人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記215

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(人名はすべて仮名です)
・5月10日(月)曇り
(前回から続く)
「昨晩から掲示板に*10:15~酒歴発表・佐伯様とあるのをみるたびに落ち着かない。朝食、検温、朝の会、冷蔵庫清掃(月曜のみ)と進み、いよいよ酒歴発表の時刻になる。アルコール科の患者だけなので一般精神科の患者は自室にこもったり外出したりしている。小道具の障害者手帳と別れた妻子の写真(額入り)を用意して、渥美さんの代読をした時同様起立して読む。酒歴レポート用紙三枚きっちりを噛み締めるように読み上げる」

アルコール依存症というよりは障害者認定に至る生活歴なので、離婚~逮捕~拘置所生活のくだりでは反応が大きく、精神疾患から障害者手帳取得のくだりでは尾崎さん始め質問もあったので応答しながら読むことになったが、以上です、ありがとうございましたで締めくくる。佐伯さんはアル中じゃないんじゃないですか、と尾崎さん。うーんわからん、と坂部。聞いた人はノートに感想文を書いて提出。大変でしたね、と島田さんに言われる。金子と坂部にも褒められる。長くなっちゃって。七分くらいだったよ。自分では20分くらいに感じた」

「原本は病院に提出、看護婦さんに頼んだらコピーをくれたのて、自分が書く時の参考にしたいという尾崎さんがコンビニに行く時に貸す。ついでに自分も行きバットを三カートン注文し(ひとつは勝浦くんの分)、ジャンプの『HUNTER×HUNTER』立ち読み。主人公のゴンだけはこれまで殺生してこなかったが前回のラストでついにやってしまい、その続きだ。病院に戻ってデイルームで昼食を待っていると吉村くんが勝浦くんの正面からこちら側の左の空席に名前シールを貼り替えている。看護婦の許可を得たかはわからない。勝浦くんと吉村くんの挟み撃ちとはうんざりする」

「どうせなら他のテーブルに移ってほしいが、彼としては、佐伯さんから離れるのもかえって不安なのだろう。被害妄想のあまり自分の都合しか頭にないのだ。昼食前に勝浦くんに喫煙室で話し、おたがい吉村くんには気づかないふりをしよう、怒りはわかるが態度には出さないでと念を押しておく。事前に勝浦くんに知らせておかないと知っても知らなくても吉村くんに怒りを燃やすから、安全弁を開いておかなければならない。こんなことまで根回しをしておかなければならないとは因果なものだ」
(続く)