人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ピーナッツ畑でつかまえて(39)

・三人のオベロンと悪しき精霊たち
 という話をしよう、とムーミンパパはパイプをくゆらしました。少々長くなるかもしれないが、これはずいぶん示唆的な要素を含んだ物語でもある。まあ聞きたまえ。
 さて……幽暗の王国には、無量の貴重な物がある。地上におけるよりも、更に多くの愛がある。地上におけるよりも、さらに多くの舞踏がある。そして地上におけるよりも、さらに多くの宝がある。太初、大塊は恐らく人間の望みを満たすために造られたものであった。けれども、今は老来して滅落の底に沈んでいる。われらが他界の宝を盗もうとしたにせよ、それが何の不思議であろう。
 私の友人の一人がある時、スリイヴ・リーグに近い村にいた事がある。ある日その男がカシエル・ノアと呼ぶ砦の辺を散歩していると、一人の男が砦へ来て地を掘り始めた。憔悴した顔をして、髪には櫛の目も入っていない。衣服はぼろぼろに裂けて下がっている。私の友人は、傍に仕事をしていた農夫に向つて、あの男は誰だと訊ねた。あれは三代目のオベロンです、と農夫が答えた。
 それから五六日経って、こういう話を聞いた。多くの宝が異教の行われた昔からこの砦の中に埋めてある。そして悪い精霊(フェアリー)の一群がその宝を守っている。けれどもいつか一度、その宝はオベロンの一家に見出されてその物になるはずになっている。が、そうなるまでには三人のオベロン家の者が、その宝を見出して、そして死ななければならない。二人はすでにそうした。第一のオベロンは掘って掘って、ついに宝の入れてある石棺を一目見た。けれどもたちまち、大きな、毛深い犬のようなものが山を下りて来て、彼をずたずたに引裂いてしまった。宝は翌朝、再び深く土中に隠れてまたと人目にかからないようになってしまった。それから第二のオベロンが来て、また掘りに掘った。とうとう櫃を見つけたので、蓋をあげて中の黄金が光っているのまで見た。けれども次の瞬間に何か恐しい物を見たので、発狂するとそのまま狂い死に死んでしまった。そこで宝もまた土の下へ沈んでしまったのである。第三のオベロンは今掘っている。彼は、自分が宝を見出す刹那に何か恐しい死に方をするということを信じている。けれどもまた呪いがその時に破れて、それから永久にオベロン家の者が昔に変らぬ富貴になるということも信じている。
 次回第四章完。