人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記193

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(人名はすべて仮名です)
・4月20日(火)晴れのち雨
「降り始めたのは午後四時すぎだ。午前のプログラムは任意参加の院内ミーティング、午後のプログラムは栄養教室。院内ミーティングは入院以来欠かさず出ているし、渡辺愛さんと会える機会でもある。先週木曜の町田断酒会の後、彼女が人探ししている様子だったのは十中八九入院外出参加していた自分だろうし、おたがいスピーチがまわってきたから気づかないはずはない。彼女としては帰る前に一言声をかけたかったのだろうが、こちらは集団行動でバス時間が迫っていたのでその余裕はなかった。仮に別の参加者を探していたのだとしても、一言もなく去ったのはお詫びしておきたい」

「だからそのためだけにでも院内ミーティングには出席したかったし、佐伯さんが退院したら町中で会いましょう、とデートの話も具体的に進みつつある。おたがい過去にはいろいろあるが、これからをきちんとしていければ信じあえる、という同病者どうしの理解も通っている。率直で清潔感のある女性だから好感も持てるし、彼女からも好意を持ってもらえているから話もはずむ。問題は、退院後にはこちらは完全断酒するつもりはない、ということだろう。もし本当にパートナーになるなら、彼女のためには自分も断酒しなければならない」

「朝食前に滝口さんに昨夜読了した『1Q84』第二巻を返し、朝食の席では去年は一旦全二巻てことで刊行されたんだよね、第三巻が完結編として刊行されるのは今年二月頃のニュースだったっけ?私は絶対続きあるな、って思ってました。一応第二巻で完結、とも読めるようにはなってるね、結末らしい結びでもあるし。ところが続くんですよ。でも死んじゃったんじゃ?勝浦くんが共通の話題があっていいなあ、という顔なので、読むかい?おれは理系だから文学はわからん」

「朝の会の後ではい先輩!読み終りました、と第三巻を渡される。滝口さんが嬉しそうなので、さっさと読み終えないといかんな、とためらいながらも来週もあるさ、と院内ミーティングを休み、602ページもある第三巻を読むために午後のプログラムや入浴・夕食以外寝室にこもる。夕食の席で羽田有紗が希望して第三病棟に移室したと聞く。就寝前の服薬前に第三巻読了し、消灯まで無人のデイルームで勝浦くんと『パーソナリティ障害』談義」