人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ピーナッツ畑でつかまえて(8)

 チャーリー・ブラウンの妹サリーを候補から外すなら、ルーシーことルシール・ヴァン・ペルトはパインクレスト小学校の女帝、ダーク・ヒロインというべき存在でした。いや、サリーなどはルーシーの弟ライナスに熱を上げ「私のすてきなバブーちゃん」と迫っては避けられている(自分のことは「あなたのバブエットちゃん」と呼ぶ)程度の可愛いもので、勉強嫌いでいつも宿題を兄に手伝ってもらうが成績はそれなりに良いとか、夏に行われるサマーキャンプが大嫌いとか他愛のないものです。
 パインクレスト真の脅威はルーシー、本名ルシール・ヴァン・ペルト、ライナスとリランの姉でした。それはもうずっと以前からこの町の定説でした。
 彼女はわがままで口うるさい性格に加えて、ライナスに対しては安心毛布や指しゃぶりをはじめ疎んじて当たり散らしますが、リランに対しては優しく接していた頃もありました。しかしリランが成長するにつれて、彼をも徐々に疎んじるようになりつつあります。それほどに、彼女の弟たちへの愛憎は自分本位で気紛れなものでした。
 アメリカンフットボールのホルダーを務め、チャーリーが蹴ろうとする瞬間に反射的にボールを引っ込めてしまうのは毎年の恒例行事でした。しかしこれには例外もあり、チャーリーが短期の入院から退院した際にはしっかりと押さえていましたが、彼が間違って彼女の腕を蹴ってしまい、骨折させられたこともあります。また、まだ甘やかしていた頃に、弟のリランにボールを託したためにボールを蹴られてしまった失策もありました。
 チャーリーの野球チームではライト、まれにはセンターを務めますが、守備がザルでフライを取れたためしがありません。一時ペパーミント・パティのチームにマーシーとトレードされましたが、あまりの下手さに呆れられ、結局元通りになりました。
 基本料金5セント(最高50セントまで上がる)でカウンセラーをしており、チャーリーたちの悩みを独断と偏見でさらりと解決するのも趣味でした。シュローダーが好きですが関心を得られず、彼のトイピアノを破壊することもしばしば。男の子には口うるさく侮蔑的で、スヌーピーにキスされようものなら、間接であっても「黴菌もらった!消毒して!赤チン持って来て!」と大騒ぎします。
 誰もが知るルーシーは、そういう女の子でした。