人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Albert Ayler Trio- Spiritual Unity (ESP,1964)

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Albert Ayler Trio - Spiritual Unity (full abum) : http://youtu.be/xWsIG5sNq1Q
Recorded in New York, July 10, 1964
A1. "Ghosts: First variation" - 5:12
A2. "The Wizard" - 7:20
B1. "Spirits" - 6:46
B2. "Ghosts: Second variation" - 10:01
All compositions by Albert Ayler
[Musicians]
Albert Ayler - tenor saxophone (listed as "saxophone" in liner notes)
Gary Peacock - bass
Sunny Murray - percussion

 アルバート・アイラー(1936~1970)がもっとも尊敬した先輩テナー奏者はジョン・コルトレーン(1926~1967)だが、その『クレッセント』は1964年4月27日・6月1日の録音になり、コルトレーンマイルス・デイヴィスクインテットから独立した1961年からの2年、ジョン・コルトレーンクインテットの一員だった(チャールズ・ミンガス・ジャズ・ワークショップとかけもちだったが)エリック・ドルフィー(1928~1964)がミンガスのバンドでヨーロッパ・ツアーを終えた後も単独公演中にベルリンで、糖尿病の悪化から急逝したのが同年6月29日。そしてこの年すでにデンマークのレーベルからの2枚のアルバム『マイ・ネーム・イズ・アルバート・アイラー』『スピリッツ』で新しいタイプのテナーサックス奏者とミュージシャンの間で注目されていたアイラーの、画期的なアルバムになったのが7月10日録音の本作だった。そしてジョン・コルトレーンが『クレッセント』同様全曲オリジナルの次作『至上の愛』を録音するのは64年12月9日(65年2月発売)になり、コルトレーンとしては異例の、半年もの熟成期間をかけたアルバムになった。このアルバムは全4曲の組曲形式で、先立つ『ライヴ・アット・バードランド』と『クレッセント』で完成を見たコルトレーン・カルテット(ドルフィー脱退後は増員しなかった)のアンサンブルは『至上の愛』ではコルトレーン自身によって意図的にバランスを崩している。『クレッセント』から『至上の愛』への転換、さらに少なく見積もっても12枚のオリジナル・アルバム(生前発表は3枚)を録音した翌65年の大爆発は、盟友ドルフィーの死、「彼のようにテナーを吹きたい」とまで言わしめた新人アイラーの登場の影響なしには考えられない。
 コルトレーン65年のアルバムはすべて必聴だが、生前発売された3枚のうち2月録音の『カルテット・プレイズ』は『チム・チム・チェリー』と『ネイチャー・ボーイ』のスタンダード2曲を軸に『バードランド』『クレッセント』の系列にあるアルバム。10月録音の『クル・セ・ママ』はアフリカ詩人・歌手ジュノ・ルイスのヴォーカル曲をタイトルに67年春に出されたアルバムで、コルトレーン生前に発売したかったのだろう。コルトレーンは67年7月に胃癌で逝去する。あと1枚、6月録音(余命2年)の『アセンション』はカルテットに7人のフリー・ジャズ系ゲスト・プレイヤーを迎え、アルバム全編40分全1曲という、オーネット・コールマンフリー・ジャズ』(61年12月録音)への遅ればせの回答、というべき作品だった。
 65年末からコルトレーンはアイラー・トリオのサニー・マレイから学んだスタイルを持つラシッド・アリを加えたツイン・ドラムに、さらにもう一人サン・ラ・アーケストラ出身でアイラーと双子のような奏法のテナー奏者ファロア・サンダースを迎えてアルバム『メディテーションズ』を発表するが、彼ら新加入メンバーを嫌ってドラムスのエルヴィン・ジョーンズ、ピアノのマッコイ・タイナーが辞めてしまう。アイラーがコルトレーンとサンダースと自分を「父と子と聖霊」になぞらえたほどこの三人のテナー奏者には精神的絆があった。コルトレーンはアイラーにしばしば経済的援助をし、またコルトレーンを主力アーティストとするインパルス・レーベルと契約を結ばせ、それまで小インディーズ・レーベルのアーティストだったアイラーをメジャー・デビューさせた。インパルスはフリー・ジャズ(当時の呼称は「New Thing」)に傾斜するコルトレーンの主導でアーチー・シェップ、マリオン・ブラウンらのフリー・ジャズが占めるようになり、コルトレーンのデビュー時からのライヴァルで友人でもあるソニー・ロリンズも同時期に4枚のアルバムをインパルスに残しているが、それらもフリー・ジャズからの感化を感じさせるものだった。だがコルトレーンに残された時間はわずかだった。
 66年7月の来日公演で二時間半で3曲、という脅威的なコンサートを日本の観客に披露した後、帰国後のコルトレーンは体調を崩してライヴのスケジュールをすべてキャンセルする。それから67年7月の逝去までコンサート出演は2回、すべて没後発表になるアルバムを3枚残す。全曲が新曲のオリジナルだった。
 アイラーのアルバム紹介がジョン・コルトレーンの晩年の活動歴を追う話になってしまったが、コルトレーン・カルテット初期に在籍したベーシストのレジー・ワークマンによると、60年代中期には黒人ジャズマンにとってコルトレーンの新作とは「(重要な)本が刊行されるようだった」という。その転換点が『クレッセント』から『至上の愛』への変化で、黒人のアイデンティティ=スピリチュアルという発想がサン・ラやアイラーからコルトレーンには黒人音楽家としての使命のようになった。自分の葬儀の演奏にはオーネットとアイラーを、と遺言で指名したくらいだから心からオーネットとアイラーの音楽を愛していたのだ。もっともコルトレーンの師であるセロニアス・モンクマイルス・デイヴィスを指名してもノー・ギャラでは演奏してもらえなかっただろうが。
 この『スピリチュアル・ユニティ』はアメリカ本国よりヨーロッパや日本で先に評価されたアルバムで、フリー・ジャズ専門レーベルESPの創設記念アルバムとして非売品が300枚関係者やプロモーション用に配布されただけだった。ヨーロッパ諸国や日本のジャズ雑誌にも見本盤が届いた。瞬く間に反響を呼び、諸外国では最初から市販用レコードとして発売されたが、アメリカ本国のオリジナル盤は見本盤しか存在していないという変なことになった。
 アイラーにはこのアルバムの前にスウェーデンで2枚、デンマークのレーベルから3枚のアルバムがあり、スウェーデン盤とデンマーク盤は1枚ずつは没後発表だが生前発表の3枚の出来も素晴らしい。だがオーネットからの影響から脱して、コルトレーンの方向性まで影響を与えるほど強烈な個性を確立したのは『スピリチュアル・ユニティ』を置いて、ない。
 コルトレーンの没後、元々独自のフリー・ジャズをやっていたサン・ラ、セシル・テイラー、オーネットを除いて若手ジャズマンは指針を失ったかたちになった。アイラーと同年生まれのローランド・カークはオーネットやアイラーとも資質が近く、黒人意識を強めた以降のコルトレーンに傾倒していたが、コルトレーン没後迷走していったアイラーよりタフなジャズマンだった。アイラーは私生活にも奇行が目立ち始め、70年10月に突然失踪すると自殺・他殺・事故死不明の遺体となって発見された。没後発表を含めたアルバム・リストを上げる。

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[Albert Ayler (1936-1970) Discography]
01. The First Recordings Vol.1 (Bird Notes,1962)
02. Something Different!!!!/The First Recordings Vol.2 (Bird Notes,1962)
03. My Name Is Albert Ayler (Debut Records Denmark,1963)
04. Spirits (Debut Records Denmark,1964)
05. Swing Low Sweet Spiritual (Osmosis Denmark,1964)
06. Prophecy [Live] (ESP,1964)
07. Albert Smiles With Sunny [Live] ,(Inrespect Records,1964)
08. Spiritual Unity (ESP,1964)
09. New York Eye And Ear Control (ESP,1964)
10. Albert Ayler [Live] (Philology Jazz Records,1964)
11. The Copenhagen Tapes (Ayler Records,1964)
12. The Hilversum Session (Osmosis Records,1964)
13. Ghosts (Debut Denmark,1965)
14. Bells [Live] (ESP,1965)
15. Spirits Rejoice (ESP,1965)
16. Sonny Murrey : Sonny's Time Now (Jihad Records,1965)
17. At Slug's Saloon, Vol. 1 & 2 [Live] (ESP,1966)
18. L??rrach / Paris 1966 [Live] (Hathut Records,1966)
19. In Greenwich Village [Live] (Impulse! Records,1966)
20. Love Cry (Impulse!,1967)
21. New Grass (Impulse!,1968)
22. Music Is the Healing Force of the Universe (Impulse!,1969)
23. The Last Album (Impulse!,1969)
24. Nuits de la Fondation Maeght (Shandar,1970)
25. Live on the Riviera [Live] (ESP,1970)
26. Holy Ghost: Rare & Unissued Recordings 1962?70 (Revenant Records,2004)
26. The Complete ESP-Disk Recordings (ESP,2006)