人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記126

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・4月2日(金)雨のち曇り
(前回より続く)
「今までTkさんは女性患者同士で気さくに話していても特に雑談に加わってくることはなかったし、KdさんやUzさんとは親しくなっていたがそれは中年以上の年配ならではの気安さで、いかにも健康で聡明な若奥様然としたTkさんに気楽でもあれば一種馴れ馴れしくもある会話はできない雰囲気があった。アルコール科になぜ入院しているかも想像できなかったし、他人を近づけまい、近づくまいとまでは見えないが、なんとなく双方から距離を置いている感じはあった。だがどうやら昨日のエイプリル・フールの冗談が距離を縮めるきっかけになったようだ。会話を交すようになるとTkさんも結構楽しそうで、案外これまでも会話に加わりたかったがその機がなかったのかもしれない。ならばあながちあれも悪くなかったことになるだろう」

「おれは全然血液型なんて気にしないけどさ、KdさんとKくんがA型だっていうならそれなりのイメージつかめるよ。でもTkさんがB型でKくんもそうだと思うのはわからないな。どういうところです?あっ、オブラートで…。他人の世話をやきたがるとか、それでいて大ざっぱだとか、やたらとなにか始めたがるとか…。それおれですか?いえ、私です。要するに自己中心的なでしゃばり屋だな、きみの場合は。だからおれ違うんだって、AだよA。だから血液型の話じゃないって。私そこまで言ってません。うむ、ということはおふくろがAB型だからB型の性格が出ることがあるんだ。何納得してるんだよ。B型同士だと思えば話が合いますよね。良かったねKくん。そういう佐伯くんはどうなんだよ」

「どうでもいいじゃない。自分だけ言わんのか?なら訊くよ、何型でしょう?AB型、とぼそっとTkさん。当たり、どうして?A型にもB型にもO型にも見えないから、とTkさん。私にもそう見えるわ、とKdさん。私はそう見えない、とUzさん。なんだ消去法か、一発で当てちゃ芸がないな、360度くらいしなきゃ(それじゃ正面だぞ。判ってるって)職業当てだって寿司屋とかブリーダーとかいろいろあるだろ、ドジョウとかウナギとか。つかみづらい、とTkさんはウナギをつかむ手つきをしながら笑い、佐伯さんて本当につかみづらい人ですね。彼はつかみやすいけどね。腹の肉つかまんでくれ、気にしているんだから」(続く)