人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記207

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(人名はすべて仮名です)
・4月30日(金)晴れ
(前回より続く)
「定刻の午後二時きっかりになって呼ばれて集団療法室で待機させられ、滝口さんから先に検査になる。腹部エコーと胃カメラを同時に撮るのが普通なのか、それとも順番が後なので一気に済ませてしまったのか、とにかく一度で両方の検査が済み結果もすぐ出る。腹部エコーは問題なし、少しだけ肝臓に脂肪があるが脂肪肝には遠いそうだから、一昨年の内科健診ではっきりと脂肪肝と指摘された状態よりも改善しているわけだ。胃カメラも問題なし、児童時代からあると推定されるピロリ菌の痕跡は少しあるがきれいなもので、治療の必要なし。実にあっけないものだった。アルコール依存症なら真っ先に現れる器官的ダメージは腹部エコー検査と胃カメラでは認められない、入院時にはかなり悪かった血液検査結果でも現在は良好な機能状態を示している」

胃カメラは楽なものだった。麻酔が切れるまで飲食・喫煙禁止と、手の甲に15:40と書かれる。三時半からは入浴時間だ。入浴前に一服と開き直って喫煙室で煙草を喫っていると、もう15時40分ね、と珍しく看護婦に大目に見られる。入浴後、梅崎さんに滝口さんが怒ってたわよ、と教わる。夕食はなごやかで、要するに、滝口さんは貧弱な朝のジュースと昼食抜きでプログラムのウォーキングも掃除もしたのに佐伯さんはずるい、と至極当然なので率直に否を認めて、この件はおしまい」

「明日退院する梅崎さんへのお祝いに、滝口さんのお嬢さんが見つくろってくれたカーディガンを勝浦くん・滝口さんと三人でプレゼント。それから四人で入院中いろいろあったけど、親しくすごせて楽しかったですねえ、という四方山話になる。最初佐伯さん来た時は梅崎さん、うぇー何よアレ、だったのに、とまた滝口さんが蒸し返しておもしろがる。前にその席だった岡田さんがイケメンだったから、と何のフォローにもなっていない。勝浦くんの時はもう期待してなかったから、とこれまたひどい。滝口さんは初対面の時には梅崎さんの隣にいたのだが抗酒剤アレルギーで麻疹の疑いがかかりすぐに実質的に隔離されて足かけ二週間空席になっていた。ひどい鬱か対人恐怖症かと想像していた。最初はよくわからなかったけど、仲良くなれてからは楽しかったですねえ、と消灯まで名残惜しみながら話す」