人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

偽ムーミン谷のレストラン(13)

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ところでママ、スープが運ばれてきてからもうどのくらい経ったかな?三分くらいだと思うよ、と偽ムーミンはスープ皿に触れて見当をつけました。
誰もお前に訊いておらん、とムーミンパパは冷たくはねつけたので、あのおやじまだ拗ねてやがる、と周囲の反感を買ったものの、スープが運ばれてきた時ムーミンが席を外していたのも事実ですから、小生意気なガキには当然だというムードもありました。これを日本語の慣用句では
・喧嘩両成敗
といいます。また、『英雄崇拝論』や『衣服哲学』で知られるスコットランド出身のイギリス文人トーマス・カーライル(1795~1881)が広めた金言に、
・雄弁は銀、沈黙は金
というのもありますが、これはカーライルがスイス滞在中に見かけたドイツ語の碑文だそうです。カーライルのオリジナル格言でなかなかやるじゃん、というものでは、
・この国民にしてこの政府あり
というのがありますが、日本語の慣用句でも、
・割れ鍋に閉じ蓋
というのはカーライルとは無関係に存在しますので、イギリス流に風刺を効かせると愚民に愚政府、という表現になると思えばそれほど感心するほどの機智ではないともいえます。
誰もお前に訊いとらん、というなら同じテーブルにいるのは他にはムーミンママだけなので、最初から名指しでムーミンママに尋ねればいいことでした。しかしムーミンパパは元々行動の人、正確には行動のムーミントロールですので思いついたらすぐ口に出るタイプです。ムーミンママが即答しなかったのは、偽ムーミンムーミンらしからぬ出しゃばりをする様子を見ようと言うのではなく、夫が次に言い出すことが見えすいていたからでした。
つまりムーミンパパは食前の一服をしたいのです。まだスープが熱いなら私が一服するまで待ってくれんかね?紙巻き煙草ならいいですよ、一応あなたも持ち歩いているでしょう?それは風の強い屋外ならの話だ。私はヴィジュアル的にもパイプ煙草でなければ決まらんのを、ママも知っているではないか。
ムーミンママは予想し、パイプ煙草というのは仕込みからして時間がかかるわけです。この際ムーミンママには根拠がなくても亭主の喫煙を食後まで禁じる権限がありました。
早くしないと醒める頃ですよ。そうか、とガッカリのムーミンパパ。ではいただこうじゃないか、とさりげなく、ムーミン、お前からお食べ。