人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

谷岡ヤスジ『サンマの死(仮)』

 これは同じ巨匠の手になる傑作『ウナギの死(仮)』と同工異曲の作品だが、出典が明らかではなくどちらが先かは断言できない。『ウナギ』が5ページを費やしていたのに対しこちらは3ページとより簡潔であり、『ウナギ』が盛夏なら『サンマ』は秋で、これほど発想の類似が見られるならば同年のちかい時期に執筆されたと見ても見当違いではないならば、『ウナギ』→『サンマ』の順で成立したと考えられる。長さもちょうど比例するが、『ウナギの死』が短歌の気息で詠まれたものであれば『サンマの死』は俳句、しかも伝統的な有季俳諧で切れ字も含む(最後のサンマの台詞が「~かな」止めの効果を果たしている)オーソドックスな作品になったのは、ウナギとサンマという食材魚の格や身近さにもあると思われる。地平線に傾斜したビル一棟、樹木一本とはヤスジ作品ではおなじみの光景であり、この屋外でサンマの七厘焼きを食しているのはやはりヤスジ作品のレギュラー・キャラクターである百姓のタゴか、チクリシェンシェーか、哲人ペタシかと思われる。

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