人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記174

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(人名はすべて仮名です)
・4月11日(日)晴れ
(前回から続く)
「昨日に続いて眠いが、渥美さんにすすめられて先に東京新聞を読む。東京新聞は簡潔でいい、廉価だし。今回は計画入院だったから新聞もあらかじめ止められたが、前二回の入院では緊急入院だったから新聞屋に電話を入れるまでの分がドアの受け取り口にぎっしり溜まっていた。精神病院でも新聞・週刊誌を患者が自由閲覧できるようにしてある病院と、そういうサービスは一切ない病院がある。今の病院は病棟は朝日新聞で、外来フロントには読売新聞とスポーツ新聞が置いてある。テレビは必ずしもニュース番組を見られるとは限らないので、新聞があるのはありがたい」

朝日新聞の日曜版は読書ページが4pもあり、筒井康隆の青年時代の読書回想録と、先週からは00年代のベスト50という企画。日本文学は2位3位が村上春樹海辺のカフカ』と町田康『告白』、ベスト10内に小川洋子博士の愛した数式』、50内では大江健三郎『さようなら、私の本よ!』と阿部和重シンセミア』、題名は忘れたが伊藤比呂美の小説作品が入っていた。これは総合ベストで、一位は現代思想の翻訳書だった。50冊中、日本の現代小説が一割とは多いか少ないか。大江健三郎の題名は、めっきり読者が減ってしまった作者の自虐のようで笑えない。自己言及的な作品ばかり書くようになって飽きられてしまったこと自体をどう考えているのだろうか。遠藤賢司などもそうだが、オレはオレはばかりがテーマというのは退行、もしくは老化ではないか」

「ともかく書評欄を隅々まで読むのは時間つぶしになるのでありがたい。ありがたいといえば昼食は山菜そばで、入院以来の土日を思い起こすと土日は麺類が多いような気がする。給食スタッフの都合だろうか?スパゲッティは皿に盛って蓋がしてあるが、ラーメン、そば、うどんなどは器に麺だけが入っていて、給食スタッフがでかいポットから熱い、または冷たいつゆを食前直前に注いでくれる。もっとも毎日三食山菜うどんしか食べられないアレルギー食品13品目の羽田有紗は特別だから、彼女の分だけつゆを注いだ状態でナースステーション窓口から受け取っている。勝浦くんが彼女を嫌うのは十分な理由があるのだが、麺類だ嬉しいな、と思ってふと彼女が視界に入ると、味気ない食事だろうな、と気の毒になるのだ」(続く)