人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ピーナッツ畑でつかまえて(9)

 チャーリー・ブラウンの報告によると、ルーシーはライナスの毛布を引きちぎったかと思うとピッグペンから埃をはたき落とし、フランクリンに人種差別的な暴言を吐きながらペパーミント・パティとマーシーのおしゃべりに割って入って眼鏡を奪うと踏み割り、シュローダーのトイピアノを叩き壊して走り出して行ったのだといいます。気がつくとライナスはリランのオーバーオールを被せられ、指をしゃぶろうとすると指がなかった。これは気にかかる下げですが、今ライナスのおしゃぶり指の行方を忖度しても正確な事態はつかめないでしょう。
 だからあと、とチャーリが言うには、ルーシーが標的に選ぶとしたらここなんだ。もちろんぼくのグローブもまっ先にこれさ、と彼はボロボロになった残骸を未練惜しげにぶら下げていました。いったいルーシーはどうしちゃったんだろう?ぼくたちみんなにこんなひどいことをして。
 それは極めて明瞭なことではないかね、と、すかさずシャーロック・ホームズ姿に変装したスヌーピーはパイプを傾げました。ワトソン博士に扮装したウッドストックが('''''''''''……!?)と合いの手を入れます。
 つまりはこういうことだよ、一般に動機のない行為、ことに犯行のように重大なリスクを背負う行為に動機の伴わないことなどめったにないとすれば、ルーシーがしでかしたという今回の大騒ぎにも彼女なりの動機があったと見るべきだろう。つまりさ……。
 スヌーピーはもったいぶった間を置くと、ライナスの毛布、ピッグペンの埃、フランクリンの高潔さ、ペパーミント・パティとマーシーの友情、これらはルーシーが日頃から気に食わなかったもので、自分に関心を向けてくれないシュローダーのトイピアノをぶち壊したのもそうだ。リランのオーバーオールをライナスに着せたのも八つ当たりで、彼女が弟の指しゃぶりを嫌っていたのもみんな知っている。
 きみのグローブがまっ先に引き裂かれたのも仕方ないだろう、とスヌーピーはいまだに名前の覚えられないくりくり坊主を慰めて言いました。きみは善良な少年だが、草野球に関しては少々悪目立ちがしすぎた。だが、どうして私まで危険に備えなきゃならないんだい?
 きみはそのつもりはなくてもね、とチャーリーは膝をつきました。誰もがきみを、ぼくの犬だと思っているんだよ。