人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記186

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(人名はすべて仮名です)
・4月14日(水)晴れのち曇り
(前回から続く)
「わざわざ訊いてくるからには、勝浦くんがどういう返答を期待しているかは想像がついたが、それよりもなぜ訊いてくるかの方が気になる。そこで、清水くんは清水くんじゃないの、ととぼけてみた。いや、病気の方、と今度はストレートに来たので、逆に、勝浦くんにはどう見える?と訊き返す。そこなんだよ、だんだん悪くなっているように見えないか?彼が言うにはあまりに躁と鬱のサイクルが頻繁で、数時間ごとの時すらある」

鬱病という診断だが躁抜きには考えられないし、躁鬱というには激しすぎる。統合失調症に片足突っ込んでるんじゃないか。勝浦くんは清水くんの奥さんに面識があるだろ、その上でそう見えるのか?うむ、持って二年、下手すりゃ一年持たないかもしれない、それでいて彼女とやっていけるのは自分しかいない、という妙な自信があるんだな。彼の話を聞いていると、まるでゲームみたいだよな。やっぱり一年、持って二年…奥さんの実家が資産家だから、なんとか今は持っているだけだ(注)」

・4月15日(木)雨のち曇り
「あわただしい一日。まず朝はシーツ交換。朝食前に枕カバー、シーツ、タオルケット、掛け布団シーツをひっぺがし(最後のが面倒)朝食後にはシーツをかけて一時間もしないうちに朝の会。檀門先生の診察日だったので渥美さんの次に受診して午前中の用件はこれでお終い。渥美さんのお伴で買い物に出ようとすると、勝浦くんもカップラーメンにお湯入れてもらう、と三人で行く。渥美さんの買い物の間『週刊文春』のコラム立ち読み。勝浦くんは、当店お買い上げの商品でないと、とお湯断られる」

「おれは毎週ピースをカートン買ってるんだぞ。仕方ないじゃない、とわれわれのやり取りを渥美さんは唸りながら聞き、カップ麺の棚を見た後でレジ横の四個入り豆大福と草大福を無造作に買うと、店から出るや勝浦くんのレジ袋に押し込んだ。これには彼も困惑した様子で、カップ麺食べられなくて残念だからこれどうぞ、ってことだよ。でもこれ400円が2つだぞ。好意だから受け取ったらいいんだよ。じゃあ209の4人で分けよう」(続く)

(注)勝浦くんの予想は的中し、退院半年後に清水くんは統合失調症で再入院することになる。もっとも勝浦くんも同時に再入院することになった。