人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Claudio Rocchi-"La Norma Del Cielo(Volo Magico N.2)"Italy,1972

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Claudio Rocchi-"La Norma Del Cielo(Volo Magico N.2)"Italy,1972(Full Album)
https://www.youtube.com/watch?v=f2xcUmIlJhw&feature=youtube_gdata_player
[Tracce e Musicisti]
(Lato A-Gennaio 1972)
1. L'Arancia E' Un Frutto D'Acqua-5:46
Acoustic Guitar, Vocals, Mellotron ? Rocchi
Chorus ? Maria Teresa
Piano, Organ, Chorus ? Eugenio Pezza
2. Storia Di Tutti-8:06
Acoustic Guitar, Vocals ? Rocchi
3. La Norma Del Cielo-3:34
Acoustic Guitar, Vocals ? Rocchi
Backing Vocals ? Maria Teresa
Flute ? Gianni Del Ben
Piano, Organ, Mellotron ? Eugenio Pezza
(Lato B-Novembre 1972)
1. Lascia Ges??-5:04
Acoustic Guitar [6 And 12-string], Vocals ? Rocchi
Acoustic Guitar [6 String] ? Alberto Camerini
Bass ? Eno Bruce
Percussion ? Gigi Gasparri, Lorenzo Vassallo
Piano, Organ, Mellotron ? Eugenio Pezza
Violin ? Lucio Fabbri
Vocals ? Voci Femminili Di Hitoni (L'Amore Di Eugenio)
2. Tutti Insieme-4:03
Acoustic Guitar [6 And 12-string] ? Alberto Camerini
Acoustic Guitar [6 And 12-string], Vocals ? Rocchi
Bass ? Eno Bruce
Percussion ? Gigi Gasparri, Lorenzo Vassallo
Piano, Organ, Mellotron ? Eugenio Pezza
Violin ? Lucio Fabbri
Vocals ? Voci Femminili Di Hitoni (L'Amore Di Eugenio)
3. Il Bosco-2:21
Acoustic Guitar ? Eno Bruce
Vocals ? Rocchi
4. Per La Luna-6:41
Acoustic Guitar ? Eno Bruce
Acoustic Guitar [Acoustic Bass Guitar] ? Rocchi
Flute ? Mauro Pagani
Mellotron ? Eugenio Pezza
Percussion ? Lorenzo Vassallo
Sitar ? Paul Tuel
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 今回がクラウディオ・ロッキ追悼特集の第三回で最終回をお届けする。ロッキについては前二回でかなり書いたし、英文音楽サイトのロッキの項目も原文と日本語訳を掲載してきた。先の二回と今回の文末の紹介で項目の全文になるので、参照ください。
 最終回ではロッキの初期三部作の第三作をご紹介する。副題にある通り、これは前作の『魔術飛行N.1』に続く『N.2』になる。アルバム構成でもデビュー作『ヴィアッジオ』から第三作まではそれぞれ特色があり、『ヴィアッジオ』は旧LP盤A面5曲・B面6曲で、各面はサウンド・エフェクト的な小品から始まり比較的長めの曲で締めくくっている。『魔術飛行N.1』はA面1曲、B面3曲という大胆な構成で、ロッキ生涯の傑作の世評に恥じない。イタリア70年代ロックの金字塔に数えられる作品。そして第三作は、片面3曲・4曲とデビュー作と第二作の間をとったようなアルバム構成になっている。アルバム・タイトルのノルマはイタリア中部の地名(ノルマ市、人口4000人)。こういう街です。

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 現行CDでは前記の通り72年1月録音の前半(旧アナログ盤A面)、同年11月録音の後半(旧アナログ盤B面)という構成になるが、アナログ盤(LPレコード)初回プレスではA面とB面がその後の流通プレス(現在のCDと同じ曲順)と異なっていた、というデータもある。よく見ればA面とB面が入れ替わっているだけなのだが、初回プレスに触れたことはないしアナログ盤時代には輸入盤LPのA面とB面の逆転ミスプレス、ミスプリントというのは珍しくなかった。外人さんは内容は良くても製品品質は大雑把だったりする。このアルバムの場合も初回プレスを改訂してAB面を逆転させたのではなく、初回プレスがミスプレスだったのかもしれない。いちおう今回調べて判明した初回プレスのA面とB面、曲順を載せておきます。CDなら4曲目から聴き、終わったら1曲目~3曲目を聴けばこの曲順になります。ただしそのデータも正確かわかったものではないが。
(Lato A)
1.Lascia Ges?? - Tutti Insieme 9:30 / 2.Il Bosco 2:18 / 3.Perla Luna 6:56
(Lato B)
1.L'Arancia ?? Un Frutto D'Acqua 5:44 / 2.Storia Di Tutti 8:03 / 3.La Norma Del Cielo 3:31
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 もし片面ごとの曲順が正確で、初回プレスもそれ以降のプレス(現行CDも含めて)も片面単位の曲順ならば、先に上げた現行CDの曲順がやはり本来のこのアルバムの曲順なのではないか。初回プレスとされているデータではアルバムの構成が意味をなさない。1.L'Arancia ?? Un Frutto D'Acqua / 2.Storia Di Tutti / 3.La Norma Del Cielo(以上旧A面)、4.Lascia Ges?? / 5.Tutti Insieme / 6.Il Bosco / 7.Perla Luna(以上旧B面)の順が正しく、旧A面と旧B面の逆転はあり得ないだろう。
 それは1.と4.を較べれば明瞭で、チル・ダウン曲の4.ではアルバムのオープナーにはならない。雄大な1.がオープナーにはふさわしい。その1.と、これも雄大な3.(比較的オーソドックスな歌唱曲はこの2曲のみ)に挟まれて、瞑想的な2.の据わりも良い。この2.はアコースティック・ギターシタール奏法といい、低音弦のドローンといい、つぶやくような唱法といい、聴いたことあるなあと思ったら遠藤賢司の『猫が眠っている』そっくりだ。エンケンのは1969年だから賢司様の勝ち。旧B面に入り、チル・ダウン曲と書いた4.は曲の末尾で意外なリフが重なる。イタリアの70年代ロック好きの人ならすぐピンとくるが、PFMの名曲『九月の情景』のメイン・リフと同じ音列なのだ。だが前作『魔術飛行N.1』のタイトル曲ブリッジ部にもこのリフは使われており、今作は『N.2』だからテーマの再現があるのもうまい展開だが、PFMの『九月の情景』は1972年発表のデビュー作『幻想物語』収録曲だからロッキの曲の方が早い。続く5.からはほとんとアルバム最後までインストで、前半はシタール風ギターにインド音楽風ヴァイオリン、後半は4.以上にはっきりと『魔術飛行N.1』ブリッジ部の再現をやっている。寡黙なピアノが美しい。6.はタイトルを含む短い歌詞しかない、ヴォーカルのディレイ効果を狙った音響曲の小品。アルバム最後の7.はシタール風のギターのリフをディレイさせてリズムを出し、そこにアコースティック・ギターによる五音階のハーモニクスとメロトロンが絡み、後半はパーカッションとシタール(本物)、PFMのマウロ・パガーニのフルートが加わり『ヴィアッジオ』『魔術飛行N.1』そして今作の、三部作全体のエピローグとなる、7分近いインスト。ソロ歌手のアルバムでは異例だろう。
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 カンタウトーレ(シンガー・ソングライター)のアルバムにしてはヴォーカルの比重の高い曲が半数程度しかないのが、カンツォーネ歌手ではないロッキの、ロック・カンタウトーレたる自負だったのだろう。以後のロッキ作品の評価は安定しない、というかあまり高くないのだが、歌手として、また楽曲作家として圧倒的な才能を持った人ではなかった、ということかもしれない。才能というのは持続的能力をいうからだ。ならば、ロッキには『魔術飛行』という大傑作を作る天才はあった。『アリア』でロッキ・フォロワーそのもののデビューをしたアラン・ソレンティの方が歌手としては大成したが(『アリア』も素晴らしいアルバムだが)、単純に優劣はつけられない。マウロ・ペローシみたいな泣き虫の劣等生ムードを漂わせて、それが魅力の人もいる。クラウディオ・ロッキの逝去にはソレンティもペローシも感無量だっただろう。これをきっかけに、とは変だが、ソレンティは歌謡界から、ペローシは楽隠居生活から、アルバム制作だけでもいいからロック界に戻ってこないだろうか。
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(discogs.comより)
Always influenced by eastern doctrines (he later became a Hare Krishna), he was also active in anti-war movements and always present at the various Italian pop festivals of the early 70's.
 (拙訳)常に東洋思想の影響を受けながら(彼は後にハレ・クリシュナ教徒となる)、ロッキは熱心に反戦運動に参加し、70年代初期のイタリアのポピュラー音楽フェスティヴァルの常連出場アーティストになった。
(discogs.comより)
Next album, La norma del cielo (subtitled Volo Magico n.2) was similar, but weakest in comparison, and after a long journey to India he released Essenza at the end of 1973, with help from Elio D'Anna (Osanna) and Mino De Martino (Giganti) among others.
Il miele dei pianeti, le isole, le api was a six-track album mainly based as usual on Rocchi's acoustic guitar folk-psych compositions, but featured well-known guests such as Walter Maioli (from Aktuala), Trilok Gurtu (that played with the same band at that time) and violinist/multi instrumentalist Lucio Fabbri (from Piazza delle Erbe, then a long time Eugenio Finardi collaborator and from 1978 with PFM, he also released a solo album on Cramps).
Later production had more use of electronics and interest in experimental sounds. In 1980 while in a Hare Krishna community he released Un gusto superiore with Paolo Tofani (Area).
In 2007 Claudio Rocchi directed the film Pedra Mendalza (the name of a popular volcanic hill in Sardinia) and its soundtrack, released on CD in 2008.
 (拙訳)次のアルバム『ノルマにかかる虹』(副題『魔術飛行N.2』)は前作と似ているが比較すると弱く、ロッキは長期のインド旅行から帰るとアルバム『エッセンザ』を73年末に発表した。このアルバムではエリオ・ダンナ(オザンナ)、ミノ・ディ・マルティーノ(イ・ジガンティ)らの協力を受けている。
 五作目はロッキのギター弾き語りによるサイケデリック・フォークの6曲入りアルバムだが、ウォルター・マイオリ(アクチュアラ)やトリロ・グルトゥ(当時マイオリと同じバンドにいた)、ヴァイオリンを始めマルチ・プレイヤーのルチオ・ファブリ(ピアッザ・デル・エルベを経てユージニオ・フェナルディと活動し、78年以降PFMに参加の他、クランプス・レーベルから自己名義のアルバムも出している)ら、多数の有名ゲスト参加が目立つ。
 その後ロッキはエレクトロニクスによる実験的な作風に転換し、1980年にはハレ・クリシュナ教のコミュニティーを通してパオロ・トファーニ(アレア)とクリシュナ教賛歌の共作アルバムを発表。
 その後ロッキは、2007年にはペドラ・メンダルザ(『サルディニアの火山地帯』で知られる)の映画を監し、サウンドトラックCDは翌2008年に発売された。