人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Eric Dolphy - "Out There" 1960

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Eric Dolphy - Out There (1960) [Full Album]: http://youtu.be/MOhKYOQK-dw
Recorded August 15, 1960. Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ
New Jazz - NJLP 8252
A1. "Out There" (Eric Dolphy, Charles Mingus) ? 00:00
A2. "Serene" (Dolphy) ? 06:55
A3. "The Baron" (Dolphy) ? 13:55
B1. "Eclipse" (Mingus) ? 16:53
B2. "17 West" (Dolphy) ? 19:38
B3. "Sketch of Melba" (Randy Weston) ? 24:30
B4. "Feathers" (Hale Smith) ? 29:10
[Personnel]
Eric Dolphy ? flute(B2,B3) , bass clarinet(A2,A3) , alto saxophone(A1,B4) , clarinet(B1)
Ron Carter ? bass, cello
George Duvivier ? bass
Roy Haynes ? drums
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 今回はエリック・ドルフィーディスコグラフィーを載せたくてアルバム紹介を組んだ。エリック・ドルフィー(1928~1964、アルトサックス、フルート、バスクラリネット)は遅咲きの人で、21世紀になってから発見された1954年初頭のクリフォード・ブラウン(トランペット)&マックス・ローチ(ドラムス)・クインテットのリハーサル・セッションのテープはドルフィーのロサンゼルスの実家で録音されており、ドルフィーもセッションに参加しているのだが練習場所は貸したのにバンドには誘われなかったということまで明らかになってしまった。クリフォードはドルフィーより2歳年下で、この2年後には25歳で交通事故死してしまうのだが、ジャズ史上最高のトランペッターとして今なおプレイヤー以外からも崇拝を集めている。
 ドルフィーは20代をアマチュア・プレイヤーとして過ごし、ロサンゼルスを拠点とするチコ・ハミルトン・クインテットでプロ・デビューを果たしたが、本格的に個性的が開花したのはロサンゼルスのジャズ界で親交のあったオーネット・コールマンがニューヨーク進出に成功した1959年頃からで、学生時代から兄事してきたチャールズ・ミンガス(ベース)やオーネット経由で知遇を得たジョン・コルトレーン(テナーサックス)からの誘いもあって1960年にニューヨークでフリーランスのマルチリード・プレイヤーとして活動を始めた。無名の新人なのでミンガスとコルトレーンのバンドを掛け持ち参加しながら、オーネット・コールマンの代用品のような扱いで単発アルバムの企画に起用されたり、オーネットの成功の柳の下のドジョウを狙ったプレスティッジ=ニュー・ジャズ・レーベルに60年にスタジオ盤3枚、61年にブッカー・リトル(トランペット、同年逝去)と組んだクインテットでジャズ・クラブ「ファイヴ・スポット」でのライヴ3枚分、同年コルトレーンのバンドでヨーロッパ・ツアーに出た際に現地ミュージシャンをバックにしたライヴ盤3枚分が録音されたが、ドルフィー生前に発売されたのはスタジオ盤3枚とファイヴ・スポットのライヴから1枚だけだった。
 プレスティッジとの契約延長はなく、62年は参加アルバムのみ、63年のアラン・ダグラスによるアルバム録音はLP2枚分の力作だったが生前発売されず、翌64年2月にミンガス・バンドとのヨーロッパ・ツアー直前に録音されたブルー・ノート・レーベルへの『アウト・トゥ・ランチ』は起死回生の傑作になったが、アルバム発売を待たずにドルフィーはミンガスとのツアー後の単身ツアー中に糖尿病の悪化で客死してしまう。36歳の誕生日から10日も経たないうちだった。バレエ・ダンサーの婚約者がおり、90年代に制作されたドルフィーのドキュメンタリー・ヴィデオで取材を受けて思い出を語っていたが、ドルフィーの死後も独身を通しながら現在はバレエ教室を開いているというその人は若々しい美人で、嬉しいような悲しいような気分になったものだ。
 ドルフィーの音楽はジャズだが、ビバップ以降のジャズには違いないとはいえ黒人ジャズの主流になったハード・バップやファンク・ジャズとはまったく似ていない。共演していたミンガスやコルトレーン、オーネットとも違う。自分自身のアルバムでは、ドルフィーは強いて言えばビバップが突然変異したようなジャズをやっていた。オーネットのフリー・ジャズローランド・カークアルバート・アイラーの音楽は楽音の肉声化やゴスペル・ルーツ(これらはミンガスが先鞭をつけた分野でもある)で近いが、ドルフィーの発想は抽象でも具象でもない逸脱感があるのに、すさまじいスウィング感によって説得力に溢れる。セカンド・アルバム『アウト・ゼア』は異様な楽器編成もあり、ドルフィーの特異さがわかりやすく現れている。
 リーダー作以外のドルフィーの参加アルバムは90枚を越える。生前発売(『アウト・トゥ・ランチ』のみ発売予定日以前にドルフィーが急逝したもの)のリーダー作は5枚、没後発表のスタジオ盤・ライヴ盤が25枚。総計120枚あまりのほとんどが1960年~1964年の正味4年間で録音されたものになる。遺作『アウト・トゥ・ランチ』と80年代に発掘された未発表スタジオ録音集『アザー・アスペクツ』はともにブルー・ノートからの発売だが、ドルフィーが過労死とも言える早逝をしなければさらにどんな音楽に進んでいったかわからない。ジョン・コルトレーンの『至上の愛』はドルフィーの急逝とその翌月録音のアルバート・アイラー『スピリチュアル・ユニティ』から半年準備期間をかけてコルトレーンが送ったオマージュでもあり、アイラーに触発されドルフィーの遺志を継いでジャズの未来を担うコルトレーンの勝負札だったわけだが、コルトレーンも余命2年半だとは誰も予期していなかった。早逝するジャズマンが少なくなったのは誉むべきことだが、創造的なジャズの時代でもなくなったのを嘆いても仕方ないのだろう。
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[Eric Dolphy (1928-1964) Discography as Leader]
Authorized releases
01 : Outward Bound (New Jazz,1960)
02 : Out There (New Jazz,1960)
03 : Far Cry (New Jazz,1960)
04 : At the Five Spot, Vol. 1 (New Jazz,1961) (live)
05 : Out to Lunch! (Blue Note,1964)
Posthumous compilations
01 : Hot & Cool Latin(Prestige,rec1959)
02 : Wherever I Go(UA,rec1959)
03 : Candid Dolphy(Candid,rec1960)
04 : Status(Prestige,rec1960)
05 : Dash One (Prestige,rec1960)
06 : Fire Waltz(Prestige,rec1960)
07 : Magic(Prestige,rec1960)
08 : Other Aspects (Blue Note,rec1960)
09 : Eric Dolphy(Prestige,rec1960)
10 : Here and There(Prestige,rec1960)
11 : Eric Dolphy in Europe, Vols. 1-3 (Prestige,rec1961) also released as Copenhagen Concert (live)
12 : The Complete Uppsala Concert(Jazz Door,rec1961)
13 : Stockholm Sessions(Enja,rec1961)
14 : Quartet 1961 also released as Softly, As in a Morning Sunrise(Century,rec1961)(live)
15 : At the Five Spot, Vol. 2 (Prestige,rec1961) (live)
16 : Memorial Album (Prestige,rec1961) (live)
17 : Vintage Dolphy(Candid,rec1962)
18 : Eric Dolphy Quintet featuring Herbie Hancock: Complete Recordings(Century,rec1962)
19 : Berlin Concerts(Enja,rec1962)(live)
20 : Iron Man(Douglas,rec1963)
21 : Conversations(F-M,rec1963)(both Conversations and Iron Man were released as a double LP titled Jitterbug Waltz)
22 : The Illinois Concert (Blue Note,rec1963) (live)
23 : Last Date(Fontana,rec1964)(live)
24 : Naima(West Wind,rec1964)(live)
1964: Unrealized Tapes(West Wind,rec1964)(live)
25 : The Complete Last Recordings In Hilversum & Paris 1964(Flesh Sound,rec1964)(live)