人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記191

イメージ 1

(人名はすべて仮名です)
・4月18日(日)晴れ
「昨夜は断酒会の院内例会の後で男性の入浴時間と女性の入浴時間の切り替えがあり慌ただしかったが、例会中に大人しくしていた分その後は気晴らしの雑談が親しい同士で長引き、勝浦くんの通院するクリニックの女医さんはセクシーだとか、明日も勝浦くんは清水くん夫妻とおちあってインド料理屋に行くが冬村さんも行きたい、でも今夜はもう連絡取れないけど大丈夫だろうかとか、他愛ない話題を消灯時刻まで話す」

「新聞に、昨日発売の村上春樹1Q84-BOOK3』が初版60万部から10万部増刷とあり、滝口さんが既刊二冊は読んだから日曜の日帰り帰宅で完結巻を買ってきて病棟で全三巻読む予定と言うので、滝口さんの後で貸してもらうことになる。前二冊が社会現象化したベストセラーというニュースも去年、別の病院に緊急入院中にテレビで見た。入院とのタイミングといい、高校の後輩(七歳下)に貸してもらえる偶然といい、20年以上村上春樹から遠ざかっていたが何かの因縁かもしれない。また、自分もいつ帰宅外泊するか、通院の目安を申請するかもそろそろ考えなければ、と思う」

「今朝の朝刊第一面は都心に41年ぶりの四月の雪、だが記憶では20代半ばに一度ある。プリンスの曲名通りだ、と思ったからそう古くはない。朝の会の後で日帰り帰宅組はばたばたと出て行った。渥美さんから買い物の同伴頼まれるかな、と思ったが洗濯物を干してその足で行ったようだ。ようやく日記が記入日に追いついた。仲村画伯と杭瀬さんに喫煙室で退院後のご無事をあいさつする」

「坂部の無意味な嫌がらせに閉口する。一応冷蔵庫は保管期限が決められているが、他人の記名があるものは勝手に処分しない。坂部は無記名の物、保管期限を越えた物は他人の物を勝手に処分し、捨てられた相手が憤慨しているのを見て喜んでいる。他人が観たいテレビ番組があると察するとわざとテレビの間近に座って新聞を読み、テレビのリモコンを膝に載せている。誰もこいつと交渉したくないから、テレビ観ていないならリモコンよこせと言うよりは諦める方を選ぶ。どうせ、これから観るんだと言いだすに決っているからだ。他人の妨害を入院生活のひまつぶしにしている。アルコール依存症以前に、坂部は人間として腐っている。まあこの種の人間はどこにでも一定数いる」