人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記206

イメージ 1

(人名はすべて仮名です)
・4月29日(木)晴れ時々狐の嫁入り・昭和の日
「祝日なので朝の会以外のプログラムは一切休み。朝食の席から今朝見た夢、という他愛ない雑談。高校生に戻って授業をフケる夢を見たのは、滝口さんが同じ高校の後輩とわかって母校の話なんかしたからかもしれない。梅崎さんはあまり良い思い出のない元カレの出てくる夢で、滝口さんは知人の仲介で紹介されたお見合い相手が佐伯さんでした(笑)、という夢だったそうだ(註)」
(註)ちなみに入院中から、佐伯さんはどんなセックスをするのかを寝つくまで想像していた、と後から教えられる。主治医に警告を受けていたのに、同じテーブルにいちばん危険な女性患者がいたとは気づきもしなかった。

「なにしろプログラムがないので一日ベッドでごろごろしたり、デイルームで適当に雑談したり…。夕方にホワイトボードの掲示で、明日は滝口さんと佐伯の二名が腹部エコー検査と胃カメラ検査で名前が並んでいる。お見合いの夢ってこういうことだったのか、と冗談を言いあう。明日は午前中のプログラムでリクリエーションがあり自然公園へのウォーキングだが、朝からジュース食のみ、禁煙、水も飲めず小用も我慢という条件でウォーキングはきつい、と主張したが滝口さんは自分も出るのだから、と強引に二人とも参加者に記名してしまった。胃カメラ検査は午後二時だから、ウォーキングは当然、掃除もさぼると宣言する」

・4月30日(金)晴れ
「宣言通りに有言実行。これでも飯かよ、と不貞腐れてジュースを飲み、しぶしぶ朝の会に出て、リクリエーションの招集にはさっさと、佐伯、胃カメラ検査のため不参加です、と言ってきて自室のベッドに横になる。ホールのざわめきやワゴンの音から、リクリエーションの出発・帰還や昼食の様子は知れたが、昼食は抜きだからどのみち関係ない。掃除が始まりベッド脇を勝浦くんがモップがけに通りかかったので、申しわけない、掃除する気力がない。いいんだよ、胃カメラなんだから。彼は隣の席だから、朝食がいつものトレイの上に200ccのブリックパックのりんごジュースだけ、さらに昼は抜きというのを知っているので大目に見てくれるわけだ。午後のプログラムは酒害教室で一時半から始まっていたが、検査対象者は検査優先で免除されているので、呼ばれるまで自室で待機」(続く)