人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記181

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(人名はすべて仮名です)
・4月13日(火)晴れ
「どちらともなく五月に退院したら会って食事したり遊びに行ったりしよう、という話になったが、そういえば先週も連絡先を交換しよう、という話になっていたのを思い出したのはそろそろおたがい食事に戻らなきゃ、また来週ね、と別れた後だった。二人とも喫煙所での一服がデートみたいなものだったので、会話の方に夢中になって電話番号やメールアドレス交換のことを忘れていたのだ。まあいいか、と病棟に戻りながら考えた。まだ先一か月半は入院しているのだし、この先何回か顔をあわせれば彼女がどこまで本気か、結局連絡先を交換するかどうかは次の機会でいい。どちらからも、なぜアルコール依存症治療を受けることになったのか、その根本的原因は話していない。話す必要もないということは、打ち明けられないほどの事情ではないとなんとなく察しあっているからだろう」

「昼食はもう始まっていたので、先週よりも長話していたんだな、と気づいた。彼女の方もそうだったら以後気をつけねば。昼食を済ませると、掃除の時間まで少し眠る。外来ミーティングのような小さい行事でも入院中の身にはけっこうこたえる。しかも午後のプログラムは『立川マック』で(何の略だろう)、講演会だから来院AAと似たようなものだし、夕食後のAAもしんどいが、AAと連動したアルコール依存症更正施設らしいマックからは二人で二時間だから話が細部に渡ってさらにきつい。断酒会の人も話し馴れた人が来て延々長話をするが、マックの人も原稿を覚えこんできたような雄弁で、終わると聴衆(入院患者)もぐったりしていた。アル中になっていちばん後悔したことはなんですか、という入院患者同士の冗談がある。つまらない入院生活を送るはめになることです」

「だがそれも自業自得となれば仕方がない。部屋に戻ると勝浦くん爆睡。デイルームを通ると冬村さんが、勝浦くんと清水くんに午後のカフェに行こうと誘われていたんだけど、終ると二人とも寝ているんだもの、とこぼしていた。徒歩10分くらいにある喫茶店で、冬村さんは楽しみにしていたらしい。冬村さんもそう厳格ではなく入院生活に少しは楽しみもほしいので、面倒見がいいのもそうしている方が楽しいからだ。坂部が嫌味ばかり言っているのもそうだ。男性患者には大体当てはまるようだ」
(続く)