人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記168

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(人名はすべて仮名です)
・4月9日(金)晴れ
「午前中は朝の会の後レクリエーションで大泉寺へ。境内で休憩をとり、組を健脚組とゆっくり組に分ける(註)。健脚組は坂道コースを、ゆっくり組は来たルート(平坦路)をゆっくりと歩き、ゴールはほぼ一緒になる。松本さんは久しぶりに靴を履き戸外を歩けるのが嬉しく、いつになく饒舌になる。退院後の生活設計、どのくらいの生計で最小限の独身生活は営めるか、これをわざわざ生活保護受給者に訊くのは場合によっては無礼だが松本さんの場合は嫌味はない。基本、料理ができないなら食費は外食と店屋物や弁当で上乗せになるなあ。松本さんは経費にできるでしょう?まあほどほどにはな」

「退院順では佐伯くんが最後だが三か月に一度くらいは四人(勝浦・清水くん)で集まって焼き肉でも食おうぜ、ビールの大瓶二本くらいいいだろう。まず実現しないだろうが、そうですねと話をあわせておく。病棟に戻り解散、一旦部屋に引き上げると渥美さんが、東京新聞!と買い物を誘ってくる。買い物の用はないのだが、渥美さんを一人で出すのは心配なのでついていく。渥美さんも道連れがほしいのだ。歩きながら、柳瀬さん退院するとやっぱり寂しいですね。あの人、同じ歳、家庭崩壊(と言った)して、一人だけ…奥さんも子供も、わからない。そうだったんですか、と柳瀬さん退院の晩に、酒歴作成のひとやすみに渥美さんと会話したのを思い出す」

「今日も渥美さんは余分におやつを買っておいてくれて、部屋に戻るとはい、と小袋入りのきなこもちを差し出してくれたので、お礼を言っていただく。渥美さんの酒歴作成の手伝いも買い物の連れも報酬目当てではないが、断れない。…昼食後にラジオ体操と掃除、午後のプログラムはない。繰り延べになっていた檀門先生の診察日。順番表に一番に記名する。来週15日晩の断酒会参加の外出許可と食事のライス大盛りに切り替えしてもらう。現在59.0kg、退院までにもう少し太りたい」(続く)

(註)前日のシガレット・ケース盗難騒ぎについての記載がない。その話題については早々と終息していたと思われる。この日記の筆者の記述にはむらがあり、話題の重要度の基準も一定していない。おそらく、あの三田さんじゃ仕方ないか、というような事情説明が行き渡って、それがさしたる意外性もなかったものだったのだろう。