人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

偽ムーミン谷のレストラン(25)

イメージ 1

そろそろ注文を決めねばな…だがこうしてムーミン谷の住民が一堂に会すると、とジャコウネズミ博士は言いました。われわれも今やすっかり谷の古老という感慨がひしひしと寄せてくるな、そう思わんかねヘムレンさん?
少々の留保をつければね、とヘムレンさん。まず、われわれもムーミン谷の住民なのだから、われわれを欠いたムーミン谷一堂という表現はあり得ない。もしわれわれを抜きにしたムーミン谷一堂であれば、隠棲したヘムル署長の父君などはわれわれよりは年少だが古老の資格はあるだろう。さらにわれわれトロールは生物学的には加齢というのは恣意的な現象だから、きみも私も竹馬の友だった頃にもスナフキンスナフキンではなかったか?
彼は例外だよ。あれはモーヌの大将や風の又三郎みたいなものだ。スナフキンについてはきみとも超トロールということで議論は一致したではないか。
では例のモノはどうかね、あれなどわれわれトロールの次元にあるとは考えるだに苦痛だが、残飯でも食料には違いないように劣等トロールと認めないではならないではないか。
仕方ないさ、われわれは学者だからな。
・例のモノ=ニョロニョロ(不潔で卑しい存在で、公衆の面前で話題にするのは下品で悪趣味とされる)
…だがアレを劣等トロールとすると、まずあれは個体が群生しているのか、群そのものがひとつの個体なのかもわからん。またアレはしきりに生えたり消えたりするが、果してそれは同じモノなのか?
きみもこだわるな、アレは意志はないが習性はある、つまり湿って不潔な場所を好むだけで、それは意志ではなかろう?きみが問題にしたいのもそこだろ、人格なきものがトロールなら意志なく習性あるのみのアレは劣等どころか純粋トロールなのではないか。
……。
きみだって素朴な進化論者ではあるまい。猿から類人猿が進化したのではない。猿と類人猿のとげた進化は別々のものだ。まあ猿のことはどうでもいいが、仮に問題のアレが現存するもっとも素朴なトロールだとして、われわれの起源がアレとは限らんぞ。
ならば、なぜ、アレが、存在、する(一語一語はっきりと区切って)?
そう熱くなりなさんな、それを言えばわれわれだって存在の根拠はないさ。案外アレは戒めの象徴かもしれんぞ。さあ、飲み物でも決めよう。
オチは無しか?
会話も終ってないさ。さあ飲み物を頼もう。