人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

偽ムーミン谷のレストラン(18)

イメージ 1

ヘムレンさんは床に一辺が一メートル半の正三角形をチョークで描くと、それぞれの辺を二分割する位置に辺と交差する印を引きました。起き上がって描いた図形を眺め、
こんなものかな。ではお二人とも印のところに立っておくれ。条件は公平なはすだが、納得いかないならその都度遠慮なく言おうじゃないか。
私も異議はないがね、と、床と天井を見較べながら、ジャコウネズミ博士。つまりヘムレンさんの公平さには異議はない。あえて追加するなら、おのおのが位置を選ぶのを自由とすれば、われわれは譲りあってしまうだろう、というのが問題だ。それでは結局公平とは言えないやり方にもなりかねないと思うが、どうだろうか?
そうですよ、最初からヘムレンさんが残った位置につくと決めるのはおかしい。背後の空間、照明の位置、この正三角形が三辺のどれを選んでも自分以外の二人と条件は同じなのは同意します。でしたら、どの立ち位置に立つことになるかも公平、かつ無作為にすべきでしょう。
ではスノークくんには良い案はあるかね?
ジャンケンなんていかがでしょうか?
いや、ジャンケンは止めよう、とヘムレンさんもジャコウネズミ博士も同時に首をかしげました。あれはリスクが高すぎる。これは二人の良心の証として言うのだが、これまでムーミン谷を襲った疫病について、きみのような若者もいくつかは記憶にあるね?疫病のたびにワクチンの開発・決定をしてきたのはわれわれ二人だった。それで最終的にはA型ワクチンかB型ワクチンに決めるのだが、われわれは毎回ジャンケンで決めてきたのだ。
それで、どうなったのですか?
二回に一回の率でハズレ。だがこれは二人だから二分の一で済んだのであって、三人なら三分の一の確率になるのだぞ。
ではどうすれば…。
そうか、ならこれで行こうか、とジャコウネズミ博士が出してきたのは、六面体のサイコロでした。スノークとヘムレンさんは思わず震えあがりました。サイコロはムーミン谷では禁制品の筆頭だからです。なぜそんな物を君が…。私は科学者ではあるが、官僚でもあるからね。密輸押収品くらいはいつでも手に入るさ。たまたま今日は税関帰りでね。で、こういう場合、ルールは、(中略)
三人は棍棒を持って等間隔の三角に立ちました。これから物理的にムーミン族の秘密に関する記憶を強制消去するのです。
それから猛烈な連打。