人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

偽ムーミン谷のレストラン(67)

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でもやっぱり入院するのは嫌ですねえ、とスノークが苦笑しました。いくら三食上げ膳据え膳、昼寝つきといってもねえ。
ほう、きみも入院したことがあるのかね?とヘムル署長が言外に、その話ならおれにまかせろとほのめかしました。ほのめかすまでもなく、ヘムル夫人(正妻)はムーミン谷立病院の院長兼現役婦長なのです。
病院は立派な建物で、特に立派なのは門でした。ムーミン谷議事堂も立派な建物で、やはり特に立派なのは門でしたが、設計・建築はムーミンパパの親友で発明家フレドリクソン、アーチ型の門の碑文を決めたのはムーミン谷最高の知識人ヘムレンさんとジャコウネズミ博士でした。
だがわれわれなどまだまださ、とこの二人はあくまで謙虚でした。『プヴァールとペキュシェ』という小説には及ばんよ。
いいですね、とスノーク。入院中の読書に向いていそうなタイトルだ。きみは入院中はオナニーばかりしているんじゃないのか?一同(笑)。いやあ、オナニーぼけしていても本は読めますよ。でプヴァールとペキュシェというと、どちらが女ですか?なぜ訊くかね?ならどちらが男です?だって主人公の名前なら、男か女のどちらかですよね。
そうとは限らん。われわれは医学的手段でしか生まれてくる赤ん坊の性別を予測できんが、この場合医学的判定なしには赤ん坊は男と女のどちらかではなく、どちらでもあり得ることになる。…説明が足りんか?
いや、今度はガス箱に入れなくてもいいんですかい?そう毎度毎度は要らんよ。ところで名前というと入院食は知らない魚ばかり出ますね、カペリンとか。
給食だから安価で安定した食材を使うのだ。魚類は遠い沖から漂着するのでロッドユールとソースユール夫妻の調査が頼りだ。ポリフルとかマグミットも豊富なようだ。のり弁当に乗っている白身魚のフライの類だな。デパケンリーマスというのも出ました、たぶん鮭と鱒のバッタものでしょう。ゼチールは煮魚で出てくるからサバの仲間の青背だろうな。パキシルとは飛び魚の一種かな?飛び魚はうまいからな。デパスは?深海魚だな、きっと実物見たら食欲が失せるぞ。
ところで谷の議事堂の門の碑文は、
・この民にしてこの政府あり
そして谷の病院の門の碑文は、
・ここをくぐりし者すべての希望を捨てよ
で、彫らされたスナフキンはますます放浪への思いが膨らむのを感じました。