいいことになっている。日曜はそれもない。ただしラジオ体操は土日もある。それも寝ていたら起さなくていいことになっている。病棟に残っているのはYn、Atさん、Kiさん、Msくん、Yzさん、Imくん、MさんとKくん、佐伯、以上男性。女性はTsさんとUzさん。ただし一人で数人分騒々しいのが男女一人ずついる。HAとSkさんだ」

喫煙室からデイルームを眺めながら、どうしてあんなに騒々しいかね、とKくん。さあね、性格的なものか、病理的なものか…。おれはあいつらの陰性症状見てみたいね、とKくんはHAを指差しながら忌々しげに言う。いや、いっそ別の病棟に移ってほしいよ。幻覚や妄想に忘却、ってあるのかな(注)?昨日からしょっちゅうこっちのテーブルに押し掛けてきて、帰ってるTkさんの席に座ってるだろ?Kdさんやお照さんが来るのは散歩仲間だからわかるんだ。でもついこの間までおれをストーカー呼ばわりしていた女だぜ」

「あのヤクザ(Skさん)とも12年前からの知り合いだと言ってるが妄想か年齢詐称のどちらかだぜ。いや、案外本当かもしれないぜ、確かM市市民病院に5歳の時から通ってるっていうアレルギーの塊りだろ?Skさんも肝硬変まで行ってるっていうから内臓疾患だらけだろ?でもまあ妄想、でなきゃ錯覚の方が有力かな。なにより佐伯くんをストーカー呼ばわりしたのが許せん、とKくん」

「それにあのおっさんもおれを7時に起しやがって。朝っぱらから大声で笑いやがって、おれはギリギリまで寝ていたいタイプなのに(Kくんは寝つきは良いが寝起きは悪い)。隣室とはいえドアも閉まっているのにKくんが目を醒ましてしまうくらいだから相当なのだろう。もっとも彼はドア側で、ドアは指詰めや開閉音防止用に幅5cmほどのクッションが噛ませてあるからよく聞けば廊下や廊下の奥のデイルームのざわめきも聞こえないではないが、熟睡している人間を起すほどの哄笑か。窓側のベッドでは全然気づかなかったが。事実朝食15分前まで完全に熟睡していたくらいだ」
(続く)

(注)通算4度の精神入院で筆者の見聞から言える結論―あったりなかったりするようだ。