人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Frank Zappa and Mothers of Invention-"The European Tour 1968"(Video)

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Frank Zappa and Mothers of Invention-"The European Tour 1968"(Video)
https://www.youtube.com/watch?v=C8ydZ-rSGas&feature=youtube_gdata_player
Frank Zappa, Jimmy Carl Black, Roy Estrada, Bunk Gardner, Don Preston, Jim Sherwood, Arthur D.Tripp III, Ian Underwood
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1968-09-28 Grugahalle
Essen, Germany
00:00
01 King Kong
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1968-10-06 The Beat Club,
Bremen, West Germany
14:09
01 Improvisations
02 King Kong
03 Pound For A Brown
04 Sleeping In A Jar
05 Uncle Meat
06 Lohengrin
07 Let's Make The Water Turn Black
08 Octandre
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1968-10-23 BBC 2 TV,
London, England
53:15
01 Improvisation
02 King Kong
03 Oh In The Sky
(visit zappateers - visit zappa official site to know the new CDs edition)
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 名前は知っている、たしか昔ラジオでかかっていたのを聴いている。門下生に有名ミュージシャンがわんさといる偉大な人らしい、とも聞いている。だけれど聴いた曲も忘れてしまっているし、あまりに多作な人だったらしく必ず名前が上がってくるポピュラーなアルバムが何かも、何から聴けばいいのかもよくわからない。だいたいフランク・ザッパという人はそういう感じで敬遠されています。
 広い意味でザッパはアンダーグラウンド文化としてのロック、音楽性を問わず反体制ロック、あらゆる意味での実験的ロックを始めた人ですが(ディランの『ライク・ア・ローリング・ストーン』だけには抜かれた、と発言しています)、元々は純粋なポップス・ミュージシャンを目指していた人で、批評家には叩かれていたクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』をいち早く賞賛しています。ザッパのステージはエンターテインメント性の高さで大衆的人気がありましたが、アルバムで音楽だけ聴くのでは、それもわからない。アメリカの最新の時事流行に密接な攻撃を仕掛けているのが人気の原因のひとつになるようですが、それではますます日本からではわからない。
 一方、ザッパには熱狂的なファンが少なからずいて、そうしたファンのザッパ讃辞がまたザッパをこれから聴こうという人には敷居が高く、これはアーティスト自身の韜晦癖にも原因があるでしょう。フランク・ザッパはギタリストでコンポーザーでバンド・リーダーでした。誰しもがそうであるように、単にそれだけの人ではなかったと言うのも正しいですが、神棚の上にあげるように聴かれたいと思っていたような人ではないでしょうし、細かい批評をぶつぶつされるよりもノリノリに楽しんでくれる聴衆の方が好きだったに違いない。今回ご紹介したのはテレビ放映用スタジオ・ライヴ映像だからシリアス寄りの演奏ですが、70年代以降のライヴ映像を観ると観客もバンドも先述の通りノリノリで、フランク・ザッパという人は大エンターテインナーとして大人気だった人だったんだな、とよくわかります。

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Frank Zappa and The Mothers of Invention-"Hungry Freaks,Daddy"(from the album "Freak Out!"1966)
https://www.youtube.com/watch?v=IDE9MC3jnl0&feature=youtube_gdata_player
 フランク・ザッパは「フランク・ザッパ・アンド・マザーズ・オブ・インベンジョン」のバンド名義で1966年8月に異例の二枚組デビュー・アルバム『フリーク・アウト!』で一躍ロック界きっての奇才の名を上げました。66年はザ・ローリング・ストーンズが『アフターマス』を4月に、ボブ・ディランが『ブロンド・オン・ブロンド』を5月に、ザ・ビーチ・ボーイズが『ペット・サウンズ』を6月に、ザ・バーズが『霧の五次元』を7月に、ザ・ビートルズが『リボルバー』を8月に発表します。アーサー・リー率いるラヴのデビュー作『ラヴ』が4月、グレース・スリック加入前のジェファーソン・エアプレインのデビュー作『テイクス・オフ』が9月で、ラヴはマザーズと同じロサンゼルスのアンダーグラウンド・シーンからのバンド、エアプレインはサンフランシスコのバンドですから、ラヴの意外な先駆性には意表を突かれます。ザ・バーズはニューヨーク出身者によるロサンゼルスのバンドでした。ラヴはその弟分、さらにザ・ドアーズが続きますから、ザ・バーズ→ラヴ→ザ・ドアーズという流れがロサンゼルスのシーンにはあったのです。
 翌67年にはニューヨークのヴェルヴェット・アンダーグラウンドとサンフランシスコのグレイトフル・デッドは3月に、ロサンゼルスのザ・ドアーズは4月に、英米混成グループのジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンスは5月にデビュー・アルバムを発表して、60年代後半の主要グループは出揃います。ヴェルヴェッツとデッドが同月デビューなんて出来過ぎた冗談のようですし、66年の五大グループではビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』はあまりに先を行き過ぎ、またザ・バーズはいつも一瞬だけビートルズの先を行っていたのには驚嘆します。『霧の五次元』は恒例のディランのカヴァーは一曲もなく、ディノ・ヴァレンテ作の『ヘイ・ジョー』をジミ・ヘンドリクスより半年早く取り上げ、『霧の8マイル』を始めとするメンバーの強力な自作曲でガレージ・パンク、サイケデリック・ロックの指針となった、ストーンズの『アフターマス』と肩を並べる影響力の大きいアルバムです。バーズにはストーンズと同じく天才はいませんでしたが大きな才能があったので大成しましたし、後続バンドたちが模倣・発展しやすい音楽性を備えていました。
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 フランク・ザッパをご紹介するのに68年のライヴ映像を持ってきたのは、このテレビ放映用ライヴはアルバム『アンクル・ミート』発表に先立つツアーの一環で、発売前にアルバムの主要曲を演奏しており、特に『キング・コング』はザッパ生涯の代表曲のひとつでプログレッシヴ・ロック、ジャズ・ロックの先駆けとなった、記念碑的なナンバーです。同アルバムはデビュー以来のザッパ&ザ・マザーズの到達点になりました。このアルバムでザッパはそれまでのマザーズを総括し、またこのアルバム以降のザッパはバンドの制約にとらわれず『アンクル・ミート』の変奏・延長・拡大を流動的なメンバーで制作していくようになります。52年の生涯に60枚あまりのアルバムを残した人ですから何から聴けばいいのか困っている人には、まず初期の五年間のアルバムが聴きやすいと思います。処女作にすべてがある、というのはザッパにも当てはまります(その後の拡大ぶりが凄いですが)。サード・アルバムまでは三部作をなしています。実験的なソロ名義の4.と匿名バンドでポップスをやった5.に続き、『アンクル・ミート』になるわけです。『アンクル・ミート』をさらにパワフルにしたソロ名義の7.で大反響を呼んだ後、新メンバーのマザーズで7.の延長上にある8.と9.でバンド・サウンドにフィードバックする、というのがザッパ初期五年間のアルバムの流れです。リストをご覧ください。
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[ディスコグラフィ1966-1970]※以外はフランク・ザッパ・アンド・マザーズ・オブ・インベンジョン名義
1.Freak Out! (フリーク・アウト!/1966年)
2.Absolutely Free (マザーズ・オブ・インヴェンションの自由な世界 / アブソリュートリー・フリー/1967年)
3.We're Only In It For The Money (マザーズ・オブ・インヴェンションのおかしな世界 / ウィー・アー・オンリー・イン・イット・フォー・ザ・マニー/1968年)
4.Lumpy Gravy (ランピー・グレイヴィ/1968年)※ソロ名義
5.Cruising With Ruben & The Jets (クルージング・ウィズ・ルーベン&ザ・ジェッツ/1968年)※ルーベン&ザ・ジェッツ名義
Mothermania (マザーマニア/1969年)※ベスト・アルバム
6.Uncle Meat (アンクル・ミート/1969年)
7.Hot Rats (ホット・ラッツ/1969年)※ソロ名義
8.Burnt Weeny Sandwich (バーント・ウィーニー・サンドウィッチ/1970年)
9.Weasels Ripped My Flesh (いたち野郎/1970年)