人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ピーナッツ畑でつかまえて(10)

 スヌーピーはやれやれ、話にならんわといった仕草をすると、この際きみの言う通りだとしよう、だが今回のルーシーのターゲットはいずれも人間どうしのことだよ。それがどうして私にまで類がおよぶんだね?
 チャーリーが答える前にスヌーピーは先回りしました。つまりライナスの場合なら毛布、マーシーなら眼鏡、シュローダーならトイピアノといった具合にルーシーの八つ当たりは器物損壊にも現れている。きみのピッチャーグローブもそうだ。シュローダーがグローブを携えていたらきっとそれもズタズタに引き裂いたに違いない、シュローダーはわれらのキャッチャーなのだから。グローブについて言えば、ルーシーほどひどいライトまたはセンターはいなかった。彼女は朝起きるとまっ先に自分のグローブを引き裂き、気づかれないうちにライナスのグローブも引き裂いただろう。少なくともライナスはルーシーよりは優秀なセカンドだから、八つ当たりされる資格は十分ある。
 ライナスのおしゃぶり指はぞっとする事件だが、とスヌーピーは身震いすると、だがこれはすべてパインクレスト小学校で起きたことだろう?彼女が犯行現場を市内全域に広げるとしたら、それこそルーシー自身にも収拾がつくまい。一般的な犯罪心理学では、犯罪者自身が自分の把握しきれる規模以上に犯行を拡大することはめったにない、とされる。ここはきみの家の庭だろう?きみの懸念通り彼女が私をきみの飼い犬として狙うにせよ、このテリトリーには入れないよ。
 そうなのかな、とチャーリーは飼い犬にあっさり説得されそうになりましたが、あのさ、きみはぼくが悪目立ちしているピッチャーだって言ったよね。
 気を悪くしたかい?少しはお世辞も言いたいが、歯に衣着せない犬なんでね。
 ぼくが心配しているのもそれさ、と下手に出ながらチャーリー。良かれ悪しかれきみほど目立つ犬はいない。それはぼくの飼い犬でなくても、パインクレスト小学校の外であってもわざわざ襲撃しに来るに値しないだろうか?
 ルーシーには私に危害を加える動機がないよ。
 それはぼくたち全員だって主張したいさ!それにスヌーピー、彼女はきみに危害を加えたいというより、きみの犬小屋をぶち壊したいんじゃないかな?
 ……そして現れたルーシーの形相は、チャーリー・ブラウンの予想通りでした。
 第一章完。