人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記184

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(人名はすべて仮名です)
・4月13日(火)晴れ
(前回から続く)
「渥美さんの発表も終えたので朝の買い物のお伴以外特にお手伝いすることもない。日記を書き足し、あまり面白くないが『ハック』の続きを読む。村岡花子さんには悪いが訳者も面白いと思って訳してないんじゃないかと思う。良家のお嬢さまがガキ大将を演じてもさまにならない。良家というよりは、ガキ大将キャラの適性の問題か。岩野泡鳴とか武者小路実篤が訳していたら日本語のハックも成立したかもしれない」

「就寝前の服薬はもう第二病棟ナースステーションの窓口受け取りが暗黙の了解になっている。工藤と河出のトラブルだけではなく、第三病棟に第二病棟の患者が服薬しに来ると新たなトラブルが発生する、と判断されているのかもしれない…。一服するため少し早めにデイルームに行くと、勝浦くんが滝口さん相手に悪びれていた。普通会社でもそんな態度とりませんよ。嫌いなんだから態度に出して何が悪い。嫌いなら嫌いでもいいんです、それを態度に出すのが問題です。滝口さんも正論だし、喫煙室でも勝浦くんの憤慨ぶりに松本さんが、だってああいう病気なんだからさ、とたしなめていたが、勝浦くんが羽田を嫌うのも道理はあるので仕方ないのだ」

・4月14日(水)晴れのち曇り
「暖かいのは今日までで、明日と明後日は雨曇りで最高気温も11度までしか上がらないという。朝食、朝の会、全体会。投書箱のくだらない投書でまた規則が増える。昼食まで時間があるので昨日は外来ミーティング出席でお伴できなかった渥美さんの買い物につきあう。目的は少年サンデーの『絶対可憐チルドレン』の立ち読み。あたしも行く、と金田さんと三人で行って帰る。息子一人と親子連れみたいに見えたかもしれない。渥美さんに210円渡されて、断るのも毎回では申し訳ないから小袋のひと口チョコレートを買う」

「全体会でできた規則は、他人の配膳を手伝わない、というもので、人に手伝ってもらえず自分のお膳だけ残されている気持がわかりますか、という投書によるもので、おかげで昼食のワゴンの配膳は親しい同士声を掛けあって手渡ししあうことが禁じられた。母親と死別し離婚して娘とも会えない気持がわかりますか、と投書すれば家族の話題一切禁止になるのか。喜んでいたのは坂部のような嫌われ者だけだった」(続く)